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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第二部 第72話 七聖 黒の観測者

テンレア同盟、情報局執務室。


執務室は、静かだった。

窓の外では、風が旗を揺らしている。


机の上に、部下から一通の報告書が置かれた。


ジュリア・マクミルランは、それを指先で軽く弾く。


「……グラナス陥落」


短い一文。

その隣には、すでに届いている別の報告。


リーデル陥落。



ジュリアは椅子に深く腰を預ける。


驚きはない。


戦争とは、そういうものだ。


砦が落ちることもある。

戦線が後退することもある。


問題があるとするなれば――

その形だった。



机の上に地図を広げる。


細い指が、二つの地点をなぞる。


リーデル。

そして、グラナス。


どちらも短期間で落ちている。


「……早いわね」


敗北そのものは問題ではない。

だが。


崩れ方が整いすぎている。



ジュリアは窓の外を見る。


空は穏やかだった。


嵐の前のように、静かだ。


「戦争の匂いじゃない」


ぽつりと呟く。


戦とはもっと、乱れるものだ。

もっと血と偶然に満ちている。


だが、今回は違う。



視線が、レグノルの地図へ戻る。


指が、進軍方向をゆっくりとなぞる。


そして止まる。


アルヴァ。


「次はここ」


黒の魔女は、小さく笑った。


「さて――」


声は柔らかい。


「どんな形で崩れるのかしら」



そのとき、扉が叩かれる。


「報告です」


「どうぞ」


副官が一礼し、書簡を差し出す。

ジュリアはそれを受け取る。


目を通す。



ほんの一瞬だけ、視線が止まった。


報告書の端。

小さな補足記録。


リーデル。

グラナス。


どちらにも共通する、微細な観測値。


ジュリアは紙を机に置く。


表情は変わらない。


だが。


「……面白い」


その声は、ほんの少しだけ低かった。



窓の外では、風が旗を揺らしている。


戦は続く。

アルヴァが、次の舞台になる。


だが。


ジュリアの思考は、戦場ではなく――

もっと深い場所へ向いていた。

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