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ゆたかの怪奇列島第9章「アクロバティックさらさら」  作者: こうた


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第6話「本体戦」

白が、崩れる。


ヒビ。


空間そのものに走る亀裂。


黒が滲み出る。


“観測される側”が——


初めて、揺れている。


ゆたかが前に出る。


「通るで」


一歩。


踏み込む。


その瞬間——


“ドンッ!!”


圧が落ちる。


上から。


見えない何かが、叩きつけてくる。


人面犬が歯を食いしばる。


「ぐっ……!」


桃太郎も膝をつく。


だが——


倒れない。


視線は上げない。


あくまで。


“見ない”


ゆたかが笑う。


「効いとる証拠や」


拳を握る。


黒の歪みを——


“殴る”


“ガンッ!!”


音が響く。


触れた感触。


初めて。


確実に。


“そこにある”


空間が震える。


“ザワッ”


黒が波打つ。


人面犬が笑う。


「おいおい」


一拍。


「殴れんじゃねぇか」


一気に踏み込む。


牙を剥く。


“ガブッ!!”


噛みつく。


何もないはずの空間に。


だが——


手応えがある。


引き裂く。


“ビリッ”


黒が裂ける。


声はない。


だが——


明らかに“嫌がっている”


そのとき。


アクロバティックさらさら。


女が暴れる。


空間を跳ねる。


狂ったように。


「やめろや!!」


叫ぶ。


初めての焦り。


ゆたかが言う。


「繋がっとるからやろ」


一拍。


「お前も一緒に崩れる」


女の動きが乱れる。


明らかに。


黒幕と“同一構造”


桃太郎が立ち上がる。


ゆっくりと。


視線は落としたまま。


それでも——


進む。


「切る」


短く。


一歩。


踏み込む。


手を伸ばす。


黒の歪みへ。


直接。


触れる。


“ビリッ”


電流のような感覚。


全身を走る。


桃太郎の体が震える。


「っ……!」


だが——


離さない。


人面犬が叫ぶ。


「いいぞ!!」


ゆたかが続く。


「そのままや!!」


桃太郎が言う。


「……見る必要はない」


一拍。


「在ると認識すればいい」


その言葉。


空間が揺れる。


黒が歪む。


“観測のルール”がズレる。


人面犬が笑う。


「なるほどな」


一拍。


「見なくてもいいってか」


ゆたかがニヤリとする。


「選べるようになったな」


その瞬間——


“バキンッ!!”


大きな亀裂。


黒の中心に。


走る。


女が悲鳴を上げる。


「やめろやぁぁぁ!!」


暴れる。


跳ねる。


だが——


遅い。


完全に。


遅くなる。


ゆたかが踏み込む。


「終いや」


拳を振りかぶる。


狙いは一つ。


黒幕。


“観測の核”


そして——


“ドンッッ!!”


直撃。


空間が——


砕ける。


白が崩れる。


黒が裂ける。


光が差し込む。


人面犬が笑う。


「終わったな」


だが——


その瞬間。


“静寂”


完全な無音。


全てが止まる。


そして——


声。


今までで一番近く。


はっきりと。


冷たく。


「理解した」


一拍。


「観測される側に回るか」


ゆたかが眉をひそめる。


「……まだおるな」


黒は消えない。


裂けただけ。


崩れきらない。


桃太郎が言う。


「終わっていない」


人面犬が吐き捨てる。


「しぶといな」


だが——


確実に。


弱っている。


女が崩れる。


膝をつく。


呼吸が荒い。


「……なんでや……」


一拍。


「見てくれへんのや……」


震える声。


ゆたかが言う。


「終わりや」


一歩。


近づく。


だが——


まだ決着ではない。


“核”は残っている。


■ 第9章 第6話 終

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