第二部 第83話 魔導獣軍団
レグノル王城前。
戦場は、静まり嵐の前の静けさだった。
王城の前に立つレグノル軍。
その対面に立つ七聖。
ミハイマール。
静かな声が再び響く。
「最後に言います」
「退きなさい、見逃すから」
「これは秩序を守るための行為です」
セリナは一歩前に出た。
剣を構える。
「……それでも」
「進みます」
短い答えだった。
だが十分だった。
◆
その瞬間だった。
城壁の上で、誰かが笑った。
「いいねぇ、王女様好きになりそう」
軽い声。
その男が城壁から飛び降りる。
黒い外套。
鋭い目。
エミリオだった。
「話が早い方が好きなんだ」
肩をすくめる。
「戦争だろ?」
エミリオは手を軽く振った。
「なら――」
◆
地面が震えた。
ドン。
ドン。
ドン。
地中から現れる異形な獣。
黒い影。
一体。
二体。
十体。
狼だった。
だが普通の狼ではない。
鋼鉄の装甲。
赤く光る目。
牙から魔力が漏れている。
魔導獣。
それが――
百。
いや。
さらに現れる。
バルドが笑った。
「ははっ」
「いいじゃねぇか」
カイが低く言う。
「来るぞ」
エミリオが指を鳴らす。
「行け」
魔導獣が一斉に走った。
地面が揺れる。
牙。
爪。
赤い目。
獣の軍団だった。
◆
レグノル軍の列が揺れる。
民兵が一歩下がる。
その時だった。
ヴォルコフが前へ出た。
白髪の騎士団長。
剣を抜く。
「騎士団」
短く言う。
「前へ」
カイが振り向く。
「ヴォルコフ」
ヴォルコフは振り返らない。
「行け」
「王城は目の前だ」
バルドが笑う。
「殿かよ」
だが表情は笑っていなかった。
ヴォルコフは静かに叫ぶ。
「騎士道とは」
剣を構える。
「最後に残る希望を守る者だ」
魔導獣の群れが迫る。
ヴォルコフが一歩踏み出した。
◆
その後ろでカイの隊が叫びながら走る。
「突撃! 魔導獣にかまわずいけ!」
バルド隊が走る。
セリナ隊が走る。
王城へ。
魔導獣と第3騎士団が衝突した。
金属と牙がぶつかる。
剣が閃く。
血が飛ぶ。
城壁の上。
エミリオが楽しそうに見ていた。
「いいね」
「ちゃんと戦争してる」
だがその視線は――
セリナ達を追っていた。
「さて」
小さく呟く。
「どこまで来れるかな」
レグノル王城。
戦いは、さらに激しくなる。




