124. 二人の絆
『奴隷であった私に救いの手を差し伸べてくれたあなた。私が生きる希望を灯してくれたクローディア。私が悲しい時、黙って傍にいてくれたクローディア……』
ユーナの声は次第に柔らかくなっていった。
一つ一つの言葉がまるで温かな流れのように、ゆっくりと私の心の底へと染み込んでいき、心の底に溜まっていた冷たさと羞恥を押し流してくれた。
「私が知っているのは、何者でもない。ただのあなた、ただのクローディアだけなのです」
温かい吐息が突然私の耳元を撫でた。
彼女の体から漂う淡い梅の花の体香が、浴室に満ちる湯気と混じり合って、ひときわ胸を打つ。
ユーナの声はずっと低く押し殺されていて、甘い震えが混じっている。
はっきりと私の耳に届く。
「どれだけの『あなた』がいようと、あなたの前世がどんな姿であろうと……この瞬間、私の心を躍らせているあなたこそが、私が一番好きな女の子なんです」
私の瞳が瞬時に収縮した。全身が強張って、呼吸さえも数秒間止まってしまった。
浴室の窓の隙間から一筋の涼やかな風が忍び込んできて、湯気をわずかに揺らした。
だが、胸の奥で炸裂しそうなほどの熱さは、それでも冷めてはくれない。
私はその場に立ち尽くした。脳裏が真っ白になって、ユーナの言葉が雷のように私の頭の中で轟然と響いている——彼女は私のことを好きだって?
まさか? 彼女はずっと私の侍女で、私に尽くして、世話を焼いてくれている。
それは忠義ゆえじゃないのか?
私は一度も、彼女が私に対して抱いている感情が「好き」だなんて思ったことなんてなかった。
長いこと抱いていた惑い。言葉にするのもはばかられるほどの心の動き。
彼女を守りたいと思った無意識の衝動。
それらすべてが、この瞬間、煙のように消え失せた。
私は突然、アムニート近くの森で魔獣の群れを始末した時のことを思い出した。
魔獣がユーナへと襲い掛かったあの瞬間、私は何も考えずに、身に纏っている魔力のすべてを使い果たしてでも彼女を救い出そうとしたんだ。
あの時、この身体はとうに、迷うことなく答えを出していたんだなんて。
私はゆっくりと手を上げて、ユーナの額にそっと触れた。
二人の絡み合った髪から滴り落ちる水玉が、私たちの手の甲に落ちていく。
温かくて、はっきりと感じられる。
私は深く息を吸い込み、心の底に渦巻いていた動揺と慌てを押し殺した。
声をひそめて言った。
「好きだよ」
言葉が落ちた瞬間、腕の中にいた少女が突然激しく震え始めた。
滾るほど熱い涙が彼女の頬を伝って滑り落ち、私の胸元に滴り落ちてくる。
その熱さに、私の胸がひりつくように締め付けられた。
私はそっと腕を伸ばして、彼女を強く抱き締めた。
彼女の華奢な肩がわずかに震えているのを感じながら、彼女の押し殺された泣き声が胸から伝わってくるのを感じている。
普段はいつも強がっているくせに、弱音を吐いたりしないくせに、時折私をからかってくるくせに。
そんなユーナが、今、私の腕の中で、涙で顔をぐしょぐしょにしている。
私はそっと彼女の背中を撫でて、優しくなだめている。
白金色の長い髪と彼女のピンク色の長い髪が、強く絡み合っている。
山茶花の花香と梅の花の体香が織りなす香りが、湯気に満ちる浴室の中で、まるで一つの優しい香りを醸し出している。
私はこれ以上何も言わずに、ただ黙って彼女を抱き締めていた。
彼女の心の底に溜まっていた感情を、発散させてやりながら。
彼女がこの言葉を待ちわびていたのが、どれだけ長い期間だったか。
それなのに私は、自分の鈍感さと怯えのせいで、彼女にこれほどまでに長い間待たせてしまっていたんだ。
どれだけ経っただろう。
ユーナの泣き声が次第に小さくなっていき、呼吸も穏やかなものへと変わっていった。
彼女は私の腕の中で、次第に眠りに落ちていった。
長い睫毛の上にはまだ乾ききらない涙の跡が残っていて、頬には淡い紅色が差している。
その顔は、なんて艶やかで可憐なんだろう。
私はそっと彼女を抱き上げた。
彼女は私の腕の中で、まるで羽根一枚のように軽い。
手を緩めれば、すうっと消え失せてしまいそうだ。
私は動作をゆっくりにして、そっと身を起こした。
私たちの体についている水気をタオルで拭い取ってから、彼女を抱いたままゆっくりと浴室を出た。
カーテンの隙間から月光が差し込んで、部屋の中に斑の光影を投げかけている。
涙の跡がまだ残っているユーナの顔に、その光はひときわ柔らかに降り注いでいる。
佐藤さんは出掛ける前に、私たちのために部屋を整えておいてくれたらしい。
ベッドの上には清潔なシーツが敷かれていて、淡い陽だまりの匂いが漂っている。
私は足音を忍ばせてユーナをベッドの上に寝かせた。
そっと彼女に掛け布団を掛けてやりながら、目を覚まさないように気をつけている。
指先がうっかり彼女の頬に触れて、温かくて柔らかかった。
ちょうど湯浴みに行って、体に溜まった疲れと心の動揺を癒やそうと思った矢先のことだった。
ユーナの指先が突然力を増したのに気づいた。
まるで助けを求めるかのように、私の手を必死に掴み締めている。
私はそっと手を引き離そうとしたが、彼女はもっと強く掴み締めて離そうとしない。
眉間には皺が寄せられ、口の中では小さな声で私の名前を呟いている。
眠りの中にあっても、手を離そうとはしないのだ。
私は思わず笑みを零してしまった。
心の底から温かい感情が湧き上がってくる。
すべての羞恥と不安が、この瞬間に消え失せた。
私はもう一度彼女の傍らに横たわることにした。
横を向いて彼女の顔を眺めている。
かすかな月光を頼りに、彼女のわずかに震えている睫毛を眺めやり、彼女の均一で優しい呼吸音を聞きながら、この安らぎの中に次第に包み込まれていった。
私たちの指先は依然として強く絡み合ったままだ。
掌から掌へと、体温が互いに伝わっていく。
この静まり返った夜の中で、まるで鼓動さえも次第に同調していくかのようだ。
優しくて、力強い。
(おやすみ、ユーナ)
私は心の中でそっと囁いた。ゆっくりと目を閉じていった。
これまで感じたことのない安らぎがあった。
彼女が傍にいてくれる限り、どこにいようと、一人きりで寂しいなんて思うことはないだろう。
私はこんなに安らかで優しい夜になると思っていた。
だが、予想だにしない痛みが、この静寂を破ることになろうとは。
鋭い痛みが突然私の下腹から炸裂した。まるで無数の細い針で突き刺されているかのようだ。
それに、鈍い刃物で腹腔の中をかき回されているような感覚。
その痛さに、私は眠りから勢いよく引き戻された。
冷や汗が瞬時に背中を伝って寝間着に染み込み、べったりと肌に張り付いて、ひときわ気持ちが悪い。
私は身体を丸めるように縮こまらせた。
両手で下腹を強く押さえ付けている。
爪が掌に深く食い込むほどの強さで、この激しい痛みを和らげようとする。
歯を食い縛って下唇を噛み、苦しげな呻き声を漏らさないようにしているが、それでも身体は制御できずに震え続けている。
「どうしたの、クローディア?」
ユーナは私の突然の動きに驚いて目を覚ました。
瞳には驚きが満ちている。
彼女は即座に身を起こすと、私の傍らへと駆け寄ってきた。
温かい掌が私の冷や汗に濡れた額にそっと触れる。
口調には心配が満ちている。
「どこか具合が悪いの? 魔力の消費が激しすぎたんじゃないの?」
私は下唇を噛み締めたまま、ようやく言葉を絞り出した。
声はこれ以上なく弱々しくて、ほとんど聞き取れないほどだ。
「もしかして……あれ、また来ちゃったみたい」
言葉が終わらないうちに、太ももの間から温かい何かが湧き出してくるのを感じた。
視線を下ろすと、真っ白なシーツの上に、目を眩ませるほど鮮やかな紅色がじわじわと広がっていて、ひときわ目立っていた。
私の心の中に慌てが渦巻いた。
前世では男だったから、こんなことは一度も経験したことがない。
転生してから一度経験したことはあるものの、それでもやはり何をどうしていいのか戸惑ってしまう。
特にこの激しい痛みは、私を支えきれないほどだ。
ユーナも慌てふためいていた。
すぐに身を起こすと、視線を下ろしてシーツを一目ちらりと眺め、それから私の蒼白な顔へと目をやった。
焦りながらも身を起こして言った。
「まずい! 生理用ナプキンを持ってくるのを忘れてしまった! クローディア、今すぐ転送魔法を発動できる? 借りている小屋に戻って取ってこよう!」
私は首を横に振った。下腹に走る間断ない痛みに、呼吸さえも震えている。
言葉は途切れ途切れになっている。
「だめ……だめだ。魔力が……魔力がまだ回復してなくて、転送魔法なんて発動できない」
心の中では私も焦っている。
こんな時には、精神を集中させて転送魔法を放つことさえ困難だ。
無理やりに発動させれば、私たち二人が時空の乱流の中に巻き込まれてしまうだけかもしれない。
私も以前、領地の侍女たちから聞いたことがある。
生理痛がひどい女性はごくわずかだ、なんて。
だが、私は明らかにその最も不幸な部類に入っているらしく、身体が引き裂かれるような痛みだ。
私たちが取り乱しているちょうどその時、部屋のドアが突然押し開かれた。
佐藤さんがハミングをしながら入ってきたところだった。
手にはパンを掴んでいて、口の中でははっきりとしない声で言っていた。
「お二人ともおはようございます――朝ご飯買ってきましたよ、早く起きて食べ……」
彼の言葉が終わらないうちに、部屋の中の光景を目に留めた。
顔に浮かんでいた笑みが瞬時に強張った。
手に掴んでいたパンも床の上に落ちてしまった。
「佐藤さん!」
私はまるで救いの手を摑み得たかのように叫んだ。
口調には切実さが満ちている。
恥ずかしさを気にしている場合ではない。
すぐに言った。
「生理用ナプキンと、痛み止めの薬を買ってきてくれませんか? 私……本当につらいんです」
若い佐藤さんはその場に強張ったまま動けなくなってしまった。
目を見開き、首から耳元にかけて真っ赤に染まっていく。
耳の先までが赤くなっている。口の中ではどもりながら言っている。
「せ、生理用ナプキン? そ、それってあの……こ、こういうもの、僕が買いに行くなんて……それはちょっと……」
彼は取り乱した様子でその場に立ち尽くしている。両手で絶え間なく服の裾を揉み続けている。
顔は茹で上がったカニのように真っ赤だ。
あの気まずくて慌てふためいている様子は、眺めているこちら側としても、可哀想になりつつも、なんだか笑えてくる。
何しろ彼は男の子なのだ。
それに、独身期間と同じだけの年齢を重ねてきた童貞なのだ。
彼女たちの専用のものを買いに行かされるなんて、本当に困ってしまうことだろう。
私は弱々しく頭を上げた。
冷や汗が頬を伝って滴り落ち、枕に染み込んでいる。
声にはいくぶんの哀願が混じっている。
「お願い……本当に……もう限界なんだ……」
下腹に走る痛みはどんどん強くなっていく。
私はもう、意識を失ってしまいそうな感覚さえ覚えている。
ただ必死に歯を食い縛って、その痛みに耐え続けながら言葉を紡いでいる。
佐藤さんは私の蒼白な顔を眺め、それからユーナの焦りに満ちた眼差しを眺めた。
最期には決心がついたようだった。
狂ったように自分のぼさぼさの黒い短髪を掻きむしり続けている。
最期には自暴自棄になったように大声で叫んだ。
「分かった! 分かったよ! 今行ってくるから!」
そう言い終えると、彼は手足がちぐはぐになったような格好で部屋を飛び出していった。
慌てふためいている最中に敷居でつまずきそうになりながら、あの慌てふためいた後ろ姿が、廊下の突き当たりで瞬時に消え失せていった。
いつもお付き合いいただき、ありがとうございます。
最近、家の手伝いや旅行でばたばたしており、小説の更新が少し滞ってしまっていました。
ようやく一段落して落ち着いたので、明日からはまたこれまでのペースに戻って執筆を再開できるかと思います。
気力が乗れば、これまでよりももっと更新できるかも……!?
応援よろしくお願いいたします!




