DANDAN犬がついてくる
冒犬者ギルド『犬小屋』。
朝。
コロマルが入ってきた。
「ツボネさん」
「はい」
「仕事くれ」
「珍しいですね。今日はやる気があるんですか?」
「腹減った」
「帰ってください」
「なんで!?」
「仕事を探しているのかと思ったら、飯を探してるじゃないですか」
「仕事したら飯食える?」
「報酬が出ます」
「じゃあやる」
「現金な人ですね……」
ツボネは依頼書を一枚出した。
「薬草採取です」
「いくら?」
「銀貨三枚」
「安い」
「相場です」
「危険は?」
「森に入ります」
「熊は?」
「います」
「却下」
「早い!」
「熊いるじゃん」
「熊がいるからこそ冒険でしょう!」
「いや、熊いるなら冒険じゃなくて熊の家じゃん」
「森ですよ!」
「熊からしたら家だろ」
そこへ、奥から大きな犬がやってきた。
「おい!」
全員が振り向く。
ドーベルマンの助だった。
「その依頼を受けるのは誰だ!」
コロマルが手を挙げる。
「俺」
「貴様か!」
「うん」
「はやく森の奥へ行き、薬草を取ってこい!」
「嫌だ」
「即答!」
「熊いるし」
「冒犬者なら恐れるな!」
「じゃあお前行って」
「俺は依頼主じゃない!」
「なんで?」
「ギルド職員だからだ!」
「じゃあ俺も職員になる」
「ならん!」
「なんで?」
「お前が受付に座って何ができる!」
「寝る」
「仕事しろ!」
「あと飯食う」
「仕事しろ!」
「あと――」
「もういい!」
ツボネが割って入った。
「コロマルさん。報酬は銀貨三枚ですよ」
「五枚」
「三枚です」
「四枚」
「三枚です」
「三枚とパン」
「……」
「どう?」
「交渉が急に具体的になりましたね」
ドーベルマンが鼻で笑った。
「そんな条件、通るわけが――」
「パン一個つけます」
「ツボネさん!?」
「私も早く出ていってほしいので」
「ひどくない!?」
コロマルが依頼書を受け取った。
「よし」
「やる気になりましたか?」
「パンはいつ?」
「帰ってきてからです」
「じゃあ今食う」
「ダメです!」
「なんで!?」
「まだ採取してません!」
「腹減ってる状態で森行ったら死ぬぞ!」
「あなたは熊に襲われる前に餓死するんですか!?」
「可能性はある」
「ないです!」
ドーベルマンが頭を抱えた。
「……こいつを森に行かせるのか?」
ツボネが答える。
「ギルドの決まりですから」
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫です」
「根拠は?」
「ありません」
「ないのかよ!」
コロマルは扉へ向かった。
「じゃあ行ってくる」
「おお!」
「熊を倒してくる」
「おお!」
「薬草は知らん」
「目的を忘れるな!」
コロマルが扉を開ける。
その瞬間。
グゥゥゥゥゥ……
全員が止まった。
コロマルの腹だった。
「…………」
「…………」
コロマルが真顔で言った。
「パン」
「まだです」
「じゃあ行かない」
「行け!」
「パン」
「行け!」
「パン」
「行けェェェ!!」
こうしてコロマルは、
パンを要求しながら森へ向かった。
その背中を見送りながら、ドーベルマンが呟く。
「……あいつ、本当に冒犬者なのか?」
ツボネが答えた。
「違います」
「え?」
「無駄飯食いです」
「冒犬者じゃないのかよ!」
ギルドの外からコロマルの声が響いた。
「聞こえてるぞー!」
「じゃあ働けー!」
「パンくれー!」
「薬草採ってこーい!」
「パンー!」
「薬草ー!」
「パンー!」
「薬草ー!」
「パン!」
「薬草!」
「パン!」
「うるさい!」
DANDAN犬が増えてくる
この胸な溢れるエサを
見えない犬小屋からとびだそう
朝の犬小屋は、今日も平和だった。




