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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第三部 第92話 崩壊する秩序 混迷に沈むテスラ城塞都市

テスラ城塞都市。

ダンジョンを管理する魔導具が置かれた中心神殿。

その建物を突き破り、黒い巨人が這い出ていた。

カイルは市民を救おうと動いたが、薙ぎ払われた巨人の腕によって黒い巨人に吸収された。

まるで泥に沈むように。

跡形もなく。

イリーナが叫ぶ。

「カイル!!」

答えはない。

巨人の体が、わずかに膨らむ。

黒い液体が蠢き、肉が形成されていく。

レオンの顔が歪む。

「……くそ」

その背後。

都市のあちらこちらから悲鳴が上がった。

恐怖におびえ、人々が逃げまどう。

子供を抱えた母親。

荷車を押す老人。

我先にと逃げ出す群衆。

まるで――地獄の蓋が開いたようだった。

テスラ城塞都市。

人口百万を抱える巨大な都市。

レオンが振り返る。

誘導する兵士や応戦する冒険者達を横目に。

「……守るぞ」

イリーナが笑った。

「言われなくてもな」

セドリックが魔力を集める。

「総力戦だ」

その瞬間。

街の各所から魔法が放たれた。

炎。

氷。

雷。

塔の上から矢が降る。

兵士たちが盾を構える。

冒険者たちが叫ぶ。

「押し返せ!」

「市民を逃がせ!」

都市全体が戦場だった。

だが――

巨人は歩いた。

ズン――

その一歩で建物が崩れる。

絶叫、阿鼻叫喚。

振り払った腕の衝撃波で家が砕ける。

セドリックが叫ぶ。

「まとめて焼く!」

巨大な魔法陣。

炎が渦を巻く。

戦略級魔法。

そして発動。

轟音。

巨人を炎が包んだ。

歓声に皆が湧く。

だが――

炎が消えたとき。

巨人は立っていた。

無傷で。

セドリックの顔が青ざめる。

「……嘘だろ」

巨人の体が揺れた。

黒い腕が動く。

炎が――吸われた。

「魔力を食ってやがる……!」

セドリックは経験した事のない事態に体が固まる。

次の瞬間。

黒い腕が振り下ろされた。

轟音。

地面が砕ける。

セドリックの姿が消えた。

イリーナが突っ込む。

「セドリック!!」

槍が閃く。

巨人の足を貫いた。

黒い液体が弾ける。

イリーナが笑う。

「効くじゃねえか!」

だが。

巨人の足が崩れる。

液体になる。

そして――再形成された。

イリーナの目が見開く。

「……は?」

なんだよ、これ。

目の前の現実に思考が遅れる。

その迷いは、致命的だった。

黒い腕が振り下ろされた。

広範囲に及ぶ一撃。

防御ごと、イリーナの体が地面に叩きつけられる。

動かない。

レオンの歯が軋む。

だが戦いの手を止められない。

冒険者に指示を飛ばす。

そうして、激しい戦いで時間が過ぎていく。

昼。

夕方。

夜。

戦闘は続く。

だんだんと冒険者が倒れていく。

兵士が散る。

魔法が尽きる。

都市が崩れていく。

だが――

市民は脱出できたのか、わからない。

白狼の牙が壁になったからだ。

夜。

沈黙に包まれた瓦礫の都市。

残っていたのは――

レオン。

そしてリリアだけだった。

レオンは剣を地面に突き刺す。

体が震えている。

全身が血まみれで意識が飛ぶ寸前だった。

リリアが詠唱する。

「回復を……」

淡い光。

だが。

魔力が足りない。

レオンの体から血が止まらない。

リリアの声が震える。

「まだ……まだ……!」

その時だった。

巨人が止まった。

動きを止めた。

ゆっくりと顔が動く。

街の外。

遠く。

海の方向を見る。

そして――歩き出した。

ズン――

歩くたびに振動が伝わる。

城塞壁よりも、さらに巨大な姿。

都市を歩いて出ていく。

黒い巨体は夜の闇へ消えた。

静寂。

リリアが崩れる。

レオンも意識を失った。

どれほど時間が過ぎたのか。

やがて。

空から影が降りた。

エミリオだった。

彼は瓦礫の街を見てまわる。

そしてレオンたちを見つけた。

近づく。

「大丈夫か」

その瞬間。

レオンの目が開いた。

剣を握る。

だが。

エミリオを見て力が抜けた。

「……救援か」

エミリオは頷く。

レオンが呟く。

「白狼の牙は……いやテスラは全滅だ」

少し沈黙。

そしてレオンは言った。

「最後に……見た」

「……あいつの顔」

エミリオが聞く。

「顔?」

レオンがかすかに笑う。

「……女だった」

「黒い化け物なのに」

「顔だけ……」

そこまで言って。

レオンの体から力が抜けた。

静かに。

息を引き取る。

リリアだけが残された。

エミリオは気を失ったリリアを抱きかかえる。

破壊された都市を一度だけ振り返る。

そして――帰投した。

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