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異世界戦国記~戦国の世に大うつけ者で戦闘スキルが無いと追い出されたけど天下布武やっちゃうよ~  作者: ボルトコボルト


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第49話 迫る隣国の脅威と秘境への旅立ち

 志賀城を絶対的な拠点とした俺たちは、さらなる自軍の強化を目指し、日々苛烈な鍛錬とダンジョンや街道でのレベル上げに没頭していた。


 この世界では、俺がパーティに同行して戦闘に参加しなければ、仲間たちの経験値獲得効率やレベル上昇の補正が著しく低下してしまう仕様になっている。


 そのため、限られた時間を最大限に活用すべく、俺は小姓や配下の最強の猛者たちを三つの精鋭パーティに再編し、日替わりでそれぞれの部隊に加わってレベル底上げを図っていた。


 その三つのパーティ編成は以下の通りだ。


 ■第一組

 果心居士(後衛・アイテム収納・転移支援)

 新免無二(前衛・双剣術)

 池田恒興(前衛・遊撃)

 滝川慶次(前衛・傾奇槍)

 平手久秀(中衛・指揮)

 平手汎秀(前衛・槍術)

 滝川一益(索敵・後衛・鉄砲支援)


 ■第二組

 猿飛佐助(索敵・密偵・収納)

 内藤勝介(前衛・防衛)

 愛州小七郎(前衛・剣聖直伝)

 諸岡一羽(前衛・一羽流剣術)

 林崎甚助(前衛・抜刀術)

 高坂昌信(中衛・戦術指導)

 木下藤吉郎(後衛・雑用・補給)

 杉谷善住坊(後衛・巨体狙撃手)


 ■第三組

 石川五右衛門(索敵・密偵・収納)

 青山信昌(前衛・重装歩兵)

 富田勢源(前衛・中条流小太刀)

 鐘捲自斎(前衛・鐘捲流剣術)

 佐々木小次郎(前衛・物干し竿)

 山本勘助(中衛・軍略・魔法)

 内藤昌豊(前衛・機動戦)

 直子(後衛・粘糸牽制・指揮)


 どのグループを取っても、他国であれば一軍を率いる名将クラス、あるいは伝説級の武芸者や異能者が勢揃いした、まさに一騎当千の化け物パーティである。


 俺が同行しない非番のパーティは、志賀城周辺の防衛や村々の警備、現れ出でるモンスターや盗賊の討伐を完璧にこなし、空いた時間で道場に篭って厳しい手合わせを行っていた。


 ちなみに、許嫁の帰蝶はというと、俺の行くところに当然のような顔でぴったりと引っ付き、毎日のように行動を共にしていた。


 なお、志賀城の防衛強化に伴い、平手政秀の専属護衛役は猿飛佐助から、伊賀忍者の重鎮・伊賀崎道順へと極秘裏に変更された。佐助の圧倒的な機動力を、より広い範囲の密偵や索敵に充てるためだ。


 一方で、俺たちが着々と力を蓄えている裏で、尾張を取り巻く情勢は急激に悪化していた。


 織田家の当主である父・織田信秀は、勢力拡大を狙って美濃へと侵攻したものの、『美濃のマムシ』の異名を持つ名将・斎藤利政(後の斎藤道三)の老獪な罠に激しく嵌まり、壊滅的な大敗を喫してしまった。


 さらに挽回を期して三河へと出兵したものの、今度は松平広忠率いる頑強な三河武士団に返り討ちに遭い、大敗。織田家の威信と軍事力には、隠しきれない暗雲が立ち込め始めていたのだ。


 風の噂や忍びたちの極秘の報せによれば、美濃の斎藤利政と駿河の怪物・今川義元が裏で手を結び、東西から弱体化した尾張を挟み撃ちにして一気に呑み込もうと暗躍しているらしい。


(親父の勢力に陰りが見え始めたか……。だが、これでいい。歴史のうねりが早まれば、俺たちが舞台の表へと躍り出る機会もそれだけ早く訪れる)


 さて、尾張の包囲網に対処するためにも、俺はそろそろ紀伊の強力な武装勢力である『雑賀衆』および『根来衆』と直接面会し、極秘裏に同盟と協力を取り付けるべきだと考えていた。


 特に雑賀衆は、本来の歴史において石山本願寺と強固に手を組み、圧倒的な鉄砲火力をもって織田信長を数年にわたって苦しめ抜いた最強の鉄砲集団だ。


 彼らを敵に回すのではなく、事前に強固なよしみを通じて仲間に引き入れておくことは、天下布武の成就において死活問題と言える。


 さらに、杉谷善住坊から耳寄りの情報として聞いていた、伊勢の国に隠れ住む秘伝の錬金術師一族『坂氏』の元を訪れ、新型鉄砲や大砲開発のための特殊な火薬技術の協力を得たいとも考えていた。


(北伊勢は尾張からも近く、紀伊の雑賀や根来へ抜けるルート上にある。まずは北伊勢の坂氏の工房を訪ねるのが先決だな)


 北伊勢と言えば、伊賀や甲賀といった忍びの里にも極めて近い。


 お忍びの極秘旅となるため、同行させるメンツを精選する必要があった。


(忍びのサポート役として霧隠才蔵、あるいは鉄砲の専門家である滝川一益が良いか。根来へも顔を出す以上、現地に顔が利く杉谷善住坊の同行も不可欠だな……)


 俺は思考をまとめると、さっそく三人を呼び出し、北伊勢から紀伊の雑賀・根来へと渡る極秘お忍び旅の計画を切り出した。


 すると、部屋の扉が勢いよく開き、意気揚々と誰かが飛び込んできた。


「ちょっとぉーっ! 吉法師様! アタイを差し置いて旅立つなんて許しませんわよ! 当然、アタイも一緒に行きますからね!」


 帰蝶が腕をギュッと俺の腕に絡め、身体をすり寄せるようにして甘えるようにすがり付いてきた。


「アニキィ! 俺を置いて他国へ行くなんて、絶対に言わないっすよね!?」


 池田恒興もまた、必死の形相で部屋に転がり込んできた。


「おいおい、待てって。今回は伊勢も、雑賀や根来がある紀伊も、織田家にとっては完全な敵国、あるいは未踏の危険地帯なんだぞ? 大勢で押しかけたら一発で怪しまれる。だからこそ、少人数の極秘お忍びで行きたいんだよ」


 俺が困顔で説明すると、帰蝶がニヤリと可憐な悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「なるほど、吉法師様の仰る通りですわね。それならお忍びの邪魔になるツネちゃんは、お留守番に決定ですわね!」


 すでに自分は確定メンバーとして同行する『てい』で、帰蝶が恒興をジロリと見下ろす。


(まあ……こうなってしまったら、帰蝶を置いていくなんて無理なんだけどさ)


「ええええええっ!? 酷いっすよ帰蝶様! なんで俺だけお留守番なんすかぁ!?」


 恒興が悲鳴をあげる。すると帰蝶は、すまし顔で口を開いた。


「だってツネちゃんは、口が軽くてすぐ余計な一言を言っちゃうでしょう? 旅先でお忍びの正体がバレちゃったら大変ですもの。……ねッ、吉法師様?」


 帰蝶は首をちょこんと傾げ、潤んだ瞳で上目遣いに俺の顔を覗き込んできた。


 出た、いつもの計算し尽くされた殺傷能力抜群の『あざとかわいい』小悪魔ポーズだ。


「うっ……! そ、そうだな……帰蝶の言う通りだ。ツネは迂闊だから今回は志賀城でお留守番な」


「うぐぐっ……! た、確かに俺が迂闊で口が滑りやすいのは認めるっすよ!? でも今回は口に鍵をかけて絶対に気をつけるっす! だから頼むっすアニキ、俺も連れて行ってくださいよぉぉおお!」


 恒興が俺の膝にすがりつき、涙目で訴えかけてくる。


「人数が多くなればなるほど、お忍びの旅としては目立ってしまうだろうが」


「えええええっ!そこをなんとかお願いするっす! アニキの護衛として死ぬ気で働くっすからぁ!」


 その必死すぎるやり取りを呆れ顔で眺めていた滝川一益が、ハァと重い溜息をついて一歩前に出た。


「……やれやれ。吉法師様、拙者が今回の同行を辞退いたしますゆえ、代わりに恒興殿をお連れください」


「おおおおっ!? 一益さんっ! ありがとうございますっ! いやぁ持つべきものは優しい親戚っすね! アニキ、これで俺を連れて行けるっすよね!?」


 一益の申し出に一瞬で表情を輝かせ、期待に満ちた目で俺を見つめる恒興。


 一益は元々恒興の遠縁の親戚であり、恒興の強い推薦と紹介があって俺の臣下になってくれた経緯があるのだ。彼としても、そこまで必死な恒興を見捨て切れなかったのだろう。


「はぁ……全く、しょうがないヤツだな。一益に免じて連れて行ってやるよ」


 俺が折れると、横で腕を組んでいた杉谷善住坊が、大きな単眼を嫌そうに細めて鼻を鳴らした。


「おいおい、恒興の坊主。旅先で俺たちの足を引っ張るんじゃねえぞ?」


「善住坊さんまで酷いっす! 俺だってこれでも毎日レベル上げして強くなってるんすからね!」


 こうして押し問答の末、今回の北伊勢・紀伊への極秘視察旅のメンバーは、俺、帰蝶、池田恒興、杉谷善住坊、霧隠才蔵、そして果心居士の計六名に決定した。


(前衛のアタッカー枠が恒興一人で大丈夫なのか……? いや、俺も戦えるし善住坊もいるが、少々不安が残るな……)


 だが、果心居士の同行だけは絶対に譲れなかった。彼は広大な空間収納能力と高位の転移術を持ち、何よりかつて全国を修験者として放浪していたため各地の裏事情や土地勘にすこぶる明るい。危機的状況に陥った際、これほど頼りになる特命参謀は存在しないのだ。


「よし、全員準備は良いな? これより北伊勢の錬金術師一族、そして紀伊の雑賀・根来へ向けて極秘出発する!」


 俺の力強い宣言とともに、天下布武の未来を賭けた新たな異国への冒険が幕を開けたのだった。

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