148. エイの忌日と、小学生からの夢
その食事は、かなりの速さで進んだ。
テーブルに並んだ皿はすべて底を見せ、スープの最後の一滴まで残らなかった。
主な理由は、私とユーナが故郷を離れていた時間がとにかく長すぎたことにある。
私たちが死後この十三年というもの、住み続けていたのは現代の食品工業とは無縁の、中世の異世界だった。
食材の鮮度も、風味も、現代地球にいる時とは埋めようのない差がある。
これは調理の技術の問題ではなく、食のシステム全体の問題だ。
土地から、水質から、飼育の方式から、最後に喉に流れ込むあの味まで、何もかもが違う。
地球にいた頃だって、外国を一回りして帰ってくれば、一番懐かしいのは結局、自分の国のあの本物の味だったはずだ。
海外にも紅龍国の飲食店はそれなりにある。
でも現地の人の口に合わせるために、多かれ少なかれ手が加えられている。
辛みも塩気も薄くなり、あの鉄鍋を強火で炒めた際に立つ独特な焦げの香りも消え、食材がまるで別の料理へと変わってしまうこともある。
そういう味は「近い」と呼べても、「本物」とは呼べない。
その差が一番はっきり出るのが、鶏だ。
紅龍国の国内で育った鶏は、鶏の風味が濃く、肉が締まっていて弾力がある。
皮は薄く、皮の下にはほんの薄い層の脂が乗っていて、一口噛むと、その香りが口の中から鼻腔へと広がっていく。
でも一旦場所が変われば、水が変わり、土が変わり、同じ品種であっても、育った鶏の味は一段落ちてしまう。
仕方のないことだ。
だから、白切鶏を一切れ姜蓉につけて口に入れた瞬間、私とユーナはほぼ同時に話を止め、食べることに集中した。
その感覚は、なんと表現すればいいのかが難しかった。
ただ腹が減っていたというだけではない。
もっと深いところから来る、十数年という時間を超えた渇きが癒えていくような感覚だった。
あの味がどこかでずっと待っていて、私たちは大回りをして、ようやくそこへ戻ってきて、それを受け取ったような。
ホンさんとジンさんが向かいに座っていた。
急かすでもなく、おかわりを勧めるでもなく、ただ黙ってこちらを見ていた。
ジンさんの手はテーブルの縁に乗せられていて、時折かすかに顔を傾けた。
目が見えない分、耳で目の前の様子を確かめているように。
その口元には、ほんの少しの笑みが浮かんでいた。
その笑みには、重いものが込められていた。
不安と歓びが入り混じり、言葉も出てこない。
複雑な感情がありのまま顔にあふれていた。
ホンさんは口を開かず、手を茶杯の上に置いたまま、お茶に口をつけることもなく、ただそうして座っていた。
目はこちらを見ているようでいて、見ていないようでもあり、ただぼんやりとしていた。
あの白髪が、個室の暖かい灯りの下で、ことさらにはっきりと見えた。
黒い毛は一本もない。
すべての毛が、余すところなく、白かった。
うつむいて箸を取りながら、私の視線はずっと、目の端で二人を捉えていた。
不思議な感覚だった。私は二人のことを知っている。よく知っている。
前世の二十年間で、彼らの家で食べた食事が何度あるか分からないし、「おじさん、おばさん」と呼んで呼び慣れた名前でもある。
でも今ここに、十八歳の見知らぬ身体でいて、随分と年老いたこの二人の顔と向き合って、何を言えばいいのか、いまひとつ分からなかった。
目頭が少し熱くなったが、深刻にはならなかった。
うつむいてまた一口、箸をつけた。
食事が終わると、私たちは二人の老人と一緒に個室を出た。
通りを歩く道すがら、白金色の髪とピンク色の髪が、行き交う人々の中でことさら目を引き、道中ずっとあちこちから視線を受け続けた。
でも木棉城は二次元の雰囲気がとても濃い街で、通りすがりの人は数回見てから、大抵はそのまま自分の道を歩き続けていった。
おそらく何かのアニメから抜け出してきたキャラクターだと思ったのだろう。
思いのほか助かった。
この身体を連れて、この通りを歩いている。
なんとなく現実感がなかった。
この通りは何度も歩いた。
でも毎回は「ロン」という身体で、地下鉄の出口からここへと向かっていた。
通り沿いの店も交差点も、あの甘味屋の古い屋台まで、すべて昔の記憶通りの佇まいだ。
今もそれらは確かにある。
ただ、私が変わっていた。
ユーナは私の隣を歩きながら、口を開かなかった。
うつむいて、視線を足元に落としていた。何を考えているのか分からない。
私は邪魔せず、ただホンさんとジンさんの後ろをついていった。
ユーナの前世の家は、市内のやや古い一角にあった。
この辺りの建物は周囲の新しい高層マンションよりも低く、外壁の煉瓦も古びていた。
でも木がよく育っていた。
建物同士の間隔はゆったりと広く、あちこちにヤシやマンゴーの木が立ち並び、生い茂った枝葉が空の半分を埋め尽くしていた。
その木陰の下を歩くと、静かな、守られているような感覚がした。
大通りから離れたエリアで、学校と公園が隣り合っていることもあり、普段はとても静かな場所だった。
それがホンさんとジンさんがこの部屋を手放さなかった理由でもあった。
立地の良さだけではない。この場所には、彼女の痕跡が宿っているから。
エレベーターに乗って上へ。
廊下は昔のままの姿で、入り口の小さな花台一つとっても、置かれた場所は昔と変わらなかった。
ただ、上に飾られた植物だけが新しくなっていた。
ホンさんがポケットから鍵を出して、扉を開けた。
扉が押し開かれた瞬間、家の古びた匂いが流れてきた。
不快ではない、ただ時間に長く閉じ込められてきたような、そういう感覚だった。
私は入り口で立ち止まり、すぐには踏み込まず、室内を一通り見渡した。
部屋の間取りは三十年前、初めて彼女がここへ来た時のままだった。
ソファの位置、ダイニングテーブルの向き、廊下の奥にある磨りガラスのドア。
家具はいくらか入れ替えられていた。
古いものは処分され、新しいものが入ってきていた。
でも置かれている場所は変わらず、位置はあの頃のままだった。
ある角を見た瞬間、ふと思い出してしまった。
いつだったか、あの場所で何かをして、何かを話したことがあった。
その記憶の断片が予告なしに押し寄せてきた。
順序もなく、何もかもが入り混じって。
二秒でそれを押さえ込んで、部屋に入った。
ユーナが隣で立ち尽くしていた。
横目で見ると、彼女の目が赤くなっていた。
その視線は、居間で一番目立つ壁へと落ちていた。
その壁に、一枚のスカーフが掛けられていた。
私はあのスカーフを覚えていた。
エイが大学時代、旅行から戻った際、両親へのお土産として購入した品物だ。
当時彼女は色がとても美しいと言い、長い時間をかけて慎重に選んでいた。
スカーフ自体は高くはなかったが、彼女は当時、丁寧に包んで手提げ袋の中に入れ、飛行機に持ち込んで、着いた途端一番に両親のところへ持っていって広げて見せた。
そのスカーフが今、壁に掛けられていた。
玄関から入ってくれば真っ先に目に入る、部屋の中で一番目立つ場所に。
ユーナはそれを見つめたまま、口を開かなかった。
瞳にたまった水が、もういっぱいだった。
ホンさんとジンさんも彼女の視線に気づいたようで、二人とも少しの間、黙った。
それからホンさんが口を開いた。
声は平らだったが、一言一言に重みがあった。
「エイ、このスカーフはな、お前が逝ってから、俺たちが寂しくてずっとあそこに掛けとったんじゃ」彼は少し間を置いた。
「でも今、お前が帰ってきてくれたんなら、もう掛けておく必要はないな」
彼は薄く笑った。無理やり作った笑いではなく、本物の笑いだった。かすかに、でも確かに。
彼はゆっくりそちらへ歩み寄ると、壁に引っ掛けたスカーフを外し、丁寧に折り畳んで隣のクローゼットへしまい、静かに扉を閉じた。
その動作はとても緩やかで、何か儀式めいたものがあった。
捨てるのではなく、しまう。
十数年の間ずっとあのスカーフを支えてきた意味を、ある安全な場所に丁寧に収めて、「もう休んでいいよ」と告げるような。
ユーナはうつむいたまま、涙が頬を伝い落ちていた。声は出さず、ただそこに静かに立ちながら、肩が微かに揺れていた。
私は彼女の隣で、何も言わず、視線もそらさず、ただ静かに隣にいて、その揺れが収まるのを待った。
やがて私たちはソファに腰を下ろした。
ジンさんがキッチンへ行って数杯のお茶を持ってきて、各々の前に一つずつ置き、ゆっくりとホンさんの隣に座った。
お茶は菊花茶だった。
ほんのりした、淡い香り。
ソファの座り心地は記憶の中のものとは違っていた。
おそらく買い替えたのだろう。でも形はあの頃と似ていて、ほどよい硬さと柔らかさで、座ればすぐに身体の力が抜けてくる。
茶杯を両手で包み、しばらくその温かさを感じていた。
それから、口を開いた。
「おばさん……エイは、あの時どうなったんですか」
ずっと気になっていたことだ。
あのレストランで彼女たちに気づいた瞬間から、ずっと。
おおよその輪郭は想像できた。
でも想像は本当のことじゃない。
ちゃんと聞かなければ。
ジンさんはその問いを聞いて、まず数秒間黙り込んでから、苦笑いをして、息をついた。
「ああ……今はエイも帰ってきてくれたから、話してあげてもいいかね」
彼女は顔を上げた。その表情には慰めと重さが同居していた。
「エイの命日は、あんたが逝った一年後よ」
私は静かに息を呑んだ。
「あんたの訃報を受け取ってから、エイはまるで何かがぷつりと切れたみたいに変わってしまって」
ジンさんは言った。
「食べる量が減って、眠れない夜が続いて、毎晩あんたの名前を呟きながら、眠ってから誰かと話しているみたいで、翌朝起きたら目が真っ赤なのに、何を聞いてもなんでもないって笑うだけで……」
彼女は一息ついて、茶杯をテーブルに置いた。
「お父さんと私でどれだけ言い聞かせたか分からない。あんたはもういない、エイはまだ若い、まだこれからが長いんだから、ずっとこのままじゃいけないって。でもあの子は全然聞く耳を持たなくて、ただ私たちに笑ってみせて、大丈夫よって」
その「大丈夫」という言葉が、耳の中にずしりと落ちた。
私にはあの笑いが分かる。
人を心配させないために作り上げた笑いには、その裏には本人でさえまだ見きれていないような深さがあった。
「ロン、ちゃんと知っておきなさいな」
ジンさんが言った。
「エイはね、小学生の頃からずっと、あんたと結婚するんだって言い続けてたんよ」
この言葉に、私は呆然とした。
そのまま固まっていた。茶杯を持ち上げてまた置いて、頭の中の何かがこの言葉にぶつかった。
ぶつかって、鈍い音を立てた。




