デート(3)
本来は街まで行く予定だったが、万が一の事を考慮して近所の店を回るだけにした。手を繋いで歩いていたので、近所の人達から「ようやっとデートかい?」「ついに結婚するのか!?」「今日は祭りだ!!」と訂正する間も無く騒がれてしまった。
これは帰ってきた時が怖いな、とヤヌアールと苦笑いを浮かべつつ、のんびりと歩き続ける。
人気のカフェ屋台で軽く飲食を済ませたり、雑貨屋を覗いてみたり。二人で時間を過ごして、気が付けば辺りが暗くなり始めていた。
「色々奢ってもらったが……良かったのか?」
「元々はお前の誕生日も兼ねてなんだ。気にせず受け取っといてくれよ」
「それは嬉しいが、なんだか解せないな……」
「まぁまぁ、紳士の嗜みっつー事で。俺に花持たせてくれよ」
冗談めかしてそう言うと、ヤヌアールは困ったように、それでいて嬉しそうに微笑んでくれた。
最後に、いつもヤヌアールがよく行くという森の入口辺りに行く事になった。
ヤヌアールの家にも近いし、帰りは送ってやろうか、と一人考えながら、並んで倒れた木の幹に腰掛ける。
「ゆっくり近所を歩き回るだけでも、意外と楽しいもんだな」
「だな……」
「…………なぁ、ヤヌアール。」
意を決して、シュトラントは彼女の方を向いた。
「話が、あるんだ」
「あ、あぁ……何だ?」
「────」
気持ちを伝えるのか、と母は問うた。
初めて出会った時から、なんて可愛い女の子だろうと、ずっと想い続けてきた。
笑った表情も、困った表情も、怒った表情も、真剣な表情も、照れた表情も何もかもが愛おしい。幼い頃から見てきたし、これからも新しい彼女の一面が見られるのだと信じて疑わなかった。
そんな日当たり前の日々は、もうすぐ終わりを告げるだろう。自分には時間が残されていなくて、それならば最後位、幸せな時間を過ごしたいと思う。
「我儘、聞いてくれてありがとな。」
しかし、シュトラントの心は既に決まっている。
「俺さ、ずっとお前の事、仲のいい幼馴染だと思ってた。」
自分はもうすぐこの世から消える存在だという事は、誰よりも自分が一番よく分かっていたから。
シュトラントは、ちゃんと彼女に伝えると決めていたのだ。
「本当にありがとう。俺の分まで幸せになってくれよ」
長年の恋心を彼女に伝えるべきでは無い、と。




