47 透き通った世界からの招待状
しばらくの間、沈黙が続いた。あんな過去がスズさんに……。何も言えない。何にも言えなかった。そんな空気を割ったのはトアだった。トアはスズさんのもとに行き、抱き着いていた。
「……スズサン ワタシ イッショ イル」
頬を擦り合わせている。スズさんはニコっと笑った。
「……ありがとうトアさん。……ツムギ?」
ツムギははっとしつつスズさんの方を見ていた。あんな重い話の後だ。誰だって反応が鈍るのは無理もない。
「……この子のこと…………」
私は秒で我に返った。
「あーそうそう報告しようと思っていたんですけど……」
「今そういう雰囲気じゃなかっただろ!!なんでこうなる!?」
「うふふ。まぁ、見てるだけでも楽しいですし、今回はまぁいいでしょう」
さっきまでの雰囲気が水の泡だ。良いのだろうかこんな風に話が逸れてしまって。
「さてと。重い話をしてしまいましたね。私もできる限り協力いたしますので、何かありましたら頼ってくださいね。」
私は思い出したようにスズさんに聞いた。
「あ!そうだ。スズさん、聞きたいことが。」
「なんでしょう?」
「ガラスペンのあの個展に申し込んだのはいいんですが……私、もう1つ心当たりがあるんです。設計図とかを書く上でのヒントになりそうなものなんですけど……。前に、ガラスペンで絵を書いていたある高校生の魂を引導したんです。……彼、自殺をしてしまった魂で……」
スズさんは何やらポケットから何かを取り出している。バーチャルディスプレイだ。持ち運び可のやつ。スマホのような形態のそれから、映像が表示された。スズさんは私に続きを話すよう促す。
「その魂に、会えたりしないかなって思っていまして。面会的な。彼から何かヒントが得られないかなと……今ある心当たりが例の個展とこの魂ぐらいしかないんです。」
「成程、魂との面会ですか……。少々お待ちください、その魂が今どのような状態にあるかお調べします。ミラさんのソウルログデータから遡ったら、たどり着けるはずです。」
スズさんはしばらくバーチャルディスプレイを操作していた。ツムギは驚きが隠せない様子。
「や、やっぱりすごいやスズさんは……そんなすんなりミラの要求受けて対応できる人とかいないと思うんだけど……」
「おい、私はそんな無茶ぶりしないだろ?」
「……いやぁ……まぁまぁ振り回すことある気がするぜ……」
「……高校生の魂…………その魂の状況等、何か覚えていることはありませんか?」
スズさんがバーチャルディスプレイを操作を見ながら聞く。
「亡霊になりかけていた魂でした。声はもう失っていて、ギリギリ魂の状態で引導しました。」
スズさんが何やら引導データをスクロールしている。
「……!、これですね。彼の状況は……。……え、え?……な、なんという偶然なのです……」
スズさんが驚いた声を出している。私とツムギはスズさんのディスプレイを覗き込んだ。
「……例のガラスペンの個展の主催者のようですよ、その魂さん。」
「えぇ!?」
「そんなことあるのか!?」
まさかの偶然。主催者が本人だったとは。まさに青天の霹靂だ。しかし少し疑問が湧いてくる私だった。
「え、でも……魂って体はないわけで……私たちはヨノアの社員とかのスカウトを受けて体を与えられているけれど……」
スズさんが柔らかく微笑んでディスプレイを閉じた。
「そうですね、不思議に思うところでしょう。実はね、魂の中ではよくある話で。未練が残ってしまっている魂さんたちが、天国に来た場合、要請書さえ出せば、天国の中では体を持つことができるのです。もちろん仮の物ですが。」
「え、えぇ……そんなシステムあるんだ…………」
「ただし、下の世界における『日が出ている時間』の間のみです。」
「え、ちょっと待ってスズさん。俺たちはじゃあ何なんだ?体あるけど」
スズさんは目を逸らす。口をつぐんでいる。
「……それは私にも分からないの。おそらく知る人は冥府課の者と神様のみでしょう。企業秘密なのだと思います……。」
ヨノアにもやはり闇がありそうに感じる。あんまり介入したくないなぁ。
「少し話が逸れましたね。とりあえず例の個展に行けば、彼に再会できると思いますよ!彼がどのようなヒントを持っているかは定かではありませんが……何か得られることを祈っております。」
ディスプレイを閉じながらスズさんは優しい声で言ってくれた。トアは何やらずっと咀嚼していたようだったが……。
「……あら、リンゴを全部お食べになったようね。お気に召しましたか?」
「オキニメス……?」
「気に入ったか、って聞いているのさ。どう?トア」
「キニイッタ!アリガトウ!」
「いいえ。良いのですよ。……ところでツムギ。この子のことは……」
「え?え、えと……その……」
スズさんはゆっくり立ち上がってツムギに近づいた。顔を使づける。
「……どうなのですか?こっそり教えてくださいよ、駄目ですか?」
私はニヤニヤしながら見ていたが、トアの様子がおかしいことに気づいた。なんか頬の体積が増えているような……
「ホホ プックリ……アツイ!」
「……ふくれっ面だな~。……あー分かった。トア、それは『嫉妬』だよ」
「シット?」
「トアが心で、私のツムギなのに~って、可愛く怒っているのさ。分かったかい?」
「プクプクッ!」
「……多分『ぷんぷん』の方が合ってる気が……」
フグのような頬をしたトアに気づいたスズは、ぱっとツムギから離れた。
「あはは。ごめんなさいねトアさん。ツムギのこと、お願いしますね」
「え!?ちょっとスズさん!?」
「はは~!公認じゃん」
「あーーーもう!!」
重い雰囲気はとっくになくなっていた。嫉妬を覚えたトアは、少しだけど人間らしい女の子に見えた。人間らしい男の子に恋する乙女みたいだった。
えっと…ご覧いただきありがとうございます。今日は何故か俺,カイトが話します。俺この話に出てきてないのに。
なぁなぁ,設計図が書けるようになるような大福とか知らないか?俺かれこれ10種類以上は試したけど,不調が不調なんだよね,特に「胃」が(当たり前だ)。あえて辛いものとかを試したほうが,辛さによってアイデアとか引き出せたりするのかな…(原因は食べたものだと思い込んでいるカイト)
まぁ,よかったらみんなの好きな食べ物でも教えてくれよ。食べたらなんか起こるかも。じゃ俺はこの辺で。腹鳴りそうになってきた。じゃあな~。
カイト




