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異世界戦国記~戦国の世に大うつけ者で戦闘スキルが無いと追い出されたけど天下布武やっちゃうよ~  作者: ボルトコボルト


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第82話 【拡大する陣営】豪傑の継承者たちと軍師の冷徹なる進言

「政秀、報告はこれで以上か?」


 俺は平手政秀に向かって静かに尋ねた。


「それがですね、信長様……! 大浜の戦いに参加していた林秀貞殿の与力、ならびに信光様の軍として戦に加わっていた与力たちから、『ぜひとも信長様の与力に加えていただきたい』と内々に打診が届いておるのです!」


 政秀の言葉に、俺は思わず目を見張った。


 与力といえば、自前の領地と兵力を持つ地方の豪族たちだ。西洋で言えば領主に従属する寄子(騎士や下級貴族)のような存在である。つまり、俺が彼らの親(寄親)となって保護を与える代わりに、彼らの持つ強力な戦力をいつでも自由に動かせるようになるというわけだ。


 先日の大浜での圧倒的な無双戦法と異次元の兵器を目撃し、自らの未来を俺に託そうと考えたのだろう。


「いやあ、喉から手が出るほど欲しい人材だが……親父の傘下内で勝手に与力を鞍替えさせたりしたら、流石にまずいんじゃないか?」


 以前、小折城主の生駒家宗を独断で与力に引き入れようとした際、政秀から「順序が違いますぞ!」と大目玉を食らった過去がある。あの時は生駒殿と犬山城主の信清が裏で双方納得していたから事なきを得たが、今回も同じ手が通じるとは限らない。


「ご安心召されよ! すぐさま古渡の信秀様へ打診いたしましたところ、『与力を持たせるには年齢的にはまだ早いが……まあ、すでに志賀城主の平手政秀と小折城主の生駒家宗を与力にしておるからの。それほどの直臣・与力を従えるのもまた将の器というものよ。あっはっは!』と、快くお許しの発声をいただきましたぞ!」


「おお、親父も粋な計らいをしてくれるな! で、その与力になりたいって言ってきたのは誰なんだ?」


「ハッ! 林秀貞殿の与力であった荒子城主・前田利春殿。そして信秀様の直臣与力であった比良城主・佐々成宗殿の二名にございます!」


「マジか! 前田と佐々って……めちゃくちゃ熱い武功の家系じゃないか!」


 前田利春はあの『槍の又左』こと前田利家の親父であり、佐々成宗は後に鉄砲運用と勇猛さで名を馳せる佐々成政の親父だ。


 思えば昔、俺が那古野城の訓練場で新兵器の試射や現代の格闘術を盛り込んだ戦闘訓練をやっていた頃、利家と成政の二人が目を輝かせて頻繁に見学へ来ていたのを思い出す。


「なんでも、息子たちが『信長二十四人衆に自分も入りたい!』と大騒ぎいたしましてな。どうしても信長様の配下にしてくれと、親父殿たちを拝み倒して説得したそうでございます」


「だから二十四人衆なんて結成してないっての……。まあいい、これで俺の手元には那古野城、志賀城、小折城、荒子城、比良城の戦力が完全に揃ったわけだ。作戦の幅が段違いに広がるな。勘助、どう思う?」


 俺は車椅子に座る天才軍師・山本勘助に話題を振った。


「ふむ……素晴らしい戦力の拡充にございます。ただし、小折城の生駒家は根っからの武家商人。生駒の兵に直接的な戦闘力を期待するのはお門違いというもの。あそこには豊富な財力と、尾張・美濃をまたぐ商人ネットワークを生かした『情報網』を期待すべきでしょうな」


「まあ確かにそうだが、戦力がゼロというわけじゃない。むしろ生駒の財力を突っ込んで、新しい兵装や傭兵を買い集めて戦力を補強したっていいんだ。これから戦の規模もどんどん大きくなるからな」


 俺が今後の展望を語ると、勘助は片目を怪しく光らせ、平然と言い放った。


「ほう……では信長様、天下布武の進展を早めるため、今すぐ刺客を放って信秀様と信行様を暗殺し、一気に織田家の家督を奪い取りますか? 目標が天下であるならば、スタートの時期は早ければ早いほどよろしい」


「「「な、何を不吉なことを言っておるのだッ!?」」」


 大広間にいた養徳院と平手政秀が顔を真っ青にし、猛烈な目つきで勘助を睨みつけた。老臣である政秀などは、あまりの暴言に憤死しそうな勢いだ。


 しかし、すぐ隣にいる帰蝶、沢彦宗恩、快川紹喜、海野棟綱、そして真田幸隆の5人は、顔色一つ変えずに涼しい顔で会話を見守っていた。


 過酷な戦国時代において、下克上や家督争いの手段として肉親の排除など日常茶飯事。彼らは「主君である信長がどのような覚悟と倫理観を持っているのか」を試すように、静かに俺の答えを待っているのだ。


 家族としての情を一切排し、純粋な戦術的利益だけを弾き出すのが軍師・山本勘助の本領である。彼の言う通り、最短で織田家を掌握するならそれが最も効率的なのは間違いない。


 だが――俺の答えは最初から決まっている。


「おいおい勘助、物騒でバカなことを言うな。暗殺なんて下品な真似をする気は毛頭ないし、俺は親父の豪快なところが割と好きなんだよ。天下布武に向けた内政と技術改革の準備だって、今できる範囲で着実に進んでいるだろ?」


 勘助は養徳院たちの殺気立った視線を意にも介さず、肩をすくめて話を続けた。このような歯に衣着せぬ冷徹な物言いが、歴史上で他者から嫌われ、遠ざけられた原因なのだろう。


「フフフ、左様ですか。しかし、信行様側からの刺客は現在も頻繁に志賀城へ送り込まれておりますぞ。あの愚弟が生きておる限り、正攻法での家督相続には少々手間と時間がかかりますな。となれば……当面の間は、信秀様の繰り出す戦に付き合いながら力を蓄える、ということでよろしいな?」


 少し皮肉を交えながらも、勘助はすぐさま現実的な代替案へと思考を切り替えた。


 ズバリと言いすぎるきらいはあるが、まどろっこしい遠回りをせず、本質を突いてくれるからこそ俺にとっては一番やりやすい相手でもある。


 ちなみに、本気で暗殺をやろうと思えば、俺の配下である超一流の忍者・猿飛佐助や石川五右衛門たちを解き放てば、今日にでも信行の首など簡単に持ってこられるのだ。


「ああ、親父が生きているうちは親父の戦にしっかり付き合うさ。家督の継承についても、親父がどのタイミングで俺に譲るか、任せるつもりだ」


「承知いたしました。では、その方針に基づいて今後の織田家の動向と他国への戦略を練り上げましょう」


 勘助の言葉に、海野棟綱と真田幸隆が「ふむ」と満足そうに深く頷いた。


 情に流されず冷徹に盤面を見極める参謀たち。少し冷酷に思えるかもしれないが、これほど頼もしい味方は他にいない。俺たちは一丸となり、那古野城奪還後の新たな戦略へと足を踏み出していくのだった。

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