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53 ガラスの設計図

「パチッ☆うおっ!できたできた~イエーい!」

「ガンバッタネ!」

 未だにやっていた2人。私はお構いなく割って入った。

「はいはいおふたりさん。ウィンク練習はそこまでにして!カイト、最近設計図をうまく描けていないのか?」

 カイトはウィンクしたまま私の方を見る。目が今ウィンク状態にあることを忘れているのだろうか?

「あー、そうそう。何で知ってるんだ?」

「アリスに聞いたからだ。それしかなくないか?」

 カイトは瞬きをしながら純粋無垢な顔で見てくる。

「確かにな。……あーあー、マジなんで俺描けなくなったんだろ。修正とかは普通にやっていたんだけどな」

 私は一瞬まさかとは思ったが、試してみる気が出てきた。お土産袋からガラスペンを取り出す。アリスは出てきたガラスペンを眺めている。

「なぁカイト、このペンちょっと握ってみてくれよ。あ、力入れすぎんなよ結構脆いものだから」

 カイトは初めて見るような目でガラスペンを見ている。

「なんだこれ。めっちゃ透明だ。何の道具?」

 ペンの見た目はしていると思うけどなぁ。私は顔を変えずに話し始めた。

「ガラスペンって言うんだ。インクつけて使うペン。」

 カイトは優しくペンを受け取った。なんとなくで握ってみている。

「……鉛筆とは違うな、初めて持つこんな感じのペン。えーっと……」

 カイトは縁台の下にある鞄から、なにやら紙を取り出している。何も書かれていない、メモ帳のようなものだろうか。アリスも少し手伝ってあげていた。取り出した紙にカイトはガラスペンを滑らせてみる。

「……あれ、描けないや。力加減?」

 インク渡してなかった。私はお土産袋から黒のインクを取り出した。

「これをペンにつけて……これで描けるはずだ」

「すごいなこれ。インクはなんでペン先から落ちないんだ?」

 カイトはペン先を下から眺めている。もちろんこれは、ペン先のインクが滴ったが最後カイトの目にインクがインするオチもあり得た。無論アリスが心配している。そうはならなかったけど。カイトは紙にガラスペンで試し書きをしている。

「……どうだカイト。そのペン」

 カイトはしばらく線を書いたり、さっき食べていたイチゴ大福の断面を適当に描いてみたりしていた。トアが抹茶大福とカイトの絵を見比べている。何も言わないカイト。天然なだけではないようだ。

「……思ったより細い線を描けるんだな。てっきりインクが滲むのかなと。……えっ、これインクじゃん。消しゴムで消せなくね?」

「……大丈夫だよカイト」

 アリスが静かだが確実な存在感を含めた声色で言う。私は不思議そうな目でそれを眺めていた。

「餡子の水で……何度だって描き直せる……そうでしょ?」

 カイトはちょっとだけ反応している。少しだけ口角が上がっただろうか。

「……うん。そうだったわ。俺には餡子がついているんだったな」

「口にもついていることもあるけどね。あなたのそばには餡子があるんだよ」

 カイトとアリスが話している内容は、傍で聞いていてもさっぱり理解できない。餡子があるから大丈夫ってどういうことだ……?2人しか知らない何かがあるのだろうか?

「……オレ イケルカモ!イケルカモシレン……コノペンダッタラ……ナンカイケルカモ」

「えっ、なんでトアは俺が思ったことが分かるんだ?どうやってやったの?」

 声色だけ聞けばとても驚いているようには聞こえないが、本人はしっかり驚いている様子だった。

「トア ドクシンジュツトウサイカイワアンドロイド! ココロ コエ キケル!」

「なんだって?ドクシンジュツトウサイカイワアンドロイド? スゲエナ!」

 なんでこいつにもトアの片言がうつっているのかは理解できなかった。カイトはしばらくガラスペンを試した。

「……なんでかわからないが、これで船の設計図描けるかも。描きやすいというか、なんというか。」

 私は涼しく笑った、千宙の願いはしっかり届けたよ。まさかこんなすぐに見つかるとは思っていなかったけど。

「……カイト、そのガラスペンはね。私がさっきある人から預かってきたものなんだ。このペンを使ってくれる人を見つけてほしいっていう頼みでね。彼にはそのペンを使いこなせなかったらしいんだ。」

 カイトは相変わらずのポーカーフェイスで聞いている。トアが私の肩の上に抹茶大福食べながら乗っかってくる。

「君は、『正解』を見失っていたんだよ。設計図のね。」

「正解……?」

「うん。自分にしかわからない、自分だけの設計図の正解を。でもその正解は、意外と簡単に取り戻せたりする。……そのガラスペンを預けてきた少年から聞いた話だ。……どうだ?カイト。……今なら描けそうか?」

 カイトはガラスペンを眺めている。

「……描ける……というか……描きたい、かも……試してみたい。早く……」

 私は涼しく笑った。しかし忘れてはいけない。私は常に『対等』なのだ。相手にとっても、自分にとっても、必ず『対等』なのだ。


「カイト。そのガラスペンは君に託す。自分の正解を紡いでいってくれ。……で、正解を取り戻した君に頼みたい。私達が行おうとしている労働改革の『ミラーメトロ』の設計図を描くために、君の『正解』を貸してくれはしないか?」

 カイトは顔をまったく変えていない。たった一言。



 ——……設計図を描けばいいのか?いいぞ。……で、ミラーメトロって、何?——



 第4幕『箱舟の設計図』 完……?

ご覧いただきありがとうございます!第4幕はこれにて完結となります!文章中では微妙な感じになっていますが…完結ですのでね!よって次回からは第5幕『ねじれた道を行く者ども』をスタートいたします!お楽しみに!


 そしてそして!皆さんお待ちかね(?)ミラーメトロの設定資料を順次公開していきます!今日は『ミラ』を公開致します!そちらもどうぞお楽しみくださいね!!

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