15. 学園生活
その日の夜、俺は馬車夫にアムニト市へ向かわせた。
去年と同じように、下水が路上を流れて、ゴミが路地の隅に山積みになっていることを心配していたけど——。
アムニト市に到着した途端、俺は街の環境の変化に気づいた。
路上に下水が溢れている状況が効果的に緩和されていて、通り沿いの建物の壁面には金属製のパイプが増設されている。
まるで俺の時代の下水道管みたいだ。
どうやらこのパイプのおかげで、通りが汚水で満たされることはなくなったようだ。
ゴミについては、路上にはまだ一定量のゴミがあるけど。
以前は生活ゴミが散乱していた通りに比べると、だいぶ改善されている。
固定の人が街のゴミ清掃を始めたってことかな?
父親は俺のぼやきを聞いて、この街を変えようとしてくれてたんだね。
何か贈り物を買って褒めてあげようかな。
そんなことを考えながら、ユーナと一緒にオリバー商会の入り口に到着した。
今回は変装して来たから、昨年のような規格外な接客待遇を受けなかった。
最初に応対してきたのは男性店員だった。
彼は無礼に俺たち二人を上から下まで見回して、金のないガキと判定した。
そしたら、個性的な見た目の実習生を呼んで、俺たちに対応させた。
なんで実習生だと分かったって?
もちろん制服の名札を見れば分かるさ。
身長と見た目から判断すると、年齢は俺と同じくらいかな。
健康そうな小麦色の肌をしていて、黒いショートヘア。
男子っぽく見えるけど、制服のスカートがあるから女の子だってことは分かる。
うん、ボーイッシュな子も俺の好みだね。
「いらっしゃいませ、オリバー商会へようこそ。ここの店員見習い、チャーリー・アマドールです。どのようなご用件でしょうか?」
チャーリーは俺たちの格好が貧しい家の子で、お菓子を買いに来た子供みたいでも、不快な感情を一切表さなかった。
逆にとても元気な声で自己紹介してくれた。
「ん、チャーリーさん、こんにちは。えっと、この街に来たばかりで住むところがないから、アムニト学院の近くに部屋を借りたいんだ」
オリバー商会の事業内容は多岐にわたっているから、ここで部屋を借りに来る人も珍しくない。
「へぇ、君は今年のアムニト学院の新入生ですか? あ、私もです! 今年の新入生だから、よろしくね」
アムニト学院の言葉を聞いた瞬間、チャーリーの目がキラキラした。
「ん、まだ新入生じゃないけど、すぐそうなる予定だ。今は仕事の話をさせてほしいな」
俺はいきなり距離を詰めてくるのは苦手だから、彼女の注意を部屋探しに戻すよう注意した。
「うわっ、そんなこと言えるなんて、まさか超優等生ですか!」
チャーリーは「仕事の話をさせて」の意味を理解していないし、距離感も分かっていない。
普通の人がこんなこと言われたら、ハッタリだって鼻で笑うところだけど。
チャーリーは俺の言うことを完全に信じてくれてる。
こういう性格、騙されやすいよ。
チャーリーの好奇心を何度かかわした後、やっと彼女の注意が仕事に戻った。
彼女は背を向けて分厚い冊子を持ってきた。
賃貸物件の情報が書いてある。
現地で見に行くサービスだったから、チャーリーが俺たちを連れてアムニト学院に向かうことにした。
「やっぱりアムニトは好きですね。もし可能なら、ここで働きたいです。あ、そうだ、こんなに話してて、まだ名前を聞いてませんでした!」
チャーリーが前を歩きながら突然振り返った。
道を見ていなかったから、カフェの看板に真正面から激突した。
この子、色んな意味で心配だね。
「キャシー・コエーリョって言うから、キャシーでいいよ」
身分を隠すために、仮名を教えた。
「私はユーナ・フランチ、キャシーの子分です」
おい、何が子分だ。
俺を悪役令嬢みたいに言うなよ。
チャーリーはその嘘を完全に信じて、地面に伏せたまま羨望の目で俺を見てきた。
光が強すぎて死ぬ。
最終的に、アムニト学院から徒歩五分の距離にある二階建ての洋館を選んだ。
内装は少し古いけど、家具が完備されているから、家具を買う手間が省ける。
だからこの物件を借りることにした。
この洋館には四つの寝室がある。
あと二人くらい女の子を誘って、ここでイチャイチャできるかも。
空の部屋を見ながら、未来の一か月間の楽しい学園生活を妄想し始めた。
契約を結んで、家賃と敷金を支払った後、チャーリーは契約書を持ってオリバー商会に報告しに行った。
「明日、学院でね!」と言いながら走っていったけど、道端のポールにぶつかった。
この子、本当に……。
次は入学問題を解決しないといけない。
十分後、アムニト学院の院長室のドアが老人によって吹き飛ばされた。
学院長は、普段とても落ち着いているこの老人が、何があったのか、こうまで無謀な行動に出たのかと驚いた。
「測定器のパネルを粉々にした学生が学院の中庭に現れた」と知らされるや否や、学院長は直したばかりのドアを再び吹き飛ばした。
「本当に本校で一か月しか学べないんですか?」
「はい、院長様。私の家は商人家族だから、アムニトに一か月しかいられません。ご理解ください」
「ん、分かりました。では、本学院で良い思い出を残してください」
最終的に、俺とユーナはアムニト学院の一か月限定の学生になることができた。
俺の異世界生活で、初めての学生生活を迎えることになった。
クラスについては、院長は俺とユーナを分けずに同じ教室に配置してくれた。
待ち望んだ翌朝の到着。
アムニト学院には制服がないから、俺とユーナは私服で学院に入った。
入学日だけど、この学校には広場で院長の訓話を聞く行事がない。
これは素晴らしい良き伝統だ。
壁に貼ってある案内に従って、二人はすぐに教室を発見した。
一年A組。
同級生たちが普通で、付き合いやすい人たちであることを望む。
ドアを開けた瞬間、上着を脱いで、苦悶の表情を浮かべる男子生徒を教室の真ん中で押さえつけている女を見た。
……うん、最近よく眠れてないから幻覚だ。
そうだ、絶対幻覚だ。
ドアを閉めた瞬間、その変態がドアを叩き割って、俺を熱烈な視線で見つめた。
「殴り合おうぜ」
「え? やだよ!」
「でもお前、強そうなんだから、殴り合おうぜ」
「? いや、聞いてないって言ってるし、やだよ」
「すみません……でも、俺の意向は関係ない。不意打ちだ!」
「お前、何かイカれてるよ!」
俺は、俺を見ていきなり殴り合いたいクレイジーな男の顔にパンチを食らわせた。
その後、手で彼の顔を地面に押し付け、彼の頭を教室の木床に埋め込んだ。
「す、す、ごい……腕前」
その男は全身の力を振り絞って、俺を褒める言葉を言った。
でも、俺は彼を相手にする気はない。
その時、黒いスカートを着た銀髪の美女が教室の入り口に来た。
地面にめり込んでいる男を拾い上げて、埃を払ってから最前列の席に放り込んだ。
それから俺とユーナを見た。
「さあ、二人とも、授業を始めるから、適当な席に座ってね」
彼女は学校での喧嘩を全く気にしていない様子だ。
やっぱり異世界の学院は、実力が全てか。
初対面だから、授業中に自己紹介して互いを知る必要がある。
あ、チャーリーだ Lights。
今日は機嫌が悪そうだね。
昨日の声には太陽のような明るさがあったけど、やっぱり下校後に何かあったんだろうな。
チャーリーの顔には不快な感情が表れていて、自己紹介の時も元気がなかった。
昨日別れてから何かあったんだろう。
さっき俺が殴った男の名前は、カールハインツ・ゲーザルらしい。
彼は教室でみんなを殴り回して、俺に喧嘩を強要したから、誰も拍手してくれなかった。
赤面してゆっくり座った。
ざまあみろ、だ。
最後に、隅っこに座っていて、目立つ青い髪と、やたらと発育の良い胸を持つ女の子に注意が向いた。
俺は魔力で聴力を強化しないと聞こえないほどの蚊の鳴くような声で、「ニーナ・スチュアート」とだけ自己紹介して、慌てて座った。
教室のほとんどの生徒は何を言ったのか分かっていないけど、男子生徒たちはずっと拍手をしていて、彼女の身体のどこからでも目を離さない。
男子はどこでも同じか。
元男性の俺は、男子たちの不純な動機を知っている。
因果応報だ。
昔は女子を凝視する側だったのに、狙われる側の子羊に転生した今は、気まずくて笑うしかない。
クラスの一部の男子の視線が、俺にも向いていることに気づいた。
初めてあの邪悪な視線を感じた時、吐き気を催した。
ごめんなさい、前世で俺が凝視していた女子生徒たち。
今度こそ、本当に分かった。
初めての授業は長くなかった。
フィオナ・リデルと名乗った女性教師は学院の注意事項を説明した後、本を片付けて教室を出て行った。
俺はすぐに起きて、昨日知り合ったチャーリーの席のそばに行った。
「どうしたの、チャーリー。なんか機嫌悪そうだけど」
「え、そんなに分かります?」
チャーリーは「どうして分かったの?」って顔で俺を見た。
おい、不機嫌を顔に書いてるよ?
「実は、えっと、なんて言えばいいか」
チャーリーは何か隠そうとしているけど、今の彼女はもっと怪しい。
下校まで、チャーリーは機嫌が悪い理由を言ってくれなかった。
でも俺は誰だ?
公爵の娘だよ。
自分の情報網があるから、教えてくれないから分からないわけじゃない。
始めよう!
一時間後、借りたばかりの家の中で、父が市内に潜ませていた隠密からチャーリーが機嫌悪い理由を知った。
昨日俺と結んだ賃貸の契約が、オリバー商会の先輩であるオットーの妨害によって、彼の名義で署名させられたらしい。
オットーがその契約を横取りしたことで当日の売り上げトップになり、一枚の金貨の特別ボーナスを得たそうだ。
フン、小細工が好きなんだ。
じゃあ、もっと派手に小細工してやるよ。
隠密の報告を聞いて、俺の脳内には彼をどう料理するかの計画が完成した。




