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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第二部 第69話 火蓋

夜明けは、静かだった。


霧が薄く砦を包み、リーデルの城壁はまだ眠りの色をしている。

合図はまだ出ていない。


だが、カイはすでに動いていた。



リーデル砦近くの森の中。


バルドの低い声が落ちる。


「本隊、リーデル砦正面に展開」


小さく、しかし確実に。

兵が息を揃え行動する。


四百。


対するリーデル守備隊は推定千。


だが、城壁上から見えるレグノル兵の数は明らかに少ない。

四百ほど。


「……釣られる」


カイは断言する。



朝霧が晴れ始める。


城門前に、セリナが姿を現す。

王旗が翻る。


白銀の髪が朝光を受けて揺れる。


城壁の上がざわめいた。


「王女だ……」


動揺が波紋のように広がる。


リーデル指揮官が歯噛みする。


「捕らえれば終わる……」


背後で若い兵が叫ぶ。


「アルディアス様への大功です!」


空気が傾く。

合理は、欲に押される。


「出るぞ!」


リーデル砦の城門が開く。



同時刻。

森の裏側。


「進入開始」


カイの激令のもと、部隊が動き出す。


守備の薄くなった砦側面へ。

静かに、速く。



リーデル砦正面。


聖導軍が功を逸り進軍してくる。


バルドが前に出る。


「止めるぞ!」


斧が振るわれる。

地が揺れる。


エリーナの風刃が兵列を分断する。

だが、敵の数は多い。


セリナは剣を抜く。


光輪がセリナの周囲に集まり、収束する。


「退くな!」


バルドの一喝に兵が踏みとどまる。


光の光輪が広がり、押し寄せる兵を押し戻す。


それは破壊ではない。

秩序の光。



砦内部。


カイの部隊が中央塔を制圧する。


「門を押さえろ!」


号令。


レグノル兵が門を制圧する。

聖導軍の背面が崩れる。


聖導軍指揮官は事態に気づく。


収拾をかけようとするが、遅い。


挟撃。


隊列が乱れる。

敗走が始まる。



そのとき。


セリナが最後の光輪を放とうとした瞬間。


足元に、黒い線が走った。


音はない。


石畳が、ゆっくりと裂ける。


周囲の兵の足が止まる。


聖導軍も、レグノル兵も。


同時に。



地の底から、冷たい魔素が滲む。


それは敵味方を選ばない。


セリナの光が、揺らぐ。


「……これは」


戦ではない。


遠く、砦の地下。


誰にも見えない封印層で、魔導灯が一瞬だけ暗くなった。



地上では混乱が広がる。


だが、カイは叫ぶ。


「崩れるな! 制圧を優先!」


判断が戻る。


秩序を取り戻した側が、戦を制した。


聖導軍は敗走を開始する。


統率を失い、各個に逃げる。


レグノル兵の勝利の声が上がる。


だが。


セリナは、裂けた石畳を見つめていた。


胸の奥のざわめきが、消えない。


これは――


勝利ではない。

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