違和感
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シュトラントが合宿を辞退してから、数週間が経った頃。シュトラントはまだ怪我の具合が良くないのか、訓練に行っている様子は見られない。
「怪我の調子はどうだ?」
そう聞いても、
「あー……多分、大丈夫だ」
そんな曖昧な返事しか帰ってこないのだ。あの強気で怒ると怖いエーデと、優しいながらもしっかりとする所はしているフェストラントがいるので、怪我がきっかけで引き込もりになっている、なんて事は考えていないが。
おかしな奴だな、なんていつものように返しながら、ヤヌアールは持ってきた小さな袋を取り出す。
「昨日、クッキー焼いたんだ」
「お、マジで? 食いたい」
「ほら。久し振りに作ったが……美味くなっている筈だ」
「おう、美味いな」
「食うの早っ!?」
手渡して次の瞬間には、シュトラントはクッキーを口の中に放り込んでいた。その様子を見るに、元気なのには違いないのだろうが、妙に違和感が拭えないでいる。
「すまない、シュウ。今日まだ店の手伝いがあるんだ」
「途中で抜け出してきたよかよ……そんなに俺に会いたかったのか?」
「心配なんだ。ここの所様子もおかしいし……お前が何処かに行ってしまいそうで……」
「………………」
少しでも様子を見に来ないと、ふっと消えていてしまいそうで。ヤヌアールはそんな不安を抱いていた。
シュトラントは驚いたように、それでいてどこか焦った様子で言う。
「……そ、そんな訳ねぇだろ……? そりゃあ、俺は数ヵ月後には軍に所属して、もしかしたら遠い所に行くかもしんねぇけどさ。俺がヤヌアールを置いてどっか行くなんて……考えられねぇよ……」
やはり、どこか違和感のある態度だ。しかしヤヌアールが聞いたとしても、シュトラントが答えてくれる事はないのだろう。
「……そう、だよな……。変な事言ったな、忘れて欲しい」
だから、知らないふりをするしかなかった。
「それじゃあ、また来るよ」
「おう……」
部屋を出る直前で、シュトラントに視線を向ける。様子自体はいつもと変わらないが、どんな事情があるのかは読み取れない。
小さく手を振って扉を閉める。
「っ、ゲホッ、ゴホッ……!」
その直後に、シュトラントの口から真っ赤な血が溢れ出た。




