第47話 星と一直線の恋標
「……当たり。やっぱり先輩、叔母のこと覚えててくれたんですね」
なぎさが夜空で一番眩しく輝く一番星のような笑顔を見せた瞬間、俺の心臓は激しく跳ねた。
目の前の少女は、俺が今でも心の中に大切にしまっている――あの温かい太陽のような松岡先生と繋がっている。
動揺を隠せない俺をよそに、なぎさは机に身を乗り出してきた。
「叔母から『教え子に水泳を頑張っている子がいた』って話を聞いてから、ずっと気になってたんです。だから試合を見に行って、先輩の泳ぎに一目惚れして……。それで、この高校に来たんです」
なぎさは自分の胸に手を当てて、真っ直ぐに俺を見た。
「最初は、叔母が褒めていた人への興味だけだったかもしれません。でも、この一ヶ月、隣で先輩を見ていて確信しました」
図書室の静寂が、急に重たく感じられる。
ちりちりと強く瞬く彼女の瞳には、一切の迷いも、含みもない。
「私、先輩のことが好きです。ファンとしてじゃなくて、一人の女の子として。……先輩の特別になりたいです」
その言葉は、俺の想定を軽々と飛び越えてきた。
なぎさは、俺がかつてあの太陽に抱いていた想いなんて、これっぽっちも知らない。
ただ純粋に、今の俺を見て、星の光のような真っ直ぐな熱量で俺という人間にぶつかってきている。
「返事は、今すぐじゃなくていいです! 先輩が私のことを『後輩』じゃなくて『浅野なぎさ』として意識してくれるまで、私、諦めませんから」
なぎさはそれだけ言い残すと、顔を真っ赤にしながら、夜空を駆ける流星のように図書室を飛び出していった。
一人残された俺の手元には、彼女が忘れていった参考書と、夕日に照らされた静かな空間。
「……参ったな」
俺は熱くなった顔を両手で覆った。
なぎさは何も知らない。
俺が今も、彼女の叔母である松岡先生の面影を追っていることを。
暗闇を躊躇なく射抜くような、まっさらな星の好意を向けられた衝撃に、俺の心は激しく波打っていた。




