107. 城門の遭遇
イスヴァール港の城門の上。
門衛の男は退屈そうに城楼の手すりにもたれかかっていた。両手を胸の前で組み、どこにも焦点の合わない目で城外の小道を遠くまで眺めている。
海風が潮を含んだ息を運んできて、額の前髪を揺らす。大きなあくびを漏らしながら、男は心の中で文句を漏らした。
(また退屈な一日だ。たまに岸に接岸できない商船が遠くをフラフラしているだけで、まともな動きは一切ねえ……)
男の視線が習慣的に城外の林の縁を撫でた瞬間、ピタリと止まった。目を疑って二度擦る。顔から弛緩が消え去る。
遠くない場所で、二人の「ブリキ缶」がノソリと港へ向かって歩いてくる。
厚い板甲が陽光の下で冷たい金属光沢を放ち、その足取りは沈着で、距離が離れていても「近寄るな」という気配がビシビシ伝わってくる。
門衛の心臓がドキリとした。これは普通じゃねえ——。
(この服装、この気配、決して普通の商人護衛じゃない。地元の平民でもない。喧嘩を売りに来たとしか思えねえ)
迷わず、男は城楼の階段を駆け下りた。足音が早い。服の裾が手すりに引っかかっても構わず、そのまま走り続けて、城壁の下にいる守備隊長のところまで辿り着いた。
「隊、隊長!た、大変です!城外の小道を二人のブリキ缶が歩いてきました。見たところ、どうも怪しいです!」
門衛は息を切らしながら、声に慌てふただしさを混ぜ、目には緊張が満ちている。
守備隊長は眉をひそめた。面倒くさそうな顔をしながらも、立ち上がって服の埃を払う。
「何慌ててんだ?ブリキ缶って何だ?大げさだな」
そう言いながらも、足早に城門の方へ向かい、二歩三歩で城楼へ駆け上がった。門衛が指し示す方向を眺める。
実はこれより少し前のことだ。一人のボロボロになったマフィアの構成員が、よろめきながら彼のところへ戻ってきていた。
息を切らしながら喚き散らした。二人の戦闘力がヤバい「ブリキ缶」がいて、外郭で略奪していた兄弟分をメッタメタにした、と。
早急に守備軍を戦闘態勢に入れ、このことを子爵様に報告するよう、とりわけ念押ししてきた。
言い終わると、そのマフィア構成員は恐怖で肝を冷やしたらしく、息も整わぬままマフィア本部の方へ猛然と走り去っていった。
あの「ブリキ缶」たちに追いつかれるんじゃないかとビクビクしながら。
だが守備隊長はこの話を全く当てにしていなかった。というより、あのマフィア構成員は大げさに言っているんじゃないかとすら思った。
彼の目から見れば、都市外郭で略奪を行うために派遣されたマフィア構成員たちは、使えないクズの寄せ集めだった。
普段は武器を持たない平民や弱小の商隊しか襲えないくせに、少しでも戦えそうな護衛隊に遭遇すると、ボロボロになって逃げ帰ってきて、彼に後始末を押し付ける。
最初の頃は実際に上に報告もしていたが、回数を重ねるうちに、子爵様は「また取るに足りないことか」と激昂して彼をひどく叱責した。
「使えないな。こんな小さなことも処理できないくせに、いつも自分のところに来やがって」
あれ以来、守備隊長は賢くなった。何事もまずは一旦押し付けて、様子を見てから動く。
自分でどうにもできない段階になって初めて、子爵様のお手を煩わせる。叱られるのを避けるためだ。
彼は目を細めて、遠くの方をゆっくりと歩いてくる二人の「ブリキ缶」を観察した。口元に蔑みの笑みを浮かべる。
(マフィアの連中はクズだが、まさか二人の若造にすら勝てないこともあるまい?それにこの二人の「缶」、見た目は痩せ細っていて、大人でもない。どれほどの腕前があろうか?)
自分の判断を確認するため、守備隊長は深く息を吸い込み、体内の魔力を呼び覚ました。指先に淡い微光が差し、二人の「ブリキ缶」に向かって魔力偵察を放つ。
彼が守備隊長に出世できたのも、この魔力適性のおかげだった。平民の中で、魔力を操れる者などそもそも少ない。それは彼にとって、平民の身分から抜け出し、出世するチャンスを意味していた。
今まで彼が魔力偵察を使った時、相手の実力が強すぎて具体的な実力等級が探せない場合でも、何の反応もないだけだった。異常が起きたことは一度もない。
だが今回、魔力が二人の「ブリキ缶」に触れた瞬間——。
一つのふざけた、そしてぶん殴りたくなるような声が、直接彼の脳内に響いた。隠しきれない蔑みを込めて。
『雑魚が、その程度の実力で私たちを偵察しようなんて思うなよ?』
守備隊長は全身が硬直した。顔の蔑みが信じられないものに変わり、目を見開き、口が拳大に開いた。
その場に立ち尽くし、頭の中が真っ白になった。聞いた声を何度も確認する。
——耳がどうかしてるんじゃないのか?
まさか自分が魔力を使って逆向きに侮辱されるなんてことがある?あまりにもムカつく!
彼が生きてきた中で、初めて遭遇する出来事だった。怒りの炎が一瞬で心に湧き上がる。
だが同時に、心底から強い不安も湧き上がってきた。
彼ははっきりと分かっていた。これはもう普通の状況じゃない。あの二人の「ブリキ缶」の実力は、想像を絶するほど彼を上回っている。絶対に自分が相手できるレベルじゃない。
躊躇っている暇はなかった。怒りに構っている場合じゃない。
彼は振り返ると、階段口に向かって猛然と走り出した。足元がおぼつかず、転びそうになりながら。
走りながら心の中で罵った。
(あのクズのマフィア、嘘をついてなかった。この二人は本当に手ごわい!急いで子爵府に報告しないと、遅れたら手遅れだ!)
彼が知らないことだが、これは実はクローディアが特別に開発した小さな魔法だった。
普段、誰かが魔力で彼女を偵察し、彼女の実力を正確に探り出せない時、彼女はこの魔法を使って相手を十分に侮辱する。
面白いし、相手に「私たちはそうそう狙える獲物じゃない」という警告も兼ねている。
今この瞬間、クローディアは厚い板甲を着て先頭を歩いていた。
俺は心の中で既にこれからの行程を計算し尽くしている。城楼の上で侮辱された守備隊長のことなど、爪の垢ほども気にしていない。
守備隊長は子爵府の方へ猛然と走りながら、城壁の下にいる守備軍の兵士たちに向かって叫んだ。声が切迫して、慌てふためいている。
「早くしろ!全員立て!急いであの二人のブリキ缶の入城速度を遅らせろ。早く入ってくるな!俺は子爵府に報告に行く、早くしろ!」
城壁の下にいた守備軍の兵士たちは一瞬呆然とした。顔を見合わせる。明らかに何が起きたのか理解できていない。
さっきまで隊長は蔑むような態度だったのに、どうして突然そんなに慌てふためいているのか?
だが命令に逆らえず、慌てて「受領しました」と返事をして、手に武器を取ると、城外の遠くにいる二人の「ブリキ缶」に向かって目をやった。
だが、彼らがその二人の「ブリキ缶」の姿をはっきりと見た時、顔の落ち着きが消え去り、代わりに濃い恐怖が浮かんだ。
多くの者の手から武器が微かに震え始めた。
先頭にいる白い「ブリキ缶」は、手に黒い気を纏う長剣をしっかりと握っている。
その黒い剣は周りに濃厚な殺気を放ち、冷たさが骨まで染みる。見ただけで全身が冷たくなり、冷や汗が背中の衣を瞬時に濡らし、呼吸さえ荒くなる。
そして白い「缶」の後に続くピンク色の「缶」は、手に漆黒の戦槌を握っている。
戦槌には薄い赤の不明な破片が付着していて、ほのかな血の臭いを放ち、目を覆うばかりの凄惨さだ。
胆っ玉の小さい衛兵の一人が、その戦槌の破片を見て、さっきの守備隊長の慌てふためいた様子を連想し、腰を抜かしてその場に倒れ込み、白目を剥いてそのまま気絶してしまった。
彼らは本来、守備隊長の命令に従って、前に出て門を塞ぎ、あの二人の「ブリキ缶」の速度を少しでも遅らせるつもりだった。
だがこの光景を見て、全ての兵士が瞬時に挫けた。武器を放り出し、城壁の隅っこに隠れて、頭を出すことさえ恐れた。
冗談じゃない。一月に数枚の銀貨の給料で、何ができる?
その金のために命を捨てることはない。あの二人の「ブリキ缶」は見たところ手ごわそうだ。行ったらただの雑魚死にしかねない。彼らはそんな馬鹿じゃない。
城門の衛兵たちはそのまま隅っこに縮こまり、息を殺して隠れていた。
あの二人の「ブリキ缶」が大またで城門に向かって歩いてくるのを、目の前で見送るしかなかった。空っぽの城門を通り抜け、そのままイスヴァール港の中へと入っていく。
彼らは顔を上げて見る勇気すらなく、あの二人の姿が完全に視界から消えるまで、ようやく顔を出して、互いに顔を見合わせた。顔には幸せが溢れていた。
クローディアとユーナは、隅っこに隠れている兵士たちのことを全く気にしていなかった。
二人の目標は明確で、足取りは沈着だ。この街の核心、子爵府に向かってまっしぐらだった。
イスヴァール港自体がそもそも大きくなく、特に埠頭の建成区は範囲が限られている。
子爵府は城門から遠くなく、歩いて数分の道のりだ。




