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Veil lady ~転生美少女は、異世界にえっちな衣装を広めたい~  作者: 緑茶わいん
第五章

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【後日談】義妹のマリッジブルー

「お姉様、お忙しい中、お時間を作っていただき申し訳ありません」

「なにを言ってるの。可愛い妹に会えるせっかくの機会だもの、逃すわけにはいかないわ」

「もう。お姉様ったら、私ももう子供ではないのですよ?」


 新領地へ移動してからは、フェニリード公爵家の面々にもそう頻繁には会えなくなった。

 長距離転移を使えば通常より短時間で戻れるとはいえ、それでもまだ、北海道や九州から東京へ行くよりも手間。

 城や大神殿へ用を済ませるついでに実家へ寄るくらいで──多くて月に一度、長ければ半年くらい顔を合わせないこともあった。


 なので、会うたびに新しい発見があったりするのだけれど。


「そうね。本当に大きくなって。それに、とても綺麗になったわ、アルエット」


 成人を迎えた義妹は、一人前の淑女として立派に華開いた。

 不死鳥の影響を強く感じる赤系の髪と瞳は鮮やかで、見るものを強く惹きつける。

 目の覚めるような赤色に整った顔立ちだと気が強そうに見えてしまいがちなところを、持ち前の柔和な表情がうまく中和して人当たりの良さを演出。

 両手で包めるくらいの大きさの胸は好みが分かれるところだろうが……清楚な印象が、義妹の服の趣味ともマッチしてとても好ましい。


 手放しに褒めると、アルエットは恥ずかしそうに頬を染めて。


「ありがとうございます。……お姉様には、まだまだ敵いませんけれど」

「あら。昔なら『お姉様に言われても嬉しくありません』って頬を膨らませていたでしょうに」

「もう、いつの話を話をなさっているのですか?」


 そう言って、今度こそ頬を膨らませる彼女。

 その指には、きらりと輝く指輪がある。

 結婚指輪ではないが、婚約の証として贈られたものだ。


「たっぷり愛されているのね、ウィルフレッドに」


 一時、俺の婚約者になりかけた、この国の第三王子。

 もちろんそれはお互いに子供の頃の話なので浮ついた関係はいっさいなかったが。

 あの王子様もまたお年頃になられたというのはなんだか感慨深い。

 ……ちなみに、テオドールと結婚してからは一応、俺は彼を呼び捨てにするようになった。彼の父親の弟と結婚したわけなので、関係的には親戚のおばちゃんみたいなものである。


 結婚式の準備もちゃくちゃくと進み、本番まではもうひと月を切っている。

 花嫁となる少女はそれはもう嬉しそうに、婚約指輪をそっと撫でて。


「はい。殿下にはとてもよくしていただいています」


 それからふっと表情を曇らせると「でも」とこぼした。


「私、本当に殿下の妻としてうまくやっていけるのでしょうか」

「……ああ。これは、花嫁が陥りがちな病ね」


 前世で言うマリッジブルーである。

 大きく環境が変わることへの不安から「結婚して本当にいいのか」とかぐるぐる考えてしまう。極端にひどいと、結婚式当日、式に乱入してきた若者と手に手を取って逃避行したりする。

 いや、それはめちゃくちゃ稀有な例だが。


「お姉様も、そういうお気持ちになられたのですか?」

「いいえ、わたしはなかったわ。もろもろの利害関係上、結婚しないなんて選択肢はなかったし」

「お姉様は本当に、テオドール様を愛していらっしゃいましたものね」


 しみじみと言うアルエットを俺は軽く睨んで、


「今だって心から愛しているわ。それに、その言い方だとあなたはウィルフレッドを愛していないみたいよ?」

「わ、私だってウィルフレッド様を愛しています!」


 勢いとはいえきっぱり言い切った。その後顔が真っ赤になるのも含めて、これはなかなかに「やられている」。

 これだけラブラブでなにが問題だというのか。


「……少し、近況を聞いてもいいかしら? 仕事のほうは順調?」

「はい。まだまだ若輩ですので戸惑うことばかりですが、殿下ともども、楽しみながら務めさせていただいております」


 アルエットとウィルフレッドは学園を卒業後、ふたりとも学園の教師となった。

 と言っても現在は正規教師の助手のような立場。

 授業の手伝いをしつつ見聞を広め、一人で教師を務められるように励んでいる最中ということだ。


 これには、二人とも心優しく、政治闘争には向いていないことを加味した国王夫妻からの配慮もある。

 宮廷魔術師長はアーバーグ家の誰かが継ぐのが濃厚であり、軍事的な統括は現在、次期国王内定のランベールが務めている。

 残る要職でウィルフレッドに向いているものとなると……ということで、ゆくゆくは貴族学園の学園長を任せるつもりらしい。


 副学園長は妻となるアルエット。

 そのために助手→教師→幹部とステップアップを期待されている。

 大変だと言いつつも笑顔を浮かべる義妹を見ていると、そちらの方面で悩んでいる様子もない。

 俺は「良かった」と微笑みつつ、内心で「ふうむ」とうなった。


「あなたに他に好きな人がいるとか、ウィルフレッドが浮気している……わけでもないのよね?」


 もし可愛い義妹にそんな仕打ちをするようならテオドールと協力して思いっきりシメるが。


「ち、違います! ……ただ、その、ええっと」


 顔を真っ赤にしてもじもじと俯く。

 あらかじめ、口のかたい使用人以外は下がらせてあるので──そのうえでこの様子となると。


「ああ。……もしかして、初夜がうまくいくか心配なのかしら?」

「は、はっきり言わないでください!」


 怒られた。が、それで吹っ切れたようで、アルエットは続けてこぼす。


「だって、ウィルフレッド様はとてもお優しい方で。婚前だからと私に触れるのも細心の注意を払ってくださっていて。贈り物をくださる時も、いつも心を配ってくださって」

「素敵じゃない」


 惚気か? と思いきや、


「でも、テオドール殿下がお姉様を相手にする態度はもっと熱っぽくて。少し危険なにおいがするくらいで。結婚式では、あんな、鎖で縛るようなことまで……っ」


 めちゃくちゃ俺たちのせいだった。

 それに関しては、俺が焚きつけた部分もあるので申し訳ないが。


「アルエット。わたしたちの関係はいろいろな意味で真似できるものではないから、気にしなくてもいいのよ?」

「ですが、セレスティナ殿下も、ランベール殿下からは熱烈に愛されていると」


 あー。ことエロいことに関しては、その二人は方向性が似ているというか、可愛い子を檻に閉じ込めて裸にして自分の色に染め上げたいみたいなところがある。

 もしかすると国王もそういう人……つまり血筋なのかもしれない。

 ウィルフレッドは愛する人をふわふわに着飾らせて、花とお菓子を贈って、いつもにこにこ笑顔にさせたい派だろう。


「人それぞれよ。夜の行為は激しい人もいれば淡泊な人もいる。中には特殊な嗜好を持っている人だっているんだから」

「そういうものなのですか?」

「短い間とはいえ『瑠璃宮』にいたわたしが言うんだから間違いないわ」


 あんな高級娼館に来る客はだいたい性癖が歪んでいるので、むしろ特殊嗜好の割合は高かったと言っていい。


「女だってそう。熱烈に求められるより、愛を囁かれながら優しく抱かれるほうがいい子だっているわ。アルエットはむしろそちらじゃないかしら?」

「それは……そう、思いますけれど。お姉様、少し率直すぎませんか?」

「あら。わざわざ相談するくらいだもの、具体的な助言でないと意味がないでしょう」


 アルエットのメイド(例によって侍女に昇格予定)が「余計なことを教えるなこの淫乱」みたいな目で睨んできている気もするが、ここは敢えて無視して。


「もし、自分からウィルフレッドを満足させたい欲求があるのなら……いろいろと教えてあげましょうか?」

「そ、そこまでしていただいていいのでしょうか?」


 遠慮を口にしつつも──少し意外なことに、アルエットはずいっと身を乗り出してくる。

 ああ、そういえば、フェニリード家の奥様、つまり俺の養母も、後継候補がいて養子まで取ったのにまだ子供を作っちゃうような人だった。

 いいだろう、そういうことならば。


「ええ、いろいろ教えてあげる。……そうね、まずは比較的普通なところから」

「そ、それで普通なのですか!? では、特殊な行為とはどういう……」

「ふふっ。それはね……?」


 この助言のおかげか、それとも本番を迎えたら意外と平気だったのか、アルエットとウィルフレッドの初夜は無事に成功したらしい。

 ……ただ、その後、数か月経って、今度はウィルフレッドのほうが「妻を満足させられていないかもしれない」とテオドールに相談してくることになるが、これに関しては俺は悪くない。たぶん。

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