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異世界戦国記~戦国の世に大うつけ者で戦闘スキルが無いと追い出されたけど天下布武やっちゃうよ~  作者: ボルトコボルト


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第91話 【閃光の急襲】犬山城主の蠢動と血戦の極意

「信長様、大変にございますッ! 犬山城主・織田信清が突如として謀叛を起こしましたぞッ!」


 那古野城の執務室で報告を受けた瞬間、俺は勢いよく立ち上がった。


 織田信清――俺の従兄弟にあたる男だ。彼が居城である犬山城と、その強力な与力である織田寛貞の楽田城で同時に挙兵したという。


(マジか……! 吉乃が生駒家から俺の側室(与力)として那古野へ入った件への嫌がらせか? それとも尾張北部に睨みを利かせる美濃の斎藤道三の裏工作か、あるいは岩倉織田氏の陰謀か……!?)


 当時の尾張国は八つの郡に分かれており、上四郡を支配する岩倉織田氏と、下四郡を支配する清洲織田氏によって分割統治されていた。俺の父・信秀は本来、清洲織田氏の単なる三奉行(家臣)に過ぎない。しかし、ダンジョン攻略による爆発的な経済力と圧倒的な武力を背景に、いまや主家である清洲織田氏どころか岩倉織田氏さえも凌駕し、尾張七郡にまで実質的な支配力を広げて侵食していたのだ。


 そんな中での犬山城主・信清の挙兵。犬山城と目と鼻の先にある生駒家の領地が真っ先に標的とされるのは目に見えている。


「よしッ! 生駒家の小折城が危険だ。すぐに救援に向かうぞ、出陣だッ!」


 俺は参謀の海野棟綱を急ぎ呼び寄せ、古渡城の親父(信秀)へ急報を打電するよう命じると、即座に相棒の神馬ニルを喚び寄せた。


「饗談、屋敷の者たちに伝えておけッ! 出陣だ! 俺は先行するッ!」


 庭へと豪快に舞い降りたニル。俺はその背へと跳び乗り、首筋を力強く叩いた。


「ニル、犬山城下へ向かって全速力で飛べッ!」


(承知したッ!)


 ニルの力強い念話と共に、八本の脚が滑空し、俺たちは一瞬で尾張の上空へと駆けあがった。


 ふと後ろを振り返ると、荒々しい風を切って新免無二が獣のような身軽さで追従してきていた。


「ガハハハッ! 戦だってなぁッ! 久々に骨のある奴らと殺し合えるかと思うと、血が滾って腕が鳴るぜぇッ!」


「アニキッ! いきなり空中を飛ばれたからビックリしたっすよッ!」


 無二のすぐ後ろには、気合十分の池田恒興が必死に食らいついている。さらにその背後からは、那古野城に所属する最精鋭の家臣団が凄まじい密度の気配を纏って続いていた。新しく加わった生駒家長、前田利春の息子たち、奥村永福、そして佐々成宗の息子たちといった若手武将たちも、必死の面持ちで後方から命がけで追いかけてきている。


 上空から眼下を見下ろすと、犬山城を出て楽田城の兵と合流した信清の軍勢が、街道沿いに約五百の陣形を組んでいるのが見えた。


 俺たちは空中から、一切の躊躇なく信清の本陣の真っ只中へと急降下した。


「な、なんじゃあぁぁぁぁぁぁッ!? 天から……天から馬と悪魔どもが降ってきたぞぉぉぉッ!?」


 五百の敵兵は、上空から彗星のごとく本陣へ突撃してくる俺たちの姿を仰ぎ見、ただただ恐怖に引きつった顔で愕然と固まっていた。


 ドズゥゥゥンッ……!


 ニルが地響きと共に着地すると、その身体から漏れ出る圧倒的な威圧感と密度の濃い魔力波により、周囲にいた信清の側近や護衛兵たちが一斉に惨めに尻餅をつき、悲鳴をあげて後退った。


「よいしょっとぉッ! 戦ってなぁ出陣したその瞬間から始まってんだよッ! ガハハハッ!」


 新免無二は馬上から疾風のように跳び降りるやいなや、着地の勢いのまま一閃。手近にいた敵兵の胴体を上下真っ二つに斬り裂いた。


「チッ、また一番槍を取られたっすかッ!」


 恒興は馬に乗ったまま左手で手綱をしっかりと握り締め、右手に握った太刀を上空から一気に振り下ろした。首骨を砕く嫌な音が響き、敵兵の生首が空へと高々と舞い上がる。


「油断大敵ってねッ!」


 ドカァンッ! と凄まじい衝撃音と共に、敵兵の群れの上へ馬ごと空から降ってきたのは帰蝶だ。一瞬で踏み潰された敵兵の悲鳴が上がる。


 他の家臣たちも次々と着地し、瞬く間に信清の本陣は血の地獄へと変貌していった。


「さあさあ、大将の首まで一直線だぜッ! 死ぬ気でかかってきやがれッ! 全員一斉に来いッ! ガハハハッ!」


 無二はあえて無防備に、ゆったりとした足取りで敵陣の奥へと歩を進める。その圧倒的な隙に耐えかねた四人の敵兵が、叫び声をあげて前後左右から同時に無二の首筋へ斬りかかった。


「無二さんッ!?」


 新規加入したばかりの若き武士・奥村永福が、無二の危機に思わず悲鳴のような声を張り上げる。


 だが――次の瞬間、無二の姿が目視不可能な速度で旋風のように回転した。


 ズバァッ……ッ!


 一瞬の交錯。前後左右から襲いかかった四人の敵兵は、何が起きたかも理解できぬまま、四者同時に首と胴体を切断されて崩れ落ちた。


「いいかぁ、永福ッ! 死に物狂いになった敵ってのはなぁ、右腕を斬り落とされたら左腕で、両腕を失ったら歯で、頭突きで、息絶える最後の瞬間まで喰らいついて来やがるんだよッ! ガハハッ!」


 上下に両断され、血の海に倒れた敵兵の一人が、凄惨な執念で最後の力を絞り出し、短刀を無二の足元へ刺し通そうとする。無二は一切動じることなく、腰の十手でその刃を冷酷に受け流すと、腕ごと刃を削ぎ落とした。


「だからこそ、一刀のもとに魂ごとあの世へ送ってやらねばならねぇ。だがそれでもなお喰らいついてくるのが『戦』だ。努々油断するんじゃねぇぞッ!」


 無二は血塗られた刀を力強く一閃させ、刀身にへばりついた血糊を払った。


「そしてな、人を殺すんだ。その殺した一人一人の命と執念を己の肉血の糧にして、その分強くなきゃ、死んでいった奴らに申し訳ねぇだろうがッ! それが戦場に立つ剣士としての最低限の礼儀だ。腹の底に叩き込んでおけッ! 型なんてのは教えてやらんが、強くなるための狂気と心構えならいくらでも叩き込んでやるぜッ! ガハハハッ!」


 奥村永福は無二の放つ凄絶な殺気と、足元で命を散らしていく死者たちの凄惨な姿を目に焼き付け、その言葉の意味を胸の奥深くまで噛み締めていた。


 わずか数分。信清の周りを固めていた精鋭兵たちは、俺たちの規格外の暴力の前に全滅していた。


 俺が二歳の頃から織田家の家老を務めていた内藤勝介と青山信昌の二人が、腰を抜かして泣き叫ぶ信清の首襟を激しく掴み上げ、地面を引き摺るようにして俺の前に突き出してきた。この二人、当時は家老といってもまだ若く、俺の教育係として那古野に派遣されていたのだが、今では他の猛者たちと同様、すっかり超実戦的な戦士へと仕上がっている。


「信清ぇぇぇッ! 謀叛の覚悟はできただろうなッ!?」


 俺がドスの効いた声で叫ぶと、内藤勝介と青山信昌が信清の両肩を力任せに押さえつけ、その首を俺の前へと差し出させた。


 俺は腰の刀を抜き放ち、上空へと高く振り上げた。


「ひぃぃぃぃッ!? 頼む、やめてくれぇぇぇッ! 頼む、もう絶対に裏切らねぇッ! 助けてくれえええええッ!」


 かつての威厳など欠片もなく、鼻汁と涙を撒き散らして命乞いをする信清の悲鳴が、血臭漂う本陣に虚しく響き渡った。

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