↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シュトヤヌ日和  作者: 京町ミヤ
19/47

魔力乖離症候群

「後天性魔力乖離症候群ですね」


途中で父と合流して、シュトラントは近所の町医者の男性からそう告げられた。


「魔力、乖離……?」


「そもそもこの病気……と言いますか、体質ですね。は、生まれつき……先天性のものが殆どなので、大変珍しい症例です。名前の通り、体内にある魔力が離れ、体外に流れ出てしまう。」


魔力は魔物にとって、血液と同じようなもの。無くては生きていけない、大切なエネルギー源だ。

それは自分の意思によって操る事が出来るのだが……。


「シュトラントさんの場合、軽い運動で急激に魔力が分離してしまう。貧血症状や倦怠感も、突然の体質変化に身体がついていかなかったからでしょう」


「じゃあ、今回倒れたのは……」


「激しい運動に耐えられなかったからでしょうね。むしろ、今まで死ななかったのが奇跡な位ですよ」


それは、遠回しな処刑宣告だった。訓練は勿論、正式に軍に所属するとなれば、当然毎日のように剣を振るう可能性の方が高い。


(……諦めろ、って……事か……)


命を優先するのなら、その道しか無かった。


「な、治るんですよね、それ……。ちゃんと治療して元気になれば──」


「残念ですが、此方の病は未だ原因不明……不治の病とも言われています。先程申し上げた通り、後天性のものは更に珍しいので……大変言い難いのですが……」


──正直、いつ寿命を迎えてもおかしくは無いです。


父の言葉を遮って告げられたその言葉は、紛れもない処刑宣告だった。


耳にした瞬間は「あぁ、俺はいつ死んでもおかしくは無いのか」と、どこか納得すらしていた。気管支が狭まり、視界が真っ暗になって、どうしようもない程の苦しさをさっき経験したばかりだから。

自分の身体の事は、自分が理解している。正にそんな言葉がぴったりだった。


「う、嘘……何か方法は……」


「…………残念ながら、安静にするしか具体的な方法は無いかと」


「そんなっ……」


「父さん」


慌てふためく父を呼んで、シュトラントは笑みを向ける。


「仕方ねぇよ、病気ならさ。皆いつかは死んじまうんだし…………安静にしていれば、まぁ大丈夫なんだろ? ならそうするよ」


「でもシュトラント!」


「ありがとな、先生。また来るから、そん時はよろしくな」


「…………お大事に」


半ば無理矢理父を連れ出して、シュトラントは家に向かって歩き始める。あの場にい続けては、父は医者を責めかねなかった。優しい父だからこそ、息子の為に声を荒らげてしまうから。そんな姿を、シュトラントは見たくなかった。


「待ってシュトラント! なぁ、もう一件別の所へ行ってみないか? もしかしたら誤診かもしれないし……別の所じゃあ何か治療法があるかもしれない」


「…………それで、父さんは満足するか?」


我ながら、酷い言葉だと思う。フェストラントはただ、シュトラントの事を思ってそう提案してくれただけなのだから。


「お前……」


「……落ち着こうぜ。動揺してたら思わぬ結果を招く事になっちまう。まずは診断結果を母さんに報告、その後連絡入れるから……。そんで、調べていけばいい……」


「…………。そうだね……ごめんね。一番辛いのはお前なのに」


「むしろ納得いったよ。大丈夫だよ、父さん。意外と何とかなるもんだぜ」


父と並んで家までの道のりをゆっくりと歩く。


いつもより、ゆっくりと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。