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勝利戦隊ビクトリーレンジャー  作者: おおたこ


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第 6話:ヤバい バレそう もうひとつのわ・た・し

朝の光は、うそをつかない。

でも、人の顔は、よくうそをつく。


森山はるこは、教室の窓際で笑っていた。

いつも通り。

たぶん、いつも通りに見えたはずだった。


けれど。


胸の奥だけが、ぜんぜん落ち着かない。


「……なんで、こんなにドキドキするの」


小さくつぶやく。


手の中には、机の角で折れそうなくらいくしゃっとしたメモ。

さくらからの放課後のお誘いが、そこに書いてある。


一緒に帰ろう。

少しだけ、遊びに行かない。


たったそれだけ。

たったそれだけなのに。


はるこの心は、昨日からずっと浮いたままだった。


そこへ、にけの声が研究所に響く。


「博士、反応ありです!」


モニターに映るのは、海の底の要塞デフィトパレス。

その中心で、ディフィーペアの幹部たちが何かを企んでいた。


ヘリンフェルは、静かだった。


静かすぎて、逆に怖い。


「ビクトリーレンジャーは、仲間で動く」


その一言で、ミスーネが細く笑う。


「じゃあ、そこを壊せばいいのね」


「そうだ」


ヘリンフェルの目が、ゆっくり細くなる。


「強さを壊すな。心を揺らせ。

一番大事なものを、ぐらっとさせるんだ」


オメガメアが低くうなずいた。


「秘密、ですか」


「そう。

秘密は、人を強くもする。

でも、バレた時は、いちばん弱くなる」


ミスーネが指先を光らせる。


「なら、はるこからね」


その名前に、空気が止まった。


「彼女は、いま揺れている」


ヘリンフェルはモニターの向こうを見た。


「恋をしている顔だ」


ミスーネが目を細める。


「え、それヤバくない?」


「だから使う」


深海の闇が、ゆっくり口を開いた。


---


そのころ、希望研究所では、いつもの訓練が始まっていた。


かおるは竹刀を振る。

かれんは水を切って泳ぐ。

あすはは足を止めずに踏み込む。

ちさとは走る。

はるこは跳ぶ。


跳ぶたびに、体が軽くなる。

でも心は、重いままだった。


「はぁ……」


着地したはるこが、思わず息を漏らす。


博士がその顔を見て、少しだけ眉を上げる。


「今日は少し、上の空ね」


「えっ。そ、そんなことないです」


「あるわ」


にけがモニターを見ながら笑う。


「目が、完全に恋してる目でした」


「にけさん!?」


利奈まで吹き出す。


「わかりやすいわね」


はるこは顔を真っ赤にした。


「ち、違います!」


「違わない顔してる」


あすはが指をさす。


「何、何。だれかいるの?」


「い、いません!」


でも。


その返事が、もう怪しい。


博士はそっとため息をついた。


「……まあ、今日はそこまでにしておきましょう」


「え?」


「なにかあったら、すぐ話しに来なさい」


その優しい声に、はるこは少しだけうなずいた。


---


### りんとあやか


放課後。


廊下で、はるこは人にぶつかった。


「あっ」


顔を上げる。


そこにいたのは、りんとあやかだった。

クラスメイトで、部活も一緒の二人。


「はるこ!」


りんが目を丸くする。


あやかも、その隣で笑った。


「やっと会えた」


はるこは、息を止めた。


二人の目は、少し真剣だった。


りんが小さな声で言う。


「見たの。はるこの、もうひとつの姿」


「……え」


「変身するところ」


はるこの背中が、すっと冷える。


「そ、そんな……」


あやかは慌てたように手を振った。


「だいじょうぶ。誰にも言わない」


「本当?」


「本当」


りんもうなずく。


「約束する。秘密は守る」


はるこは、ほっとした。

でも、まだ胸の奥がざわついている。


「でも、お願いがあるの」


あやかが身を乗り出す。


「明日、あたしたちとどこか行こう」


「……え?」


「三人で」


りんが少し照れた顔をした。


「はること、ちゃんと遊びたいの」


その言葉で、はるこの心がふわっと揺れた。


うれしい。

でも。


「それは……」


「だめ?」


あやかがまっすぐ見る。


はるこは、言葉を探した。

でも、すぐには出てこない。


「博士に……聞いてみる」


「お願い!」


二人が笑う。


はるこも、つられて笑ってしまった。


けれど、その笑顔の奥で。

何かが小さく鳴った。


秘密を、守れるかな。

守らなきゃ。

でも、隠し続けるのは、もう少し苦しい。


---


### 相談


その日の夜。


はるこは研究所の扉をそっとノックした。


「博士……少しだけ、お話があります」


博士はすぐに顔を上げる。


「どうしたの」


はるこは少しだけ迷ってから、事情を話した。

りんとあやかに見られたこと。

秘密は守ると言ってくれたこと。

そして、明日一緒に遊びに行きたいと頼まれたこと。


博士は、しばらく黙っていた。


「……そう」


「だめ、でしょうか」


「だめではないわ」


「え?」


「ただし、条件つき」


はるこが背筋を伸ばす。


博士は、やさしいけれど、まっすぐな目で言った。


「明日のお出かけは認める。

でも、気を抜かないこと。

何かあれば、すぐ連絡。

あなたが無理をしたら、すぐ終わりにする」


「はい……」


「それと、かおるたちには私から話しておく」


はるこは、胸の重りが少しだけ軽くなるのを感じた。


「ありがとうございます、博士」


「いいのよ」


博士はそっと肩を叩いた。


「はるこ。あなたは、ひとりで抱えすぎる癖があるわ」


「……」


「でも、そういう子は強い。

だからこそ、誰かに預けることも覚えなさい」


その言葉を、はるこは胸の奥にしまった。


---


## B


### 遊園地


翌日。


はるこは約束の場所で、りんとあやかを待っていた。


制服じゃない、少しだけおしゃれな服。

それだけで、もう落ち着かない。


「おはよー!」


あやかが走ってくる。


「来てくれた!」


りんも、うれしそうに笑う。


「ありがとう、はるこ」


「うん」


はるこは、少しぎこちなく笑った。


三人は遊園地へ向かう。


観覧車。

ジェットコースター。

メリーゴーランド。

お化け屋敷。


ひとつひとつが、普段のはるこにはない世界だった。


ジェットコースターが落ちる。


「きゃあああ!」


あやかが叫ぶ。


りんは笑いながら手すりをつかむ。


「すごい声!」


はるこは、顔を真っ白にしながらも、なんとか声を出した。


「……た、高いね」


降りたあと、ベンチに座る。


あやかがのぞき込む。


「はるこ、大丈夫?」


「う、うん……ちょっとだけ、揺れてる」


「やっぱり苦手なんだ」


「ちが……う、かも……」


りんがくすっと笑う。


「無理しなくていいよ」


そのやさしさが、逆に胸にしみる。


観覧車では、町が小さく見えた。


風がやわらかい。


誰もいない空に近い場所で、りんがふと聞く。


「ねえ、はるこ。何か悩んでる?」


「え」


「今日、ずっと、ちょっとだけ遠い顔してる」


はるこは、はっとした。


見られてる。


やっぱり。


「そんなこと……」


言いかけて、止まる。


悩みはある。

秘密もある。

でも、言えない。


言いたいのに、言えない。


「ごめん。なんでもない」


りんはすぐに首を振った。


「ごめん。変なこと聞いた」


「ううん。ありがとう」


あやかも、やさしく笑う。


「今日は楽しくしよう。ね」


そのひと言で、はるこの胸が、じんと熱くなった。


---


でも、楽しい時間は、長く続かなかった。


遊園地の奥。

人の少ない場所。

高い壁でできた迷路。


そこに入った瞬間、はるこは嫌な気配を感じた。


「……いる」


背中が冷える。


「誰か、いる」


りんが振り返る。


「え?」


その時。


笑い声がした。


「よく来たわね」


ミスーネだった。


白く光る爪。

細い体。

その目は、ずっと前から見ていたみたいに冷たい。


「ミスーネ!」


はるこが身構える。


ミスーネは、くすっと笑った。


「今日は、いい日ね。

ひとり、ふたり、そして三人。

まとめて心が揺れる」


「何をする気!」


「見ればわかるわ」


次の瞬間、迷路の壁が動いた。


ゴゴゴゴ。


「えっ!?」


通路が分かれる。

りんとあやかが、はるこから引き離される。


「りん!」


「あやか!」


でも、もう遅い。


はるこは二人の姿を追おうとする。

でも、目の前にミスーネが立った。


「どちらかを助けたい?」


「……っ」


「いいわ。選びなさい」


モニターに映るのは、別々の場所に閉じ込められた二人。

不安そうな顔。

おびえた目。


はるこの喉が、きゅっと閉まる。


「そんなの……選べない」


ミスーネは肩をすくめた。


「じゃあ、どっちも失う?」


「やめて!」


「焦る顔、いいわね」


はるこは拳を握る。


でも、足が動かない。


ひとりを選べば、もうひとりが危ない。

両方を助けたいのに、体はひとつしかない。


その時だった。


迷路の壁の向こうから、声がした。


「はるこ!」


かおるだ。


「聞こえる!?」


「かおる……!」


続いて、かれん。


「落ち着いて。今、行くから」


あすはも叫ぶ。


「ひとりで抱えるな!」


ちさとの声は静かだった。


「大丈夫。私たち、いるから」


はるこの目が、ゆっくり潤む。


「みんな……」


博士の声が、通信越しに重なる。


「はるこ。あなたは一人じゃないわ」


その一言で、胸の奥の何かがほどけた。


「……そうだった」


はるこは、はっきりミスーネを見る。


「私は、ひとりじゃない」


ミスーネが目を細める。


「ふうん」


「二人とも助ける。あなたも止める」


「できるかしら」


「やってみせる」


---


希望研究所では、四人がすぐに動いていた。


「変身!」


赤い光。

青い光。

黄色い光。

白い光。


かおるたちは、迷わず飛び出す。


「はるこを助ける!」


「りんさんとあやかさんもね!」


「急ぎましょう」


「迷路なんて、壊してでも通る!」


博士が通信を送る。


「無茶はしないで。

でも、遠慮もしなくていい」


四人は、うなずいた。


遊園地に着くと、迷路はもう別の顔になっていた。

壁がねじれ、空気がぬるく、見えるはずの出口が消えている。


その中央で、はるこがミスーネと向かい合っていた。


「はるこ!」


四人の声が響く。


はるこの顔が、ぱっと明るくなる。


「みんな……!」


かれんがほっと息をつく。


「無事でよかった」


あすはが拳を鳴らす。


「だいじょうぶ。あとは任せて」


ミスーネは、鼻で笑った。


「揃ったところで、どうなるものでもないわ」


「やってみないとわからない!」


レッドが一歩出る。


「あなたが作った迷路なら、壊して道を作るだけ!」


「いいわね」


ミスーネの目が細くなる。


「じゃあ、見せてあげる」


デデマンたちが、壁の向こうからわらわらと現れた。


「うわ、数多い!」


あすはが思わず叫ぶ。


「人海戦術ってやつか」


「こっちは五人!」


レッドが叫ぶ。


「いける!」


ビクトリーレンジャー、変身。


五色の光が、迷路を染める。


はるこも、胸の前で手を握った。


「ビクトリーピンク!」


光が弾ける。


でも、その光は、いつものピンクじゃなかった。


もっとやわらかい。

もっと明るい。

花びらみたいに、ふわっと広がる光。


「……え?」


ピンクのドレスのような光が、はるこを包む。


白い空気。

淡い桃色。

そこに、希望の光が差し込む。


「これは……」


かおるが息をのむ。


「あたらしい……?」


はるこは、自分の手を見る。


「なに、これ……」


ミスーネが顔をしかめる。


「バカな……」


はるこは、ゆっくり顔を上げた。


「私は、さくらとりんとあやかを、守りたい」


「……」


「それだけじゃない。

みんなも。

かおるも。

かれんも。

あすはも。

ちさとも」


ピンクの光が、少し強くなる。


「みんなでいると、私、強くなれる」


その言葉に、四人の顔が変わる。


かれんがふっと笑う。


「それ、今すごくいいこと言った」


あすはがうなずく。


「完全に覚醒のやつじゃん」


ちさとも小さく目を細めた。


「来るわね」


はるこの手の中に、やわらかな杖の光が現れる。

先に、宝石みたいな輝き。


「……これが、私の……」


ミスーネの顔が引きつる。


「やめなさい……!」


でも遅い。


はるこが、杖を高く掲げた。


「ピンクフラワーリボン!」


眩い光が、迷路じゅうに広がる。


壁にまとわりついていた黒い気配が、少しずつほどけていく。


りんとあやかが閉じ込められた場所にも、その光が届いた。


「……あったかい」


「うん……」


二人の目から、涙がこぼれる。


はるこの光は、押しつけるんじゃない。

包みこむみたいに広がる。


ミスーネが歯を食いしばる。


「そんな……こんな光……!」


「これが、私たちの力だよ」


ピンクが静かに言う。


「ひとりじゃない光」


迷路の壁が、音を立てて崩れる。


ゴゴゴ……。


ミスーネは後ろへ飛びのいた。


「くっ……!」


「逃がさない!」


レッドが踏み込む。


「みんな、いくよ!」


五人の声がそろう。


「ビクトリーシュート!」


光の波が、まっすぐ走る。


ミスーネはそれを両腕で受け、顔をゆがめた。


「まだよ……!」


「まだでも、押し返す!」


イエローが叫ぶ。


「二人を傷つけたぶん、返してもらう!」


ホワイトも続く。


「あなたの絶望は、ここで終わり!」


迷路がまぶしく染まる。


その光の中で、ミスーネは、ついに笑えなくなった。


「……覚えてなさい」


黒い煙が、すっと細くなる。


「次は、もっといやなやり方をしてあげる」


そう言い残して、ミスーネは消えた。


デデマンたちも、あっという間に逃げていく。


静かになる迷路。


残されたのは、やわらかい光だけだった。


---


りんとあやかは、無事だった。


「はるこ!」


二人が駆け寄る。


はるこは、少しだけ笑った。


「ごめん。待たせた」


りんが首を振る。


「待っててよかった」


あやかも笑う。


「すごかったよ、はるこ」


はるこは、少し照れた。


「ありがとう」


そのあと、変身を解く。


もう、隠す必要はない。

少なくとも、今は。


三人で遊園地の入口へ戻ると、さっきまでの不思議な空気が消えていた。


ふつうの遊園地。

ふつうの笑い声。

ふつうの日差し。


それが、いまはすごくうれしい。


りんが言う。


「今日は、来てくれてありがとう」


あやかも言う。


「また一緒に遊ぼうね」


はるこは、うなずいた。


「うん。約束」


その顔は、朝よりずっとやわらかかった。


希望研究所に戻ると、博士が静かに待っていた。


「よくやったわ」


五人がそろって立つ。


「はるこも、ちゃんとやりきった」


はるこは、少しだけ頭を下げる。


「迷惑かけました」


「いいえ」


博士は首を振る。


「あなたが迷ったから、助ける理由がはっきりしたの」


はるこは目を丸くする。


博士はふっと笑った。


「隠したい自分も、守りたい自分も、どっちもあなたよ」


その言葉が、胸の奥にすっと落ちる。


かおるが、にやっと笑う。


「はるこ、今日はすごかった」


かれんも笑う。


「新しい力まで出しちゃって」


あすはが肩を組む。


「で、さくらは?」


「わあああっ、それは今言わないで!」


ちさとは小さく笑った。


その笑い声の中で、はるこは少しだけ安心した。


秘密は、まだある。

でも、ひとりで抱えなくていい。


それを知れた日だった。


そして。


海の底では、ミスーネが黒い爪をなぞっていた。


「恋ねえ……」


口元が、ゆっくり歪む。


「次は、もっと揺さぶってあげる」


その声は、遊園地の光の外まで、静かに染みていった。


---


## <つづく>


## 次回予告


街を襲う、ぬるりとした黒い影。

敵はスライムデスペ!


ベタつく。

絡まる。

飲みこむ。

しかも、ビクトリーレンジャーの四人が次々に捕まる!?


残されたのは、ビクトリーイエローだけ。


ひとりで戦うあすは。

でも、仲間を見捨てるなんてできない。


次回、第7話。


「誇れる仲間 救うため」

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