表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/149

第二部 第59話 特使、ロスヴァルに至る

 ロスヴァルの空は、澄み切っていた。

 戦の翌日。

 城壁にはレグノルの旗が翻っている。

 だが、兵の間に浮かれた空気はない。

 王都方面より、飛空艇一隻が接近中。

「我々は、七聖ジュリア様の使者である」

 紋章を掲げ、拡声魔導器が低く響く。

「……来ました」

 城壁上でエリーナが呟く。

 魔力反応は抑制されている。

 攻撃意思はない。

 だが、圧はある。

「降下地点は南門前広場。護衛二十。武装は最低限」

 カイが即座に報告する。

「特使だ。手を出すな」

 バルドが小さく舌打ちする。

「殴れねぇ戦いは、苦手だがな」

 セリナは静かに歩き出した。

「王として、受けます」

 迷いはない。

 南門前広場。

 飛空艇が音もなく降り立つ。

 降りてきたのは一人の男。

 黒銀の外套。

 胸元に七聖の紋章。

 冷たい視線。

「テンレア同盟特使、アーヴェン」

 深く一礼。

「レグノル王女、セリナ=リュミエール・レグノル殿」

 形式は整っている。

 だが敬意は薄い。

 セリナも一礼で返す。

「お越しいただき、感謝します」

 背後にカイ。

 やや後方にバルド。

 上空ではエリーナが風を読む。

 兵は息を潜める。

◆ 会談

「結論から申し上げます」

 アーヴェンが一歩前へ出る。

「ロスヴァル奪取は秩序違反行為。

 王都方面への進軍は、これ以上認められません」

 ざわめきが広場を走る。

「ただし」

 一拍。

「現時点では、七聖直属部隊は動いておりません」

 意味は明白。

 今なら、引ける。

「撤退すれば、不問とします」

 静かな圧。

 セリナは視線を逸らさない。

「ロスヴァルは、我が国の領土です」

「現在はテンレア管理下」

「奪われたものを取り戻すことが、なぜ違反になるのですか」

 空気が凍る。

「秩序とは安定です」

「秩序とは、支配ではありません」

 即答。

「私の国を滅ぼし、民を散らした“安定”を、私は秩序とは呼びません」

 沈黙。

 兵たちの背筋が伸びる。

 アーヴェンの視線がわずかに揺れる。

「……眠る鍵は、この場にいないようですね」

 一瞬で空気が凍る。

 カイの手が剣にかかる。

 セリナは小さく首を振る。

「彼は関係ありません」

「本当に?」

 薄い笑み。

「七聖は、彼のみを見ています」

 事実だった。

 だからこそ今、動けている。

「だが」

 アーヴェンは一歩退く。

「動かぬ駒も、盤上では意味を持つ」

 警告。

「次に進めば、七聖が“直接”応じます」

 宣告。

 飛空艇へ戻る直前。

 アーヴェンは足を止める。

「……黒の魔女は、盤を見ています」

 名は出さない。

 だが存在は明白。

「次は会談では済まないでしょう」

 飛空艇が浮上する。

 残されたのは重い静寂。

 城壁上。

 バルドが吐き捨てる。

「来るって言ってるようなもんだ」

 カイは冷静に言う。

「本気はまだだ。だが、次は違う」

 エリーナが空を見上げる。

「……魔力が、少し重い」

 誰も気づかない。

 砦の石壁の隙間。

 黒い煤のような痕跡が、わずかに広がっている。

 微細な侵食。

 風が吹く。

 それは一瞬だけ脈打った。

 旗艦《アーク=テンレア》。

 情報層。

 ジュリアは報告を受ける。

「……退きませんでしたか」

「はい」

「当然ね」

 扇子が閉じる。

「面白くなってきたわ」

 だが視線は別の数値へ。

「……この微弱反応は何?」

「該当記録なし」

 ジュリアは目を細める。

「目に見えないものほど、盤を狂わせる」

 微笑はない。

 盤は、確かに動き始めている。

 ロスヴァルは落ちた。

 だが――

 本当の戦いは、これからだ。

 そして誰も知らないところで、

 黒い兆しは静かに広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ