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134. 農業の書と、改良種子

 満載したショッピングカートを押しながら、私たちはスーパーの中を進んでいった。


 耳元には販売員たちの熱心な呼び込み声と、カートの車輪が転がるゴロゴロという音が鳴り響いている。


 空気の中には食品の香りと冷房の清々しさが混じり合って、すべてが賑やかで生き生きとしていた。


 ユーナは相変わらず、周りのすべてのものに好奇心に満ちた様子で見回していた。


 時折手を伸ばして、棚に並んでいる商品にそっと触れては、指先でパッケージをなぞっている。


 目には驚きと新鮮な好奇心が満ちあふれていた。


 佐藤さんは私たちの後ろについてきて、一方の手はポケットに突っ込んだまま、もう一方の手では時折カートを支えている。


 口の中では小さな声でぶつぶつと文句を言っていて、カートが重すぎることを嘆いていたり、あとで何を食べに行くかをつぶやいていたりしている。


 彼の黒い短い髪は乱れたまま額に貼りついていて、そばかすだらけの顔には我慢強さが満ちていた。


 私はカートを押しながら、心の中で既に選んだ物資を計算していた。


 何を補充する必要があるか、何を諦めてもいいかを考えている。


 ちょうどその時、私たちはスーパーの書籍コーナーを通り過ぎようとしていた。


 私の足取りが突然止まった。


 まるで何かに強く引き付けられたかのように、息を潜めてしまうほどだ。


 私の目が棚に並んでいる一冊の本に釘付けになっていた。


 もう視線を離すことができない。


 それは花の国の農業技術について解説している本で、表紙には緑色の畑が広がっていて、はっきりとしたタイトルが印刷されていた。


 ページは少し黄ばんでいて、たくさんの人に読み込まれたことが窺える。


 私は早足で前に進み、手を伸ばしてその本を手に取った。


 指先がページに触れた瞬間、心の底から湧き上がる興奮を感じて、指先までわずかに震えていた。


 私は待ちきれない様子でページを開いた。


 中にはびっしりと文字が書き込まれていて、たくさんのはっきりとした挿絵もある。


 花の国の農業の発展の歴史、現状分析、そして未来の発展計画について詳しく解説されている。


 さらに重要なことは、本の中でどの作物が花の国のどの地域で栽培するのに適しているかが詳しく描写されていることだ。


 土壌の要件、気候条件、栽培技術、病虫害の防除など、すべての細かい点がとても詳しく解説されていて、具体的なケーススタディまであって、図解入りで分かりやすい。


「この本……まるで私のために書かれたようなものじゃない!」


 私は心の中で叫んでいた。目には狂喜が満ちあふれ、瞳には興奮の光が輝いていた。


 私の前世はただの普通の会社員で、農学の専門学生でもなんでもない。


 農業栽培については一つとして分かることがなかった。


 エーリクセン領地に転生してから、領地の食糧問題を改善するために、数十種類もの植物の導入栽培を試みてきた。


 ハーランド帝国から導入したものもあれば、遠い異国の商人たちから交換してきたものもあった。


 でも、結果はどうだった?


 成熟に成功した作物はたった二種類だけで、残りはすべて途中で枯れてしまった。


 あちこちで枯れているか、病虫害に蝕まれているか、それともエーリクセンの気候と土壌に適応できていないかのどれかだ。


 一種類の作物の導入栽培に失敗するたびに、数百枚もの金貨が水の泡になってしまう。


 それらの種、肥料、人力、そして栽培プロセスの中で費やしたさまざまな労力は、すべて無駄になってしまう。


 エーリクセン領地は元々それほど裕福ではないし、金貨はさらに不足している。


 毎回導入栽培に失敗するたびに、私はひどく心苦しくなるのだけど、どうしようもなくて、ただ一度また一度と試み続けるしかなかった。


 その無力感は、私自身にしか分からない。


 そして今、この本が私の目の前に置かれている。中に書かれている知識こそが、私が最も必要としていたものだ。


 もしこの本の研究を参考にして、エーリクセンの気候と土壌条件を組み合わせて、作物栽培を行うことができれば。


 導入栽培の成功率を大幅に向上させることができるかもしれないし、導入した作物にかかる費用をたくさん節約できるかもしれない。


 さらに重要なことは、エーリクセン領地内の農業に対して、徹底的な技術革命を行うことができる。


 領地の人々の生活を改善して、食糧不足の問題を解決することができる。


 私はそっとこの本を胸に抱き締めた。


 まるで世にも珍しい宝物を抱えているかのように、壊してしまわないように気をつけている。


 その後、棚から数冊の医学基礎の本を順に手に取った。


 エーリクセンの医療水準はとても遅れている。


 たくさんの簡単な病気や怪我でも治すことができず、多くの人々が小さな病気や怪我のために命を落とす。


 治療魔法が存在することは確かだけど、その高額な治療費用も平民には敬遠させている。


 何しろ、魔法を学べる人は少ないし、治療魔法を使える人はさらに少ないからだ。


 これらの医学基礎の本は、直接的に難病を治すことはできないけれど、少なくとも領地の医者たちに基礎的な医療知識を学ばせることができる。


 より多くの人々を救うことができるようになる。


「待って!」


 私が本をショッピングカートに入れようとしたちょうどその時、目の端の余光で棚の端の緑色の看板に突然気づいた。


 その看板には文字がはっきりと見えるように書かれている。


「野菜の種 専門コーナー」——!


 私の心臓がドキンと飛び跳ねた。


 まるで新大陸を発見したかのように、突然カートの取っ手を強く掴み付いた。


 その力の強さのせいで、カートが瞬時に止まってしまった。


「クローディア? どうしたの、いきなり?」


 佐藤さんはずっとうつむいて、スマホを眺めながら、カートについてきていた。


 私が突然止まったことに気づかず、押していたカートがもう少しで私の後ろの腰にぶつかるところだった。


 彼は驚いて急いで足を止め、顔を上げた。


 目には疑惑が満ちていて、私をじっと見つめている。


 黒い短い髪は慌てふためいているせいで、さらに乱れてしまった。


 そばかすだらけの顔には理解できないことが満ちていた。


「いきなりカートを止めてどうしたの? もうちょっとで私が吹っ飛ばされるところだったよ」


 この疫病神は、異世界のことについて多少は理解しているし、私たちにもたくさん助けてくれている。


 でも、彼はまったく分かっていない。


 異世界で十三年も生活してきて、ずっと領地の農業に悩まされている私にとって。


 花の国の現代科学技術で改良された様々な野菜の種を見ることは、まるで金脈を発見した時のようなもので、それ以上に貴重なものなのだ。


 私は彼の嘆きを無視した。


 目をぎらぎらと輝かせてその緑色の看板をじっと見つめながら、興奮に満ちた口調で、声さえもわずかに震えている。


「種だ! 野菜の種!」


 私は早足で種コーナーに向かって歩き出した。足取りは軽くて、心の底からの興奮を抑えることができない。


 ユーナは急いで私の足取りについてきて、顔には疑惑が満ちている。でもそれでも私にしっかりとついてきて、小さな声で聞いた。


「クローディア様、どうされたのですか? その種はとても重要なのですか? 私たち、もう芋類を種として買ったはずでは?」


「違うの、ユーナ」


 私は足を止めて、振り返ると、ユーナに向かって優しく微笑んだ。


「ここの種は、花の国の現代科学技術で改良されたものよ。収穫量が多くて、病気や害虫にも強い。しかも育つのが早いの。この種を持ち帰って、本のやり方に従って育てれば、きっとたくさんの野菜が収穫できるわ。そうすれば、領地の人々が野菜に困ることなんて、二度とないもの」


 ユーナは理解しかねた様子で頷いて、目に満ちていた疑惑が次第に消えていき、代わりに好奇心が浮かんできた。


 彼女は私について種専門コーナーまで歩いていき、棚に並んでいるたくさんの種を眺めながら、小さな声で呟いた。


「なるほど、その種って、そんなにすごいんですね……」


 棚に並んでいる種類は多種多様だ。トマト、キュウリ、トウガラシ、ホウレンソウ……


 すべてが揃っている。


 各種類の種はすべて透明なパッケージ袋に入っていて、上には詳しい栽培説明が印刷されている。


 それに成熟後の野菜の写真もあって、私の目が眩むほどだ。


 すべての種を買い占めたい気持ちでいっぱいだ。


 トウガラシ、トウモロコシ、トマト。


 これらのものは、エーリクセン領、さらには大陸全体にも存在しない産物だ。


 これらの種を持ち帰れば、間違いなく住民たちの食卓に並ぶ料理の種類を増やすことができる。


「佐藤さん! 早く、全部の種を三袋ずつ取ってきて!」


 私はつま先立って、棚の一番上のトマトの種に手を伸ばした。


 身長が百六十センチしかないから、届くのに少し苦労した。


 佐藤さんは急いで頷くと、早足で棚の前に踏み出し、慎重にいろんな種を手に取り、一つ一つ三袋ずつ取って、そっとショッピングカートに入れた。


 やっと全部の種を選び終わった頃には、カートは隙間一つないほどいっぱいになっていた。


 中には計測工具、缶詰、ブラックペッパー、種、本、それに順に選んだほかの物資が詰まって、ずっしりと重い。


 やがて、私たちはレジに辿り着いた。


 レジのお姉さんは統一された制服を着て、顔には標準的な笑みを浮かべていた。


 でも彼女が私たちのいっぱいのカートを見た時、彼女の顔の笑みが次第に硬くなっていった。


 目には驚きが満ちていて、口元の弧も不自然になっていた。


 彼女はバーコードリーダーを手に取り、一つ一つスキャンしていった。


 スキャンのスピードはますます速くなっていき、顔の表情もますます呆れていった。


 レシートは滝のようにレジから絶え間なく吐き出されて、すぐに一束になった。


 佐藤さんの身長よりも少し高いぐらいだ。


 佐藤さんはその束のレシートを抱えて、顔の色が一瞬で真っ青になった。悲鳴のように叫んだ。


「マジで!? 君たち、本当に仕入れに来たの!? こんなにたくさんものを買って、一体いくらかかるの!? それに、こんなにたくさんのもの、どうやって持って帰るつもりなの? 抱えて歩くわけにはいかないでしょ、私には絶対に持てないよ!」


 彼の声はとても大きくて、周りのたくさんの客の目を引きつけた。


 中には好奇心を持って私たちを眺めている人もいれば、笑い出した人もいる。


 それに、スマホを取り出して、こっそりとこの場面を撮影している人もいた。


 私はお金を払って、レジのお姉さんから渡されたショッピングバッグを受け取ると、相変わらず得意げな笑みを浮かべて、手首の収納リングをひらひらさせて言った。


「安心してよ、この程度のもの、何でもないわ。ちゃんと持って帰る方法があるから」


 佐藤さんは私の手首のリングを見て、やはり疑惑を抱いて、頭をかきながら小声で聞いた。


「まさか、そのリング、本当にこれだけのものを入れられるの? ありえないでしょ、こんな小さいリングがせいぜい入るのはスマホとか鍵とかじゃないの」


「すぐに分かるわ」


 私はこれ以上は説明せず、ユーナの手を引いてスーパーの出口に向かった。


 佐藤さんはあの束のレシートを抱えて、呆れながら私たちの後ろについてきて、口の中では絶え間なく文句を言っていた。


 黒い短い髪は汗で濡れて、額の前に貼りついていて、そばかすだらけの顔には不満が満ちていて、いじめられた子供のように見えた。


 スーパーを出ると、夕日はもう西に傾いていて、金色の残照が街道に差し込み、アスファルトを焼けるほど熱していた。


 空気の中には熱い息が漂っている。


 行き来する人波は相変わらず絶え間なく、一人一人が急いで歩いていて、家の方向に向かっていた。


 ……


 私は店を出てすぐに、収納リングに魔力を注ぎ込んだ。


 淡い青い光がリングの表面を滑り落ちて、棚に積み上げられた缶詰や種の袋が、まるで吸い込まれるようにリングの中に消えていった。


「えっ!? ま、魔法!? まさか本当に入るの!?」


 佐藤さんは目を丸くして、口を半開きにしたまま、あまりにも驚いて言葉も出ない様子だった。


 私は笑って頷いて、ユーナの手を優しく握り返した。


「さあ、行きましょう。まだたくさんのものが見つかっていないのよ」


 私は前を歩く佐藤さんの後ろについて、夕日の中を市街の中心に向かって進んでいった。


 風が頬を撫でて通り過ぎていった。私は不意に、前世の自分を思い出した。


 あの頃の私は、毎日残業で疲れ切っていて、スーパーに買い物に行くなんて、せいぜい週末だけのことだった。


 あの頃は、こんなにたくさんのものを一度に買ったことがあるだろうか?


 記憶を辿っても、はっきりした答えは出なかった。


 ただ、胸の奥にぼんやりとした感慨だけが残っていた。


「クローディア様? どうされましたか?」


 ユーナが私の袖を軽く引いて、心配そうに私の顔を覗き込んできた。


 私はかぶりを振って、笑って言った。


「ううん、何でもない。ただ、前にここにいた頃のことを少し思い出しただけ」


 私はもう一度、この見知った街並みを見渡した。


 見知った建物、見知った看板、それに見知った空気の香り——。


 でも、今の私には、守らなければならない人もいれば、守らなければならない領地もある。


 私はもう、あの孤独で疲れ切った社畜ではない。


「さあ、行きましょう。まだたくさん見つけなきゃいけないものが残っているの」


 私はユーナの手をしっかりと握り直して、夕日に照らされた街道を、まだ見ぬ「宝物」を求めて歩き出した。

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