デート(1)
迎えた当日。
両親を説得し、無事にシュトラントと出掛ける事になったヤヌアール。フリューリングから見立ててもらった服装に身を包み、準備も万端だ。フリューリングはなんと今朝も家に来て、ヘアーセットとメイクもしてくれた。
「それじゃあヤヌア。もしシュウ君の体調が悪くなったら、まずは横にさせるのよ。呼吸をゆっくりさせて、人を呼ぶなりしなさいね」
「分かった」
「それと、気休め程度になるけれど────」
母から万が一の時の対処法を聞き、ヤヌアールはシュトラントを迎えに家を後にしたのだった。
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今日は待ちに待ったデート(仮)の日。シュトラントは外出用のかっちりした服装に身を包んで、両頬を叩いて気持ちを引き締めた。
「よしっ、心身共に元気だ」
「とうとうこの日が来るのかと思うと泣けてきちゃうねぇ」
母はそう言っているが、その表情はぴくりとも動いていない。いつも通り、無表情で煙草をふかしていた。
「振り位してくれたっていいじゃん……」
「まぁなんだ、楽しんできな」
しかし、その言葉を言った時には、どこか柔らかい表情をしていた。
反して、母の隣にいる父の表情は明るいものとは言えなかった。恐る恐る、父はシュトラントに問い掛ける。
「告白は……するのかい?」
「…………さぁ。分からん」
シュトラントはその時による、といったふうに。そして同時に、答えを濁した。
そうこうしている内に待ち合わせ時間になったらしく、インターホンの音が鳴り響く。
「ほら、行っといで」
「行ってきます」
ポケットに財布がある事を確認してから、シュトラントは玄関へと赴いた。
ヤヌアールを玄関で出迎える事も、過去に何度もあった。しかし今回は、何故か緊張感を覚えていて。
一度だけ深呼吸してから、シュトラントは扉を開けた。
「よぉ、おはよーさ…………ん……」
瞬間、シュトラントは固まった。
「お、おはよう。シュウ、体調は大丈夫か?」
「待っっっ、すこぶる元気だが忘れ物をしたちょっと待っててくれ」
「ちょっ、おい!?」
バタンッ、と勢いよく扉を閉めて、シュトラントは顔を覆った。様子が可笑しいと見に来た両親が、慌ててシュトラントの手で隠された顔を覗き込んだ。
「どうしたのシュウ……まさか体調が──」
「生足は聞いてないって!!」
「いやめっちゃ元気だった」
「え、え、何あの髪型、見た事無いんだけど? あと薄ら化粧してんの何どうしたんだあと脚!! いつもの分厚いタイツはどうしたんだよ!?」
その場に膝を着いて、初めて見るヤヌアールの新たな一面を興奮を隠す事無く語り始めるシュトラント。扉の向こうにいるヤヌアールに聞かれていないといいのだが……、そんな心配をしつつも、感極まって涙が込み上げてきそうだった。
「ヤヌアールちゃんの生足で寿命延びてそうだな、コイツ」
シュトラントの頭上では、呆れた様子の母の声がした。
「とはいえ、このシュウは久し振りに見たなぁ」
「あぁ……こんなにも安心するとはな……」
父と母は、情報を処理しきれていないシュトラントに視線を向けて、そう困ったように微笑んだのだった。




