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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第二部 第73話 偵察

 アルヴァ砦は、まだ遠い。


 グラナスの軍議テントでは、アルヴァ攻略の作戦立案が進んでいた。


「グラナスから北東へ二日の距離」


 カイが地図の一点を指す。


 視線が集まった先――アルヴァ砦。


 山に挟まれた狭い谷に築かれた砦だ。


 正面から攻めれば、兵の損害は大きい。


 だから――

 まずは目で確認する必要があった。


 こうして、カイとエリーナが偵察に向かうことになった。


 小高い丘の岩陰。 


「見えるか?」


 カイが低く問う。


 隣でエリーナが杖を構える。


 風が、静かに渦を巻いていた。


「……少しだけ」


 エリーナは目を閉じる。


 魔力が空へと広がる。


 風に乗り、視界が遠くへ滑っていく。


 まるで鳥の視線のように。


 アルヴァ砦。 


 石造りの城壁。


 高い塔。


 門は閉ざされている。


 だが――


「砦の守備兵が……少ない気がします」


 エリーナが呟く。


 門の上の見張りは三人。


 城壁の巡回も、まばらだった。


 要衝にしては、静かすぎる。


「罠だな」


 カイは迷いなく言った。


 聖導軍が砦を捨てるはずがない。


「だが……」


 カイは砦を見つめる。


「捨てたように見せる作戦かもしれん」


 その時。


 エリーナの視界が、旗を捉えた。


 砦の中央。


 制御塔の近く。


 黒の旗。


「……七聖旗?」


 エリーナの眉が寄る。


「まさか……ジュリア?」


 その呟きを、カイは聞き逃さなかった。


 しばらく砦を見つめる。


 そして――


「グラナスに戻るぞ」


 短く言い、踵を返した。


 アルヴァ砦。


 中央制御塔の魔導炉の前。


 ジュリア・マクミルランは、わずかに笑った。


「見られていたわね」


 右手を軽く上げる。


 魔導炉の術式に、微細な干渉を施す。


 セリナ軍の進軍予測は三日。


 その頃には――


 ちょうど良い頃合いになる。


「さて」


 ジュリアは砦を見上げる。


「どこまで崩れるかしら」


 守備隊長が駆け寄る。


「ジュリア様、指示を」


「魔導炉の監視を強化しておきなさい」

 ジュリアは穏やかに言った。


「そして――」


「レグノル軍が来たら、予定通りに」


 守備隊長は深く一礼する。


 谷を渡る風が、砦の旗を揺らす。


 静かな砦。


 だがその地下では、


 魔導炉の術式が、ゆっくりと書き換えられていた。


 誰にも気づかれないまま。


 アルヴァ砦。


 次の戦場の幕が、静かに上がろうとしていた。

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