43 甘党な大男
「……」
「……?これ、食いたいのか?」
「あ、それは違う」
ビックリした。一瞬で現実に戻された感じ。目が合ったと思ったら、これ食いたいかって!持ってるよ私もそのどら焼き!突拍子もなさすぎる。絶対この人じゃんさっきのおばちゃんが言ってた人は。全然驚かなかった、っていうかすぐには気づかなかった。
「……?そうか」
「あ、あの!隣いいですか!?私もそのどら焼きもらったんですっ」
「……?おぉ。どうぞ。どら焼きをもらえたのか。俺ももらった。ウレシイ」
「わ、私も!いっぱい大福買うともらえるんだってね」
大男さんは目をパチっとさせている。
「へぇ、そうだったのか。いっぱい買うとついてくるんだこれ。」
知らなかったんかい。まさかの自覚なかったタイプらしい。なんなんだこのギャップがとんでもない男の人。私はもらったどら焼きを開けて縁台に座り食べ始めた。チラッとたまに横を見ると、どう考えても一口がでかい男の顔がある。私これ、面白すぎてどら焼き喉に詰まらすんじゃないかな……。
「……君もここによく来るのか?」
そりゃあね!!!だってどら焼きもらってんだよおまけで!!
「うん!!いっぱい買いに来るんだこのお店に」
「……俺も買いに来る。今日はそんなに買わなかった。イチゴ大福20個だけ」
買いすぎだろ。私でも流石にそんなに買わない。やけに縁台の下に置いてある鞄がでかいなと思ったら全部イチゴ大福なのか。こんなに欲に忠実な人初めて見た。……いや、初めてではないかも。
「私もイチゴ大福買った!イチゴ大福好きなんだよね~」
「俺、イチゴが好き」
「イチゴ美味しいよね~」
「家で育てたい、家庭菜園」
「そ、そんなに!?」
なんだろうこの会話。嚙み合っているのかいないのか分からない。声色変えずに家庭菜園と言われても。男の人は私と同年代?に見える。黒髪だけど,所々灰色のメッシュが隠れている。この髪型なんて言うんだろ,マッシュのパーマあり?下の世界風に言うなら。そして白い作業服を腰にくるくると結び付けていて、黒の長袖のシャツを着ている。下にはポケットが多くついているズボン。作業着みたいだ。何か作っている人かな。そういえば自己紹介もしていない、しなければ。
「え、えーっと!私、アリスって言うの。あなた名前何て言うの?」
「…………あ、俺?」
ここに君以外居ないよ一応言っておくけど。
「俺は『カイト』。カイトだ。」
わざわざ2回も言ってくれちゃった。何なのホントにこの人!びっくりするぐらいポーカーフェイスなのに謎にノリがよかったりマイペースだったり。見た目ってほんとにただの見た目なんだろうな。
「カイトさんね!いい名前~。」
「アリスも、よき」
結構ぶっきらぼうな返事にも聞こえる声色だし、言葉もたくさんは語らない感じがするが、どこか安心させられる。突っぱねてはいないような感覚だ。
「ねぇねぇっ、普段は何をなさっているの?カイトさん」
「……カイトって呼んでくれ。…………俺、敬語はあんま自信ないから……」
不思議な理由だな……敬語自信ないからタメ語で話したいってか!可愛い!てかさっきから1回も敬語使っていなかったのはそういうことか。
「わかったカイト!で!普段何をしているの?その恰好からすると、何か作っている方かしら?」
カイトはのんびりどら焼きを咀嚼してから話し始めた。口に餡子ついてる……w
「作ってはいない。書いている。俺、『ヨノア』の船頭課の社員。船の設計図だったり修正箇所を書いたりしている。って言うといつもびっくりされる。」
「うん、私今ちょっとびっくりした。」
私はどら焼きを食べる手がすっかり止まってしまっていた。まさかの同じ会社じゃんか。カイトはうーと何やら唸っている。
「俺、この見た目で設計図書いてるからか、びっくりされることが多い。……俺、そんなデカイ?体。結構縮こまった生き方してるつもりなんだけど……」
……縮こまった生き方ってなんのことだろう。そして生き方が縮こまっていても体の大きさは変わるものでもないような……いろいろ面白いぞこの人。でも私がびっくりした理由は見た目と仕事のギャップじゃない。
「すごいね!カイトはヨノアの船頭課だったんだ!私もヨノアで働いているんだよ!引導課。植物を引導する死神をしているの!」
私は自分の名刺をカーディガンのポケットから取り出して、カイトに差出した。カイトはどうやら驚いているようだ。しかしリアクションは乏しく、瞬きのスピードが少し早くなったぐらいだった。それに気づく私もすごいけど。
「……おお、同じ会社か。引導課ってことは、死神か?」
「う、うん。死神だよ(今言わなかったっけ……)」
「お、名刺に書いてあったわ。てか俺も名刺出さなきゃな。……あーイチゴ大福の圧で名刺にしわが……今度渡すわ」
「う、うん!」
さっきカイトの属している課とか仕事とか全部分かったけどね……。久々にこんなにツッコミを心の中でしている気がする。2人は暢気にどら焼きを咀嚼した。
「……ね、ねぇ」
「……ん?なんだ」
何の変哲もない顔でこっちを向くカイト。餡子が口に付きっぱなしだ。
「…………餡子……ついてる……」
「……え。どこだ。」
カイトは何故か鞄を確認し始めた。鞄に入っているイチゴ大福の餡子が鞄についていると思ったのだろう。
「ち、ちがーうっ!あなたの口についてるのよ!もーしょうがないわね、動かないでね!」
私は手にポップティアーズを軽く表出させた。ポップティアーズってなんだかんだ使い勝手が良くて、何かの感情によって生じたものを治癒したり、沈静化できる。この場合、カイトがどら焼きをとにかく食べたいという勢いで食べたために、餡子が口についた。その勢いとは、「食欲」だ。多分できると思う。
「わ、なんだこれ……なんかポコポコしてる」
カイトがマジマジと私の手を眺めていた。
「はい、顔こっち……動いちゃだめだよ」
ポップティアーズが餡子にくっついてポップに弾けた。ちょっと餡子の香りだ。
「……この水は餡子の匂いがするのか?すごいな!どんだけ餡子好きなんだアリス」
「ふ、普段は匂いなんかしないわよ!あなたの口についてた餡子を取ったから匂いがしたんじゃないかな」
「なるほどなるほど………………え、俺の口に餡子ついてたの?」
「え?気づいてなかったの?」
「うん」
私はめっちゃ笑った。カイトもつられて笑った。可愛い。 ……いろいろ、キリがない。けど、すっごい楽しい人に出会った。縁台でできた縁であった。
どうもこんにちは!!アリスです!!今日は私が担当するよ!それにそれに!今回のお話は私が!メインになってたもんねっ♪
ご覧いただきありがとうございます!新しい子に出会っちゃったわ!カイト!カイト可愛いの~がたいもよくて大きいのにあんなマイペースでよくわかんない言動いっぱいして!これはカイトのギャップにやられる人絶対いるでしょ!わかるわ~。私も!
ミラーメトロはこの先どうなっていくのか,私も正直あまりわかんないけど!ポップに楽しく盛り上げていくよ!また読みに来てね~!




