第二部 第71話 グラナス陥落
グラナス砦は、戦闘開始から三日で落ちた。
勝敗が決する時間は、短かった。
リーデルの敗報が届いた時点で、聖導軍の守備は揺らいでいた。
グラナス砦を守る兵の多くは、元レグノルの民や兵士である。
拠点としても要衝とは言えない。
セリナが姿を見せた瞬間、聖導軍の内部で分裂が起きた。
◆
セリナに内応し、聖導軍の一部の兵士が門を開く。
「門、開いたぞ!」
叫び声とともに、レグノル兵が流れ込む。
聖導軍の抵抗はあった。
だが、長くは続かなかった。
指揮官が倒れ、隊列が崩れる。
それで終わりだった。
◆
昼には、城壁にレグノルの旗が掲げられた。
バルドが腕を組む。
「拍子抜けだな」
兵の損害も少ない。
戦闘行為としては、理想的な結果だ。
だが。
◆
砦の地下。
技師が、魔導炉の前で首をかしげる。
「出力が……少し落ちています」
「どの程度だ」
「一%未満です」
誤差の範囲。
問題と呼べるほどではない。
だが、技師はもう一度計測盤を見る。
◆
城壁の上。
セリナは、遠くの山並みを見ていた。
風は穏やか。
空も静かだ。
勝利は続いている。
それでも。
胸の奥のざわめきは、消えない。
◆
その夜。
砦の地下で、魔導灯が一瞬だけ揺れた。
ほんの一瞬。
誰も気づかないほどの揺らぎ。
だが、計測盤には小さな波形が残る。
《基幹層干渉:微弱》
数値は、すぐに正常へ戻る。
◆
地表では、何も起きていない。
グラナスは落ちた。
レグノル軍は、アルヴァに狙いを定め進軍する。
だが――
地下では、何かがゆっくりと広がっていた。




