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ゆたかの怪奇列島第9章「アクロバティックさらさら」  作者: こうた


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第5話「分断」

白い空間が——軋む。


歪み。


崩れかけた境界。


黒が混ざる。


そして——


“見られている”


巨大な何か。


形はない。


だが確実に“上”にいる。


全てを見下ろすように。


人面犬が低く唸る。


「気持ち悪ぃな」


ゆたかが睨む。


「こいつが元やな」


桃太郎。


一人だけ、動いている。


視線を——落としている。


見ない。


選んでいる。


震えながらも。


女の動きが鈍る。


明らかに。


アクロバティックさらさら。


存在が“軽くなる”。


不安定に。


ゆたかが言う。


「効いとる」


一歩。


前に出る。


今度は——


自分が見る。


女ではない。


その“奥”


黒幕。


直接ではない。


だが——


確実にそこにある“歪み”


それを——


“観る”


その瞬間。


空間がビリつく。


“ザワッ”


巨大な影が揺れる。


人面犬が笑う。


「おいおい」


一拍。


「見られてんのは向こうだけじゃねぇってか」


ゆたかが答える。


「そういうことや」


桃太郎が続ける。


「観測は一方ではない」


静かに。


だが確信を持って。


黒が揺れる。


わずかに。


初めて。


“反応”


そのとき——


外。


現実。


なな。


目を閉じたまま。


呼吸を整えている。


周囲。


人々はまだ——


侵食されている。


立ち尽くす者。


倒れる者。


呟く者。


「……見える……」


神父が指示する。


「視線を遮断してください」


ななが布を掴む。


片っ端から。


目を覆う。


「ほら!見るな!!」


必死に。


一人。


また一人。


正気に戻る。


だが——


数が多すぎる。


神父が呟く。


「持ちません……」


一拍。


「内側が先に崩れれば、すべて終わります」


内側。


白い空間。


黒幕の圧が強くなる。


空間が歪む。


桃太郎が一瞬、揺れる。


視線が上がりかける。


「っ……」


危ない。


戻りかける。


その瞬間。


ゆたかが言う。


「見るな」


短く。


強く。


桃太郎が歯を食いしばる。


「……分かっている」


下を見る。


無理やり。


意思で。


人面犬が横で言う。


「いいねぇ」


一拍。


「それだ」


女が叫ぶ。


「見ろや!!」


激しく動く。


空間を跳ねる。


桃太郎の周囲を回る。


視界に入ろうとする。


何度も。


何度も。


だが——


見ない。


一切。


そのたびに。


女の動きが鈍る。


遅くなる。


ゆたかが呟く。


「依存やな」


一拍。


「見てもらわな成立せえへん」


人面犬が笑う。


「ダセぇな」


その言葉。


女の動きが止まる。


一瞬。


揺れる。


存在が。


だが——


次の瞬間。


“ドンッ!!”


圧が爆発する。


黒幕の干渉。


直接。


空間がねじれる。


ゆたかたちが吹き飛ぶ。


桃太郎も崩れる。


視線が——


上がりかける。


「っ……!」


そのとき。


声。


冷たく。


はっきりと。


「なぜ見ない」


沈黙。


ゆたかが立ち上がる。


笑う。


「興味ないからや」


一拍。


「お前に」


空間が震える。


黒が揺れる。


さらに。


人面犬が吐き捨てる。


「つまんねぇんだよ」


一拍。


「そういうの」


桃太郎が続ける。


静かに。


「従わない」


その瞬間——


“ザワッ”


巨大な影が、大きく揺れる。


空間が裂ける。


ヒビが走る。


初めて。


明確に。


“崩れ始める”


外。


現実。


ななが気づく。


「……軽なった?」


空気。


明らかに。


重さが減る。


神父が確信する。


「干渉しています」


一拍。


「内側が効いています」


ななが笑う。


「やるやん……!」


内側。


ゆたかが拳を握る。


「通るな」


一歩。


前に出る。


黒幕を見る。


今度は——


完全に。


“観測する側”として。


人面犬が並ぶ。


桃太郎も。


三人。


揃う。


黒幕に向けて。


■ 第9章 第5話 終

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