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雑種の冒犬者 雑種だけど餌を食いまくって強くなる ハックアンドスラッシュ じゃなくてドッグアンドスラッシュ   作者: カルキ


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49/50

犬は道具を拾ったり置いたりする

冒犬者ギルド。


『犬小屋』。


受付には今日も、受付嬢のマルチーズ、ツボネさんがいた。


そのときだった。


ギルドの扉が、


バァン!!


と開いた。


そこに立っていたのは――


全身傷だらけの大型犬だった。


「大変だ!」


ギルド内が静まり返る。


大型犬は息を切らしながら叫んだ。


「森の奥に……」


ごくり。


「黒い犬が現れた!」


ざわっ。


冒犬者たちが騒ぎ始める。


「黒い犬だと……?」


「まさか……」


「例の『黒牙』か?」


その名が出た瞬間。


クロガネが立ち上がった。


「……黒牙」


その声には、いつもの軽さがなかった。


僕はクロガネを見る。


「知ってるの?」


「ああ」


クロガネは静かに答えた。


「今まで戦った相手とは、次元が違う」


ギルド内の空気が変わった。


誰も喋らない。


僕も少しだけ緊張した。


そして――


お腹が鳴った。


ぐぅぅぅ。


全員が僕を見る。


「……ごめん」


僕はお腹を押さえた。


「朝ご飯食べてなかった」


クロガネが頭を抱える。


「お前は緊張感というものがないのか」


「あるよ」


「どこに?」


「お腹に」


「それは空腹だ」


すると熊おじが立ち上がった。


「よし」


「何が?」


「飯を食うぞ」


クロガネが叫んだ。


「なぜだ!」


熊おじは真顔だった。


「腹が減っては戦えん」


「お前までか!」


ツボネさんがため息をついた。


「……食堂、開けてもらいましょうか」


僕は手を上げた。


「肉がいいです」


「野菜も食べなさい」


「肉にしてください」


「野菜もです」


「じゃあ肉の横に置いてください」


「食べなさい」


「はい……」


その頃。


ギルドの外。


森の向こうから、


低い唸り声が聞こえていた。


グルルルル……


クロガネが窓の外を見る。


「……来るぞ」


僕はパンをくわえたまま振り向いた。


「ん?」


「敵だ」


「どこ?」


「森だ」


僕は窓を見る。


遠くの森。


木々の間に、


二つの赤い目が見えた。


黒牙が、ゆっくりと姿を現した。


その巨体は、森の木々よりもなお大きかった。


冒犬者たちが息をのむ。


「でかい……!」


「これが黒牙……!」


クロガネが前に出る。


「コロマル」


「はい」


「下がっていろ」


クロガネは僕の前に立った。


「こいつは俺がやる」


黒牙が牙をむいた。


クロガネも牙をむく。


「……来い」


風が吹いた。


クロガネの毛が揺れる。


「今まで戦った相手とは、次元が違う」


僕はクロガネを見る。


「じゃあ強いんだ」


「ああ」


「どれくらい?」


「……比較すること自体が無意味だ」


「ふーん」


そのとき。


ツボネさんが受付の下から何かを取り出した。


「では、測ってみましょう」


「なんですか、それ?」


「バ○リンガルです」


「犬の鳴き声を翻訳するやつ?」


「はい」


「なんで戦闘力が測れるの?」


「ギルド長が改造しました」


「暇なのかな」


ツボネさんはバ○リンガルを黒牙に向けた。


「黒牙さん、少し鳴いてください」


黒牙が低く唸る。


「グルルルル……」


ピピピピピピピピ!!


画面に数字が表示された。


【872】


「872……!」


冒犬者たちがざわめく。


クロガネが目を細める。


「……化け物め」


僕も画面を見る。


「872って強いの?」


クロガネが僕を見る。


「知らないのか?」


「うん」


「ならば教えてやる」


クロガネは黒牙を睨んだ。


「俺たちでは到底――」


僕はバ○リンガルをクロガネに向けた。


ピッ。


【437】


「…………」


クロガネが固まった。


「……故障だ」


「でも数字出てるよ」


「故障だ」


「黒牙の半分くらいじゃん」


「故障だ!!」


ツボネさんが言った。


「ちなみに私が28です」


「受付嬢としては十分強いです」


「何がですか?」


僕は手を上げた。


「じゃあ僕も測って」


「コロマルさんはやめておいたほうが……」


「いいから」


ピッ。


【3】


「…………」


ギルドが静まり返った。


クロガネが僕を見る。


「…………ゴミめ」


「言うな!」


「いや、数字が3だぞ」


「僕だって傷つくんだぞ!」


クロガネは


「戦闘力……たったの3かゴミめ」


「やめろ、その言い方!」


「ゴミめ」


「完全に楽しんでるだろ!」


ツボネさんが説明書を見る。


「えーと……ちなみに一般的な犬は5から10ですね」


「僕より上じゃん!」


「はい」


「僕、冒犬者なのに?」


「はい」


「……冒犬者やめようかな」


熊おじが言った。


「待て」


「何?」


「まだ終わっていない」


熊おじは懐から何かを取り出した。


「これを持て」


渡されたのは木の棒だった。


「何これ?」


「武器だ」


僕が木の棒を持つ。


ツボネさんがもう一度測った。


ピピッ。


【5】


「5になった」


「武器を持ったら2上がった!」


クロガネが驚く。


「なるほど……」


僕は得意げになった。


「どうだ」


クロガネが言う。


「大したことないな」


「なんでだよ!」


そこへ冒犬者の一人がやってきた。


「じゃあ、これならどうだ?」


渡されたのは――


鉄の棒。


ピッ。


【12】


「おお!」


「すげえ!」


「武器で戦闘力が上がるぞ!」


僕は鉄の棒を振り回した。


「強くなった!」


黒牙がこちらを見る。


「……くだらん」


「なんだと!」


黒牙が鼻で笑った。


「武器に頼らねば何もできぬとはな」


僕はムッとした。


「じゃあ素手で測ってやる!」


鉄の棒を置く。


ピッ。


【3】


「……」


僕は鉄の棒を見る。


もう一度持つ。


ピッ。


【12】


置く。


【3】


持つ。


【12】


置く。


【3】


「……」


クロガネが言った。


「コロマル」


「何?」


「その武器、離すな」


「うん」


そのとき。


ギルドの外から、別の犬が走ってきた。


「大変だ!」


「どうした!」


「人間が来た!」


「人間だと?」


犬たちが一斉に身構える。


人間が一人、森から現れた。


手には――


銃。


ツボネさんがバウリンガルを向ける。


ピピピピピピピピ!!


【5】


「5……?」


クロガネが目を疑う。


「銃を持っているのに……?」


ツボネさんが画面を確認する。


「いえ」


「何?」


「この人自身の戦闘力が3で、銃の分が2です」


「合計5か」


熊おじが腕を組む。


「つまり……」


僕が言った。


「銃を持っても5だよ」


人間が振り向いた。


「誰が戦闘力5だ!!」


「しゃべった!」


「犬に言われたくない!」


僕はバ○リンガルを見る。


【コロマル:3】


【人間:5】


「負けてる……」


僕は膝をついた。


「人間に……」


クロガネが肩に手を置く。


「気にするな」


「でも5だぞ」


「武器を持っているからな」


「僕も武器持ってたら12だもん」


「そうだ」


「じゃあ僕のほうが強いじゃん」


「そうなるな」


人間が叫んだ。


「待て! 俺は銃を持ってるんだぞ!」


僕は鉄の棒を持ち上げた。


「僕も持ってる」


「それは棒だろ!」


「武器だよ」


「武器の格が違う!」


ツボネさんが測定する。


ピピッ。


【人間:5】


【コロマル:12】


人間が固まった。


僕は胸を張った。


「勝った」


クロガネが呟いた。


「……まさかバ○リンガルの測定で逆転するとは」


黒牙も黙っている。


そして僕は鉄の棒を肩に担いだ。


「どうだ黒牙」


「…………」


「僕の戦闘力は12だ」


黒牙が再び測定される。


【872】


「……」


僕は鉄の棒を見る。


「逃げよう」


クロガネが叫んだ。


「お前は最後まで戦え!!」

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