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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第二部 第74話 アルヴァ攻略戦 前編

 アルヴァ砦は、山間の谷の奥にあった。


 左右を山に挟まれた細い道。


 その先に石の城壁がそびえている。


 山間から発生する霧が、谷を流れていた。


 レグノル軍は静かに前進しながら布陣する。


 カイは丘の上から砦を見ていた。


「……嫌な地形だ」


 低く呟く。


 隣にいたエリーナが首を傾げた。


「どういう意味です?」


 カイは谷を指す。


「両側が谷だ」


「弓兵が上にいれば、ここは死地になる」


 兵たちの間に、わずかな緊張が走った。


 バルドが笑う。


「つまり、いつも通りってことだな」


 カイは肩をすくめる。


「正面は囮だ」


 地面に剣の先で簡単な図を描く。


「バルド隊は城門」


「他は左右の山間に展開して進軍する」 


 短く命令が飛ぶ。


 兵が動き出した。


 セリナは谷の先の砦を見つめていた。 


 城壁の上。


 旗が揺れている。


 カイが歩み寄る。


「王女殿下」


「この砦は、七聖が絡んだ罠の可能性が高い」


 少し間を置いて言う。


「前線に出るべきではありません」


 セリナは答えなかった。


 ただ砦を見ている。


 やがて静かに言った。


「構いません」


 カイが眉をひそめる。


「この戦いは――」


 セリナは剣を抜いた。


 光が刃に集まる。


「私が始めた」


 風が王旗を揺らす。


「ならば」


 セリナは前に出る。


「最初に門を叩くのも私です」


 バルドが笑った。


「はは、やっぱりだ」


「姫様は変わらねぇ」


 カイはため息をつく。


「……止めても無駄か」


 エリーナが小さく頷いた。


「王女様らしいです」 


 だが三人の顔は真剣そのものだった。


 セリナは剣を頭上に掲げる。


「光よ」


 刃から光が広がった。


 柔らかな光の輪が兵たちを包む。  


 その瞬間。


 城壁から矢が降った。


 矢の雨。


 だが。


 光の輪に触れた矢は軌道を逸らされていく。


 エリーナの風魔法がそれを押し流す。


 矢は地面へ。


 石壁へ。


 兵が気づく。


「守られている……!」


 セリナは振り返らない。


「前へ」


 静かな号令。


「光は、退く者のためにあるのではありません」


 一瞬の静寂。 


 そして――


「レグノル万歳!!」


「セリナ様と共にいけ!!」


 兵の叫びが谷を揺らす。


 軍靴が轟いた。


 ここで止まれば、死ぬ。


 突撃が始まる。


 城門前。


 矢の雨の中をバルド隊が進む。


「止まるな!」


 バルドが斧を振り上げた。


 魔力が刃に集束する。


「道を開ける!!」


 斧が城門に叩き込まれた。


 轟音。


 城門が大きく揺れる。


 兵が梯子をかける。


 丸太がぶつかる。


 城門の上。


 聖導軍の弓兵が狙う。


 その時。


 バルドが城門の前に立った。


「俺の後ろに集まれ!」


 矢が降る。 


 バルドの斧が光る。


 斧が振るわれる。


 矢が弾き飛ばされる。


 鎧に突き刺さる矢もある。


 だがバルドは動かない。


「こんなもんか!」


 兵が叫ぶ。


「バルド隊長が盾になってる!」


 バルドが笑う。


「さっさと門をぶち壊せ!」


 空ではエリーナが杖を掲げていた。


「風よ!」


 突風が巻き起こる。


 飛んできた火球が逸れる。


 城壁の兵が体勢を崩す。


 レグノル兵が一斉に登る。


「いける!」


 兵の歓声が上がる。


 城門が軋んだ。


 バルドがもう一度斧を振るう。


 木材が裂ける。


 城門が崩れる。


「開いた!!」


 兵が城内へ流れ込む。


 アルヴァ砦。


 城内。


 聖導軍は後退していた。


 レグノル軍優勢。


 兵士たちの士気が爆発する。


 バルドが笑った。


「思ったより簡単だな!」


 その時。


 武人の直感が、カイを止めた。


 砦を見回す。


 城壁。


 塔。


 兵の配置。


「……おかしい」


 胸がざわつく。


 エリーナが振り向く。


「どうしました?」


 カイは低く言った。


「防御が薄すぎる」


 その瞬間。


 低い音が地下から響いた。


 ゴォォ……


 地面が、わずかに震える。


 アルヴァ砦。


 中央制御塔。


 魔導炉の光が変わる。


 青から――


 紫へ。


 遠く離れた丘。


 ジュリア・マクミルランは砦を見ていた。


「さて」


 黒の魔女は微笑む。


「どこまで崩れるかしら」


 谷を渡る風が、旗を揺らす。


 アルヴァ砦。


 戦いは――


 まだ終わっていなかった。

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