第二部 第84話 城門突破
レグノル王城。
重厚な城門が開いたまま、静かにレグノル軍を迎えていた。
まるで――誘うように。
「……妙だな」
カイが低く呟いた。
城内に兵の姿がほとんどない。
防衛戦ならあり得ない状況だった。
バルドが肩を鳴らす。
「罠でも関係ねぇ」
斧を担ぎ直す。
「王城は目の前だ」
セリナは黙って城門を見つめていた。
幼い頃、何度も通った門。
レグノル城。
祖国。
そして――奪われた場所。
「進みます」
セリナは静かに言った。
カイが一瞬だけ考える。
だが答えは同じだった。
「……突入する」
「全軍!」
「王城へ!」
レグノル軍が一斉に動いた。
城門を突破する。
石畳を駆け抜ける。
だが――
城内は異様なほど静かだった。
兵の姿がない。
◆
「おい」
バルドが周囲を見回す。
「静かすぎるぞ」
その時だった。
ドン。
地面が揺れる。
石畳が砕けた。
巨大な腕が地中から現れる。
石の巨人。
ゴーレム。
さらに――
城壁の上。
重い足音。
その影から魔導獣も現れた。
そして背後に。
ミハイマールが現れる。
その背後には聖導軍が並んでいた。
「やはり」
静かな声だった。
「来ましたね」
ミハイマールは納得したように、軽く手を振る。
ゴーレムが一斉に動く。
巨大な拳が振り下ろされる。
石が砕ける。
兵が吹き飛ばされる。
「散開!」
カイが叫ぶ。
「重装は前へ!」
「弓兵、屋根を狙え!」
その瞬間。
城の高所から声が落ちた。
「ふふふ」
黒い扇が開く。
黒い扇で口元を隠した女。
ジュリアだった。
「盤面通り」
静かに戦場を見下ろす。
「あなた達は」
扇で地図を描くように指す。
「ここに来る」
そして微笑んだ。
「だから待っていました」
ミハイマールが前へ出る。
光の魔法陣が展開される。
「ここから先は」
静かに言う。
「通しません」
カイが舌打ちする。
「……削りに来ている」
◆
だが、セリナは止まらない。
王城の奥。
玉座の間。
そこへ続く階段が見えていた。
「進みます」
セリナが言う。
バルドが笑う。
「それでこそだ」
斧を振り上げる。
「カイ!」
カイが頷いた。
「バルド隊!」
「防衛!」
「俺たちで押さえる!」
バルドが叫ぶ。
「野郎ども!」
「ゴーレムぶっ壊すぞ!」
兵が咆哮する。
その間に。
セリナ隊が奥へ進む。
ミハイマールの目が細くなる。
「逃がすと思いますか?」
魔法陣が輝いた。
しかしセリナ達はまだ気づかない。
巧妙に張り巡らされた、七聖による包囲に。
ゴーレム軍団が一斉に動き出す。
玉座へ追い込むように。
道を作るように。
◆
レグノル王城。
戦場は――城内へと移った。
その奥。
玉座の間。
そこには一人の男が座っていた。
炎を思わせる赤い髪。
アルディアス。
七聖筆頭は静かに待っていた。




