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魔女狩り

「ええと、ルカさん、これが任務?」

「ああ。良い任務だろう? 勇者軍の連中の戦闘の跡地でボロボロになった村の修繕作業だ。魔王軍の兵士たちを指揮してお前が完成させろ。良いな? 俺はぜハートとこの先の町に話を着けに行く」

「ユリエルさん、非常に重要な任務です。我々の話し合いの材料になりますので、くれぐれも、適度に頑張ってくださいね?」

「もちろん。人助けなら、やる」


 やる気満々のユリエルはふたりの背中を見送って、親衛隊を含めた魔王軍で村に向かった。


「魔王軍だって? ここはお前たちの来る場所じゃない!」

「あんたたちのせいで何人死んだと思ってるの!」


 最初の村は全く歓迎されていなかったが、ユリエルは黙々と作業を続けた。


 石を投げられることも合ったし、心無い言葉をかけられることも合ったが、仕事を済ませてそれでもユリエルは次も村へ向かった。

 次の村は誰も魔王軍を信じなかったが、かといって抵抗すれば何をされるか分かったものじゃないと、静観していた。

 その中でユリエルは黙々と作業を進める。魔法での修繕は地味なものが多く、材料を魔法で運んで、魔法で組み立てていく。一瞬で終わるような物はないが、丁寧に作ることで前よりも強固に修繕されていく。


「この辺りにはお花畑が、あるといいかも」

「ユリエル様、種はございますが、魔法で裂かせることは可能ですか?」

「お花を咲かせる、魔法はないけど、成長を促進する魔法なら、あるよ」


 魔族風邪からルカを救った際に、親衛隊隊長はユリエルによく従って仕事をするようになっていた。現状では、ルカの傍には新たな七魔将たるゼハートがいるせいもある。

 ユリエルが耕した土壌に親衛隊が種を植え、ユリエルが成長を促進させる魔法を使って可愛らしい花を咲かせた。


「わー、すごーい!」


 奥の方で見ていた子供の一人がユリエルの魔法に興奮したように声を上げた。

 すぐにそばにいた大人が子供を下がらせるが、ユリエルは花に魔法をかけて即席で束を作ると、ゆっくりと子供の方へ歩み寄った。


「はい、どうぞ」


 ユリエルは花束を子どもと、傍にいた大人に渡した。

 子どもは喜び、大人は怪訝そうな表情をしながらも花を受け取った。

 怖がらせてはいけないと、親衛隊はその間微動だにせず、ただユリエルの動向を伺った。

 ユリエルもまた満足そうにそれ以上何もせず、作業に戻った。

 木になったものがあれば修繕し、日が暮れても修繕を続け、次の日も、また次の日も、村が元の姿になるまで続けた。

 そうやって作業を続けていく内に、村はすっかりきれいな姿に見違えた。

 さすがにこれにはユリエルの中にも大きな満足感があった。

 殺伐とした軍事作戦ではなく人助けはユリエルの自尊心を大きく満たした。

 本人にとっても長く遠い昔の記憶。また、子どもたちの笑顔と、自分の魔法で人を救えることが嬉しくてたまらなかった。


「あの……」

「え?」


 振り向くと、村人の多くが、ユリエルの元へ集っていた。

 何かされるのかと怯えたユリエルに、親衛隊はただ一歩も動かなかった。

 代表者が一つ前に出ると、ユリエルに差し出したものは人形と、パイだった。


「この町の工芸品と、アップルパイです。その……ありがとうございました」

『ありがとうございました!』


 全員が頭を下げ、子どもたちもユリエルの元へ駆け寄った。


「お姉ちゃんすごい! 今度私にも魔法を教えてよ!」

「ああ、うん。魔導書、置いて行く、から」

「どうやってそんなに魔法を覚えたの?」

「勉強が、好きで……」

「魔力はどうやったら上がるの?」

「いや、生まれつきだから……努力でどうにかなる物でもない、かも?」

「こらこら、魔法使い様もお忙しいのだから。その……魔王軍の噂だけ聞いて、勘違いをしてしまって……すみませんでした」

「ああいや、世界に喧嘩売ったの、こっちが、悪いから」

「それでも、ありがとうございます」


 久しぶりの感謝を受けて、ユリエルは何とも言えない気持ちになった。

 どことなく、懐かしさがこみあげて来る。王国がユリエルを戦争に利用しようとしなければ、恐らくユリエルは、こんな生活を送っていたのだろう。

 グッと堪えて、次の村、もしくは町へ歩を進めた。


「雨が降ってまいりましたね。少し雨宿りをしましょう」


 そう言い、親衛隊隊長はハンカチを差し出した。


「雨なんか、降ってない」


 雨は降ってなどいなかった。

 ただ、涙を流すユリエルを気遣うように、親衛隊は立ち止った。

 ユリエルが落ち着くまで少しの間、魔王軍は進軍の足を緩めた。

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