第2話
「ううっ、ろくに挨拶できなかった」
「「そりゃそうだ」」
教室の自分の席でうな垂れていると、大樹と彰人が呆れた様子で僕を見下ろしていた。
「あはは。テレビで鹿島を見た時には遠い存在になっちまったかと思ったけど、変わらないな」
「そうよね。あ、価値出るかもしれないから、サインはちょうだい」
「テレビ見てたらうちの学校の可愛い、綺麗どころを侍らせて出てた時には殺意湧いたがな……」
「「「ああ、許せなかったぜぇ……」」」
なんでだ。
【魔王】討伐報告をテレビでさせられただけだし、乃亜達とは前々から一緒に行動してるから今更じゃないか。
デメリットスキルの宣伝もさせられてるから、無駄にメディアの前に立つ回数が多くて面倒だったのに。
ただ、僕らのようにデメリットスキルで苦しんでいる人はいるだろうから、レベルさえ上げきれば多少解放されることは伝えておくべきだと思ったので、お金とかもういらなかったけど、わざわざテレビに出たのだ。
そのせいで知名度が余計に上がってしまったけども、クラスメイト達は僕に対し、以前とさほど変わらない態度で接してくれるのは少し嬉しい。
だけど嫉妬心むき出しにしてくるのも以前と変わらないのは勘弁してほしいなぁ。
そんな事を思いながら、ようやく前と同じように学校生活を送る事が出来た。
お昼に乃亜達とご飯を食べるために移動している最中、滅茶苦茶周囲の人に見られたりしたけど、この程度は許容範囲。
明日もこんな風に変わらない日常になる。
「そう思ってたんだけどな~」
「「「Are you guilty? Yes, you are guilty!」」」
いや、なんで!?
放課後になって僕はクラスメイトの男子達に巧みに誘導されて、空き教室で椅子に座らされて縛られていた。
回を重ねるごとに捕まえるのが上手くなってない?
捕まる瞬間まで敵意とか違和感とか全く感じさせずに誘導するとか、無駄に手口が巧妙になってるんだけど。
「この時を待っていたぞ蒼汰」
「毎回乃亜達にお仕置きされてるのに懲りないな!?」
「はっ。甘く見るなよ。今回はちゃんとお前の嫁達には他のクラスのやつに頼んで監視してもらい、ここに近づかないか見張ってもらってるに決まってるだろうが!」
「用意周到すぎる!」
そこまでして僕に嫉妬の矛先向けなくてもよくないかな?!
なんでようやく日常に戻ってきたと思ったら、こんな殺伐したクラスメイト達とのコミュニケーションをしないといけないんだ。
これも日常? 嫌すぎる。
「さて、じゃあ――処刑するか」
「待 っ て」
だからなんで裁判無視して処刑が始まるんだよ。
もうここはすでに処刑場なの?
「安心しろよ蒼汰。ちゃんとお前の声が外に漏れないよう、猿轡まで準備してるんだぞ」
「笑顔で持ってこないで。別に外に悲鳴が聞こえてしまうことを危惧してはいないんだよ」
むしろ聞こえて誰か助けが入る事を望むよ。
「観念しろ蒼汰。テレビで英雄ともてはやされるだけでなく、何故か最終的に世間にハーレムを好意的に受け止められ、その嫁達との馴れ初めを聞かされたオレ達はもう止まらねえんだ」
「理不尽すぎる」
「それに……」
「それに?」
「蒼汰。お前、卒業しただろ」
この場合の卒業と言えば、当然学校ではなく下半身事情なのは間違いない。
……な、何のことかな?
それを口に出そうとしたけれど、ここにいるほぼ全員の圧があまりにも強くて言えなかった。
「無言は肯定とみなす。というか、もうお前らの様子からしてそうだろうとほぼほぼ確信してんだよ!」
だって仕方ないじゃないか!
ガチャ欲があった時は性欲と拮抗するどころかむしろ上回っていたけれど、[無課金]の最終派生スキルを使ってガチャ欲が1週間失われてたせいで、その期間に乃亜達と接してたら、そりゃ、ね……。
「よし、殺そう」
「止めて」
心の声でも漏れてたのか大樹達の怒りのボルテージが上がっている。
僕と何故かいる彰人以外の全員の目がイッちゃってて、目に光がなくて怖いよ。
「助けて彰人」
「ん~さすがにこれは無理かな。まあ実際に殺してはこないから大丈夫だよ」
「殺される以外のことはされるの?!」
ぶっちゃけ多少の怪我でも、なんなら殺されようとも〔穢れなき純白はやがて漆黒に染まる〕や〔簒奪せし命の器〕で、回復、復活できるけれども、わざわざ痛い思いなんてしたくないし。
こうなったら仕方ないか。
「1つだけいい?」
「言ってみろ」
「君達の中に裏切者がいるよ」
「なにを言っているんだ?」
「君達童貞同盟は――」
「そんな名前を付けて呼ぶなーー!!」
僕を処刑しようとしてる理由がそれなんだから別によくない?
「失敬。ただ僕が言いたいのは、石を投げていいのは罪の無い者だけだよ」
「ん、何が言いたいんだ?」
「この中に童貞じゃないのがいるのに、そいつまで僕を断罪しようとするのはおかしくない?」
「なん、だと!?」
全員がキョロキョロと他のクラスメイト達の顔を見回しており、誰がそうなのか疑い出していた。




