32 スシ
……マッテ…『スシ』カモ…
その日、私とトアは時間いっぱいまで引導をしてしまった。アリスに会いに行くつもりだったが、魂や亡霊があまりに多かったのだった。さすがにこの時間じゃアリスももう仕事を終えて家に帰っているであろうと思いつつ、二人はヨノアへと帰った。
オフィスには案の定、誰もいなかった。アリスに会いに行くのはお預けかと思った矢先、ガサっと音が鳴ったのが聞こえた。私はあんまり気にしなかったが、トアはその音をしっかりとキャッチしていた。何の音だろう。トアは私の肩から降りて、どこかへてちてちと歩いていく。サイズが小さいままなので、ホントにてちてち歩いているみたいに見える。
「ココ ココカラ オト シタ! ナンカ オチテル」
トアは音がした方へと向かったらしい。そこはアリスの机だ。そして落ちているのはアリスのかばんだ。ここに置いてあるということは……。
「なるほど、ココはアリスの机だよトア。そして落ちてるのはアリスのかばんだ。アリスはまだ引導から帰ってきていないかも。少し待ってみるか、アリスに会えるかもしれないしね」
「ウン」
トアは再び私の肩の上に戻るかと思ったら、白シャツの胸ポケットの中に入ってきた。少し疲れたのだろう。ポッケの中でぬくぬくしている。私は自分の机に座り、しばらくぼーっとした。久々にぼーっとした気がする。おかげでアリスが戻ってきた音にすら気づかないほどだった。
アリスの方から私たちがいることに気づいてくれたようで、話しかけに来た。アリスもだいぶ疲れているようだった。
「あ、ミラっち。それにトアちゃんっ!仕事終わりでしょう?」
「ああ。おかげさまで。アリスも相当忙しそうだね。植物が枯れる季節だからかい?」
アリスは顔に疲れの色が滲んでいる。
「うん~。今の時期はほんとに。まだ今日はマシなほうよ、来月とか一番大変でしょうねぇ……。」
声にあんまり覇気がない。こりゃまた今度にしたほうがいいか。そう思いかけた途端、ポケットからトアが飛び出してきた。
「アリスオネエチャン! ホホ シワシワ! ガンバッタネ! オツカレサマデス!」
「え、やば元気出た」
やっぱりアリスは分かりやすかった。これなら話しても大丈夫そうだった。
「なぁアリス、実はちょっと話したいことがあって待ってたんだよ。この後時間良い?」
アリスはきょとんと不思議そうな顔をしている。昨日洗いざらいミラーメトロのことだったりを語った矢先だったから、それは確かに不思議に思うだろう。
「いいけど……?何かまだ隠していることでもあるの?」
「それはまぁ、良いとして。トアのことでさ。」
トアのことと言った瞬間アリスは一気に顔を変えた。
「よっし分かった!私の家に招待してあげるよトアちゃんっ!!ねっ!」
もうこれ以上説明する必要はゼロだ。流れで私たちは気づけばアリスの家に到着していたのだった。覚えていることと言えば、アリスの家に向かう道中、綺麗な満月が出ていたことぐらいだ。アリスの家の中は意外にも和風で、居間の前にあった一室には本棚が置いてあった。居間に案内され、可愛い丸いじゅうたんが敷いてあり、小さめだが丈夫な机が置いてある。しかし和風な雰囲気を引き立たせる配色で、落ち着いてくつろげそうだ。トアは絨毯の感覚が気に入っている。何度もゴロゴローっと転がっていた。アリスが何か持ってきた。
「じゃんっ!これすごくない?失敗せずに作れたんだよねぇー!」
アリスが机の上に置いたのは、手作りの寿司だった。色とりどりのネタが並んでいる。料理もできるらしいアリスだが、たまに料理のサイズ感や量がえげつないことがある。今回そういう心配はなさそうだった。そしてアリスはトアの方を見た途端、爆笑していた。
「あははははっ!!!ちょっとトアちゃんっ!子供のお寿司あるあるじゃない~上のネタだけ食べちゃうやつっ!もう~可愛いわねっ!」
「ほんとだ、しかもトアが食ったのマグロじゃんか……」
お盆の上には1つだけ、しゃりしかないお寿司が置かれていた。トアは暢気にマグロを頬張っていた。マグロは飲み物、と言ったスピードで食べているようにも見えるトアに、若干私は引いていたことは
内緒である。
「オイチイ コレ!」
「おいちいって……どこでそんなん覚えたんだ……」
「マグロを咀嚼しているから、舌でも嚙んだんじゃないかしら?可愛いわねぇ~もうっ」
するとアリスはさっと立ち上がり、台所へ向かった。私はアリスが出してくれたサバのネタを食べていた。アリスはもう1つお盆を持ってきて、トアの前に置いた。お盆には海苔と、いろんな刺身がちょこっとずつ置かれている。
「見ててね~、さっきトアちゃんが食べたマグロのシャリを……この海苔にこうやって広げて、トアちゃん、このいろんな色のもの置いてあるでしょう?お刺身って言うんだけど。どれがいいかしら?」
トアは迷わず赤色を指さした。こいつマグロ気に入ってやがる…。私はトアを横目で眺めていた。
「できたっ!トアちゃん、この黒いものを……こうやって、やってみて」
トアの前で見本を示すアリス。トアも真似して海苔をくるくると巻いていた。ちょっと酢飯がはみ出ている。私は少しだけ笑いを堪えていた。
「それをそのまま食べてごらんっ」
トアは見た目に寄らずデカイ口で頬張った。もしかして、トアは
意外と大食いなのでは?
「オイチイー!カンドウッ!」
お寿司が気に入ってしまったらしい。こりゃ明日の朝もトアを風呂にいれてやらねば。私はホタテのネタを頬張りながらそう思っていた。
ご覧いただきありがとうございます!32話です!まさかの寿司で一話分作れてしま内は。まぁ今回は日常回なので,のほほんと読んでいただければ嬉しいです!皆さんは何のお寿司のネタがお好きですか?また食べたくなってきましたね~。それではまた次回!こうご期待です!




