クソじゃな聖杯は
「私がいながら面目次第もございません。主よ」
玉座の間で跪きながら、ゼハートは淡々と報告を締めくくった。
最近、上手くいきすぎていた。こういうことがあっても、おかしくはないだろう。
「いや、お前は最善の決断をした。ご苦労だ。ユリエルは」
「大魔導図書館にいらっしゃるかと。それと……先程、親衛隊隊長の死亡を確認。あの場では仕方がない事かと存じます」
「ユリエルを咎めるわけないだろ。あいつ……隊長は戦いに恭順した」
「立派な兵士でした」
「ああ。あいつの土地はお前が引き継ぎ、奴の部下に割り振ってくれ。おまえなら信頼できそうだ。それと、土地の中心に奴が好きな花を植えたガーデンを」
「御意。最後に、主のご報告と、注意事項がございます」
「村が焼き尽くされたことはユリエルに言わない」
「さすがでございます、我が主。あの戦で、親衛隊隊長は魔王軍が姿を現せば勇者軍を刺激するからと大気を厳命されていたそうです。残された兵士たちは村人を退避させたようですが……殲滅戦の最中、半分は犠牲になったと。中には、まだ子供もいたと」
「良い部下だ。お前が親衛隊の指揮を執れ。助けた村人は北の開墾地に。町づくりが悲しみを紛らわせてくれるかもしれん」
「御意」
影の中に姿を消したゼハートを見送って、俺は立ち上がった。
「幼帝」
「呼びつけておいて待たせるとは。まあ、事がことじゃ、許してやろう」
「ありがとうよ。……妙だと思わないか?」
「勇者軍の勇者らしくない行動のことかの? 余は執拗に奴らの地位や信用が失墜するよう策を弄した。しかし、連中の最近の行動は、外野の声を無視しているようにもとれる」
「ああ。聖杯は勇者が勝つために世界を書き換える魔道具だ。だが、このまま行くと連中、大英雄どころか大虐殺者だぞ」
「そうじゃの……まあただ、新しい顔もあったと聞く。そやつが何者かを調べるのが先じゃの」
「ああ。作戦は任せる」
「どこへ行くんじゃ?」
「ユリエルのところだ」
「適切な距離を保つんじゃ。うぬは魔王じゃ。誰からも恐れられる圧倒的な存在。魔王となった時点で、うぬはもう孤独なのじゃ。それにな、ユリエルも子供じゃない。たまには、信頼して見ろ」
「お前が言うと説得力があるな」
「殺すぞ」
「まあそれはそうとして。俺は北部開墾を手伝ってくる」
「魔王自らがそう言うことをするな。格が下がるというとろうが」
「俺は庶民は魔王なんでね。それにな、親父も同じようなことをしてたんだよ」
「そう言えば、先代魔王の情報がほとんどないな」
「勇者に殺された時、偶然全部燃えたんだ。聖杯が、偶然燃やした」
「クソじゃな、聖杯は」
「そうだろ」




