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終わりなき塵  作者: Nick Occam


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第十三話 雪の上の血痕

疲れ切った重い足取りが、洞窟の静けさの中で鈍く響いていた。空気は淀み、湿り、骨の芯まで冷えていた。


マルクスが生き残った者たちのいる広間へ戻ると、彼らの顔に広がったのは、まるで闇そのものが一度呑み込んだものを不意に返したかのような安堵だった。誰かが彼に声をかけようと身を乗り出した。誰かの喉から押し殺した嗚咽が漏れた。娘を生きたまま取り戻せた老人は真っ先に歩み寄り、父親のようにマルクスを抱き締め、重い手でその背を叩いた。


だが、マルクスだけは違った。


彼の頭の中では、同じ問いだけが繰り返されていた。


「もしかして……俺は間違っていたのか?」


その思いは離れなかった。洞窟の奥であの存在に会って以来、何も崩れてはいない。むしろ、すべてが元の姿のまま残っているせいで、いっそう不気味だった。痕跡。血。村。死んだ子ども。両親への約束。そのすべてが変わらずそこにある。だからこそ、その一つ一つの奥に、ぬめるような疑念が棘のように刺さっていた。自分はここまでの道筋を、どこかで読み違えていたのではないか、と。


何人かが彼に話しかけようとしたが、マルクスにはもう人の声がほとんど届かなかった。


帰り道は、ひどく厳しかった。


老人は娘を背負い、ちぎれた布でしっかりと体を縛りつけていた。若い男が二人、自分たちも立っているのがやっとのくせに、衰弱しきった女たちに肩を貸し、その腕を自分の首へ回させ、ほとんど全体重を引き受けるようにして支えていた。残りの者は、それぞれがそれぞれの限界で壁を頼り、何度も立ち止まりながら、どうにか進んでいた。最後尾を歩いていたのはマルクスだった。


その途中で、彼は気づいた。


見たものが、消えていた。


自分が殺した化け物たちの死体がない。鎖も、そこに掛かっていた残骸もない。床に散っていた骨さえ、石の中へ吸い込まれたみたいに消えている。


まるで自分が見たものも、血を浴びながら手を突っ込んだものも、最初から存在しなかったかのようだった。


その空白は、血や肉よりもマルクスを苛立たせた。


彼らはどうにか出口まで辿り着いた。そこでマルクスは化け物の衣を脱ぎ、できる限り体を拭い、包帯を巻き直して服を着た。


外では激しい吹雪が待っていた。


だが、地下で耐えたもののあとでは、天候などもう誰も怖がらなかった。ただ、先を急がせるだけだった。


村までの道のりは長かったが、ひどく静かだった。生き残った者たちを押していたのはただ一つ、この地獄から一刻も早く抜け出したいという思いだけだった。


村へ着くと、村長が待っていた。


その顔には、隠しようのない軽蔑が浮かんでいた。


マルクスはそれを見逃さなかった。


助かった者たちはすぐにそれぞれの家へ散っていった。よろめき、泣き、互いを支え、生きた人間に縋りつきながら、それでもまだ自分たちが本当に戻ってきたことを信じきれていないようだった。老人は娘を連れて消えた。若い男たちも吹雪の向こうへ溶けるように去った。


マルクスだけは、そこまで持たなかった。


力が尽きていた。


村の通りの真ん中で雪に顔から倒れ込み、その衝撃すら感じなかった。


意識を取り戻したとき、黒い猫が寝台の上に座り、静かに喉を鳴らしていた。


マルクスは心の中で思った。


「これも……印なのか?」


残った力をかき集めて身を起こし、壁にもたれた。猫はゆっくり近づき、ひとつ伸びをしてから、当然のように彼の足の上へ丸くなった。


周囲を見回すと、部屋の中のものはすべて木でできていた。丸太の壁、椅子、台所の道具、棚に置かれた彫り物。石と血と悪臭のあとでは、この木の家そのものがどこか現実離れして見えた。


重い足音が近づき、扉が開いた。白髪の大柄な男が入ってきた。ゆっくりと椅子へ腰を下ろし、膝の上に両手を置く。


マルクスはその手に目を止めた。


握り拳ひとつが、自分の頭ほどもある。まるで二つの大槌だった。


洞窟から離れて以来、頭の中でざわめいていたものは少しずつ静まり始めていた。だが、これから来るものの重みが、そのたびにまた沈んだ思考を引きずり上げた。


男は、痛ましさをたたえた目でマルクスを見ていた。


「おい、若いの……」


眉をわずかに上げ、重く息を吐く。


「何のために、そこまでした」


猫を撫でながら、マルクスは意識をまとめた。


「うまくは説明できない」


少し考え、顎へ左手を添え、思い出したくもない記憶の中を探るように目を上げた。


「ある夫婦に約束した。死んだ息子の仇を討つと」


男の表情がすぐに硬くなった。


「そうか。立派な理由で、ここまで来たわけだ」


乾いた、だが悪意のない笑みが口元をかすめた。


「お前は短気すぎる。だから、目の前に転がっていた真実すら見えなかった」


マルクスには、その言葉が痛いほど分かった。捜査は彼を骨の髄まで削っていた。身体は休息を求めていた。だが、もっと酷かったのは頭の中だった。洞窟の奥で聞かされた言葉がまだ渦を巻き、そのたびに暗い怒りが濃くなっていく。


男はしばらく黙ってから言った。


「ここにいろ。眠れ。身体を戻せ。そのあとでまた行けばいい」


「……そうするしかないか。俺には、あと一か月ある」


その考えは重く、ひどく暗かった。


マルクスは毛布の中へ身を沈めた。男は立ち上がって部屋を出た。黒猫も主人のあとを追う。扉をくぐる寸前、猫は振り返り、小さく首を揺らしてから消えた。


眠るのは簡単ではなかった。


重い呼吸。こめかみを打つ鼓動。目を閉じるたび、同じ光景が現れた。


自分は険しい岩道を登っている。


つまずく。


落ちる。


それでもまた登る。


皮膚は裂け、傷は血を流し、それでも視線だけは上へ向かっている。どこまでも続いているように見えるあの道へ。


やがて力が尽きる。


足が滑る。


そして右手の崖へ吸い込まれるように落ちていく。


下には火の海がある。


炎へ沈む寸前で、夢は途切れた。


目を覚ますと、身体を締めつけていた痛みはほとんど退いていた。わずかに疼くのは亀裂の痕だけだ。ほかの傷は、あまりにも早く塞がっていた。


それは喜ぶべきことには思えなかった。


むしろ、不気味だった。


ゆっくり立ち上がって服を探したが、見当たらない。


部屋の外へ出た瞬間、また黒猫が足元に現れた。柔らかく、だが執拗に脚へ身体を擦り寄せ、それ以上奥へ進ませない。


マルクスは立ち止まった。


「部屋に戻れってことか?」


猫はすぐに鳴いた。


彼はしばらくそれを見つめた。


「……いい。逆らう気はない。なら、これも印だ」


そう言って部屋へ戻った。


夕方になって、家の主人がまたやって来た。服を持ってきて、寝台の足元へ置く。どれも洗われ、破れた場所は繕われていた。


男は何も言わず、そのまま出ていった。


マルクスは再び毛布にくるまり、眠りに落ちた。


次の夜は一瞬で過ぎた。


目を覚ましたのは、黒猫が扉を爪で引っ掻く音だった。


今日はもう、ほとんど痛みがなかった。長いあいだ忘れていた、あの稀な軽さが身体の奥にあった。起き上がり、軽く身体をほぐしたとき、あまりに滑らかに動く自分の身体に逆にぞっとした。


軽すぎた。


マルクスは老いてはいない。まだ三十二だ。それでも、こんな感覚がどんなものだったか、もう忘れていた。


椅子に掛けられていた服を着て、扉を開けた。猫はすでに待っていた。一声鳴き、まっすぐ彼を見てから、当然のように先へ歩いた。


台所の卓上には朝食が用意されていた。


そのもてなしに、マルクスは本気で驚いた。


「ありがとな、相棒」


隣に座った猫を撫でながら食べ始める。猫は最後まで、じっと彼を見ていた。


食器を洗おうとしたが、家から出るよう急かされた。最初は猫が、それからこの木の家そのものの重い沈黙が、彼を外へ押し出した。


外套をまとい、外へ出る。


村長はすでに待っていた。


その背後、雪の上には大きな血の染みが広がり、そこから山へ向かって血の跡が伸びていた。


それを見た瞬間、マルクスの中で答えが勝手に形を取った。


あの巨体の言葉。


村。


あの子の両親。


あの言葉は、もう皮膚の下に刺さった棘のように残っていた。あれがなければ、彼はおそらく何も問わなかった。


一歩で間合いを詰める。


村長の首を掴み、そのまま片腕で持ち上げた。


歯を食いしばる。抑えきれない怒りが、握った指を少しずつ締めていくのが分かった。


「助けてくれたことには礼を言う」


低く、冷たい声だった。


「だが説明しろ。時間は一分だ」


村長は抵抗しなかった。


身体が彼の手の中で小さく跳ねた。呼吸が一気に途切れる。視界の奥から暗さがにじみ始める。


指にさらに力が入った。


窒息しながらも、村長はまだ口を割らない。顔は濃い紫に染まり、身体には最初の痙攣が走った。


そのとき、ふっと手の力が抜けた。


マルクスが目を落とすと、黒猫が足元にいた。脚へ身体を押しつけ、苛立つように鳴いている。


怒りはなお指を支配していた。


それでも最後には引いた。


「……いい。放す」


手を開く。


村長は膝から崩れ落ち、激しく咳き込みながら空気を貪った。猫はすぐに足元から離れ、何事もなかったかのように横へ退いた。


男はすぐには話せなかった。だが、沈黙の余地がもうないと分かると、少しずつ口を開いた。


「罪人を……差し出さなきゃならん……」


あれほど大きな体をした男が、その話題だけで震えていた。


「誰にだ?」


とマルクスは訊いた。


「悪魔どもに……罪の償いとして……」


マルクスの頭の中で何かが鳴った。


「悪魔、か……」


その話は村長の芯そのものを抉るらしかった。男はさらに項垂れた。


「昔……私は大きな役人だった……」


荒い呼吸。喉の奥で鳴る咳。


「私のせいで……多くの人間が苦しんだ。あまりにも多く……」


両手で頭を抱え、顔を覆う。


「家族も……愛した者も……みんな……」


沈黙が落ちた。もう涙は残っていない。あるのは、長い年月をかけて内側を喰い潰した痛みだけだった。


「連れて行かれた……全員……」


ひとつ嚥下し、咳き込み、また続ける。


「私は二十五年、あの城で拷問と奴隷暮らしをした……上で……二十五年だ……」


話が長くなるほど、マルクスの中では一つの問いだけがますます鋭くなっていった。


それでも村長は止まらなかった。


「帰ってきたときには……昔の私はもうどこにもいなかった……残ったのは恐怖と記憶だけだ……そして、こういうものには必ず代償があると知った……遅かれ早かれ……人によっては、死ぬより酷い形で払うことになる……」


男は手を下ろし、雪ではなくもっと暗いものを見ている目をした。


「私にとって、あの場所は煉獄になった……そして気づいた……時には、他の者もそこへ送らなきゃならない……罪人を……血をこびりつかせた連中を……誰にも惜しまれない者たちを……」


洞窟で聞いた言葉が、マルクスの中で別の響き方をし始めた。


だが、それと同時に、さらに暗い思いが持ち上がってきた。


彼は一歩、近づいた。


「じゃあ、子どもたちは何なんだ」


村長は顔を上げた。


そこに浮かんだのは、初めて見る種類の表情だった。


本物の困惑。


作り物ではない困惑。


「……子どもたち?」

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