未熟
「ハハッ!楽しそうだね!今は暗い話題が多いから元気出るよ!うい!海にも行っといで!」
「市場で海鮮買ってパーティーすると楽しいよ。」 「早くいこぉ!」
ドアの前で騒いでいるとおそらく住民である老夫婦と孫らしき人物たちが声をかけてきたため、
手を振り急いで中に入る。
「あー騒ぎすぎたな。うるさかったか」
波の音以外しなかった海辺で大人3人もはしゃいでいたら浮いて当然だ。
だが……普段鈍感な私ですら「普通の孫と老夫婦」に対してどうしても拭えない違和感を感じる。
「みたみた?顎引いてたしつま先に重心あったよね。
多分動きが警戒してる人のそれだしあの重心移動と歩き方絶対体術会得してる。」
「あぁ、たぶん空間に作用する才能じゃなくて物の方でしょう。
釣り竿とか意識をわざと向けないようにしてましたしね。……
さそれにミレイユの方を見ようとはしてませんでしたし。」
この3人の中で一番体躯の大きいミレイユを脅威とみなしたのか、はたまた怖かったのか
ある程度経験があれば年をとっていても近接で来るであろうミレイユから目を離すなんてことはしない。
視線の外し方があまりにも不自然だった。
いちばんの問題は足音にかかる体重の音があまりにも軽すぎることだろう。
「たぶん……年齢も違う。たぶんだいぶ若そう。子供かな。」
「んー。やっぱ匂い違ったなー。
表の匂いは一緒なんだけど奥にあるのは全然違くて、肌は似すぎて不自然なんだよなー。
…………え、ミレイユ、そうなの!?」
2人と話しながら廊下の気配を探る。
「今も聞き耳立ててるね。」
話に夢中になるあまり警戒を解いていたためシルニスの一言は場を凍らした。
「あぁ、大丈夫。遮音と偽装しているから外からは雑談しているようにしか聞こえないはずだよ。」
つけてきた3人より重い足音。
おそらく大人4人と交代したのだろう。
伝え方の是非で抗議するアルヒトと心臓を抑えるミレイユをほっておいて。
(何も起きらないことを願い………………平穏を堪能したい。)
シルニス愛用の氷が入った水のグラスがカラッっと音を立てる。
荒れた胃に冷水がチクチクと刺さる。
まぶしい太陽を眺めながらゆっくりと椅子に体重を預ける。
今日は久しぶりにいい睡眠ができそうだ。
一方屋根裏ではーー
(会話がおかしい…………ただの観光客ではないだろうな)
「ーーあいつらを見張ってくれ。」




