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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第三部 第97話 沈黙の城塞(後編)

路地裏。

瓦礫の影。

――違和感。

エミリオが足を止める。

視線の先。

人影。

無言で近づく。

満身創痍の男だった。

剣を握り、崩れた瓦礫を背にしながら――

少女を庇うように座り込んでいる。

「……生きてるか」

男の瞳が、ゆっくりと開いた。

焦点が合っていない。

「……まだ……来る……」

かすれた声。

エミリオが目を細める。

「何があった?」

男の瞳が揺れる。

「……黒い……」

息が荒い。

「……全部……喰われた……」

「逃げろ……救援は手遅れだ」

エミリオは動かない。

「お前は?」

男は、わずかに笑った。

背後の少女を見る。

「俺は……守れたか……?」

一拍。

力が抜ける。

そのまま――

崩れ落ちた。

剣が、カランと地面に転がる。

沈黙。

エミリオは、しばらく動かなかった。

「……くそが」

しゃがみ込み、少女を見る。

呼吸あり。

意識なし。

「なんでコイツだけ残ってる?」

周囲を見回す。

ぽつりと。

「……死にかけだからか」

生命反応が薄い。

だから。

「見逃された?」

立ち上がる。

少女を抱き上げる。

「……悪いな」

「回収させてもらう」

そのまま空へ跳び上がる。

――アーク=テンレア。

医療区画。

少女が運び込まれる。

白狼の牙、唯一の生き残り――リリア。

リンシアとアンリエットが付き添い、治療が始まる。

エミリオは壁にもたれ、腕を組み、その様子を見ていた。

「……全部、持っていかれたか」

「……守れたか」

男の言葉だけが、頭から離れない。

数時間後。

リリアの意識が戻る。

「みんなを救わなきゃ……」

「あたしが、回復しないと……」

飛び起き――

固まる。

震える瞳で、周囲を見回す。

理解が追いつかない。

リンシアが優しく声をかける。

「大丈夫です。ここは安全です」

その一言で。

感情が、決壊した。

沈黙。

誰も、すぐに言葉を発しなかった。

「……黒いのが……」

「地面から……溢れてきて……」

「全部……持っていかれた……」

「人も……動物も……全部……」

呼吸が乱れる。

「白狼の牙で……私が弱いから……」

「みんなを……助けられなかった……」

ジュリアが静かに頷く。

「形は?」

リリアは頭を抱える。

「……わからない……」

だが。

震える声で、続ける。

「ただ……見てた……」

「強い人から……吸われて……」

「どんどん……大きくなって……」

息が止まる。

「……顔が……あって……」

言葉が、止まる。

呼吸が、乱れる。

「……女の顔で……」

一瞬。

「……笑ってた……」

空気が、凍りつく。

そして――

「……冷たかった……」

そのまま、リリアは意識を手放した。

ジュリアが扇を閉じる。

「選別型……」

「厄介ですね」

情報は即座にアルディアスへ送られる。

七聖が再集結する。

アルディアスが低く告げる。

「……痕跡はある」

ミハイマールが頷く。

「魔力が……流れている」

アルディアスが命じる。

「アーク=テンレア」

「広域干渉波、展開」

空間が震える。

探索。

そして――

「……反応あり」

ミハイマールが告げる。

「海沿いの村――テーゼ」

アルディアスの目が細くなる。

「次はそこか」

静かに言い放つ。

「全員、出るぞ」

七聖が動き出す。

――次の戦場へ。

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