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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第二部 第75話 アルヴァ攻略戦 後編

 ゴォォォ……

 低い唸りが、地面の奥から響く。

 カイの目が鋭くなる。

「……来るぞ」

 次の瞬間。

 アルヴァ砦の地面が、大きく揺れた。

「魔導炉が暴走しています!」

 塔の方角から叫び声が上がる。

 紫色の光が空へ噴き上がった。

 さきほどまで優勢だったレグノル軍の兵たちが、足を止める。

 石畳が、ひび割れる。

 その割れ目の奥から――

 黒いものが、にじみ出ていた。

「……なんだ、あれは」

 兵の一人が呟いた。

 それは液体のようでもあり、影のようでもある。

 黒い染み。

 だが。

 それはゆっくりと動いていた。

 近くに倒れていた聖導軍の兵の遺体。

 黒い染みがそれに触れる。

 次の瞬間。

 遺体が――沈んだ。

「な……」

 兵の声が震える。

「消えた……?」

 黒い染みは、広がっていく。

 戦場の死体へ。

 折れた槍へ。

 壊れた盾へ。

 すべてを取り込みながら。

 ゆっくりと、広がっていく。

 カイの背筋に、冷たいものが走った。

 戦場で何度も死線をくぐった直感が告げる。

 これは。

「……退け」

 低く言う。

 そして叫んだ。

「全軍、撤退だ!!」

 その瞬間。

 魔導炉が閃光に包まれた。

 紫色の光が膨れ上がる。

 そして――

 爆発。

 轟音が谷を揺らした。

 中央制御塔が崩れる。

 石壁が崩壊する。

 火柱が空へ吹き上がった。

「姫様!!」

 バルドが叫ぶ。

 爆風が迫る。

 その前に、セリナが剣を掲げた。

「光よ!」

 光の結界が広がる。

 爆風が弾かれる。

 だが。

 衝撃は止められない。

 兵が吹き飛ぶ。

 瓦礫が落ちる。

 戦場は、一瞬で地獄に変わった。

「エリーナ!」

 カイがありったけの声で叫ぶ。

 エリーナはすぐに理解した。

「わかりました!」

 風が巻き上がる。

 セリナの腕を掴む。

 体が浮き上がる。

「姫様、失礼します!」

 エリーナが空へ飛び上がった。

 瓦礫の波が地面を走る。

 地上。

 バルドが兵を抱え上げる。

「立て!」

「まだ死ぬな!」

 肩に担ぎ、引きずり、叩き起こす。

 カイが叫ぶ。

「隊をまとめろ!」

「谷の外へ出る!」

 その時。

 兵の一人が振り返った。

「……なんだ」

 崩れた砦の中央。

 黒い染みが、集まっていた。

 それは、ゆっくりと形を変えていた。

 兵士の死体。

 鎧。

 瓦礫。

 すべてを取り込みながら。

 膨らんでいく。

「……やばい」

 カイが呟く。

 戦場の勘が告げていた。

 あれは。

 この世界のものではない。

 遠くの丘。

 ジュリア・マクミルランが砦を見ていた。

 爆発の炎。

 崩れる城壁。

 黒い染み。

 ジュリアの目が、わずかに細くなる。

「……これは」

 小さく呟く。

 その表情は――

 驚きと、興味が混ざっていた。

 谷の外。

 レグノル軍はようやく撤退した。

 兵の多くが息も絶え絶えに地面に座り込む。

 吐いた息を荒げる。

 アルヴァ砦を振り返る者は誰もいない。

 セリナは静かに立っていた。

 握りしめた剣が震えている。

 目の前には。

 多くの負傷兵。

 担架。

 動かない兵士。

 セリナは唇を噛む。

 そして頭を下げた。

「……すまない」

 声は小さかった。

「私の判断で」

「多くの命を危険に晒した」

 沈黙。

 その空気を破ったのは――

 バルドだった。

「何言ってんだ」

 バルドが笑う。

「姫様の光がなきゃ」

「俺たち今ごろ全滅だ」

 カイも言う。

「戦場です」

「責任は全員で負うものです」

 エリーナが頷く。

 目に涙を浮かべながら。

「……守れました」

「姫様の光があったから」

 兵たちが顔を上げる。

「そうだ」

「セリナ様のおかげだ」

「俺たちはまだ戦える!」

 セリナはゆっくりと顔を上げた。

 遠く。

 煙の上がるアルヴァ砦を見る。

 その地下では。

 黒い染みが、ゆっくりと動いていた。

 まるで。

 何かを探すように。

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