名前(2)
翌日の昼休み。シュトラントは庭の片隅で休憩していたフリューリングを見付けたので、声を掛けて一緒に昼食をとっていた。
シュトラントが口に運んでいるのは、今朝母から手渡されたサンドイッチだ。食パン五枚分と具沢山のサンドイッチを一人で平らげるのだが、フリューリングは目を剥いて驚いていた。
(うぅん……普通だと思ってたんだがなぁ……)
フリューリングは自身の手の平よりも小さいクリームパンを一つ食べて食事を終えていた。いやそれは流石に足りないだろう、とツッコミたかったが、人の食事量に口を出すべきではない、と思い留まりぐっと堪える。
「所で、何故わたしを誘って下さったのですです?」
「ん、あぁ……少し聞きたい事があってな」
「何でしょうかです?」
「………………アンタ……」
少し言い淀んでから、シュトラントは意を決して口を開いた。
「ヤヌアールと……どういう関係なんだ!?!?」「友達ですがです」
即答された。しかも、「それ昨日説明されてましたよね?」といったふうに。
「お泊まりがどうとか言ってたけど!!」
「単なるお泊まり会ですです。女子会だと思って頂ければ宜しいかと思いますです」
「恋愛感情抱いてたりする!?!?」
「わたし彼氏いますです」
「俺の知らないヤヌアール知ってたりする!?」
「頭大丈夫ですかです?」
「いや待て、今のは少し語弊があったな……。女友達の前でのヤヌアールってどんな感じなの?」
「同じじゃないですかです?」
ふむふむ、とフリューリングは目を細めて、シュトラントを見上げる。
「成程ですです。シュトラントさんはやっちゃんにほの字なのですねです」
「何故分かった!?」
「むしろ分からないと思ったんですかです!?」
呆れたものですです、と溜息をつきながら、フリューリングは肩を竦めた。
そう、シュトラントは分かりやす過ぎる。今は同期の訓練兵にも「幼馴染のヤヌアールちゃんとは上手くいってるのか?」と聞かれる程に知れ渡ってしまっている。同期のほとんどはヤヌアールの顔すら見た事ないだろうが。
「いやさ、ヤヌアールの交友関係に口出しする気は勿論無いんだぜ? 恋愛とかも、アイツの自由だし……俺が拘束するものでも無いって分かってる。でもよ……す、好きな子が、他の子と仲良くしてたら……何か、モヤっとするというか……」
「ジェラシー感じちゃってるんですねです。可愛らしいと思いますです」
「可愛いって……俺に言う事か? あと……ヤヌアール、友達少ないって言ってたから……。どんな人なのか気になって……声、掛けさせてもらった」
迷惑だったらごめんな、と苦笑をもらすシュトラントを見て、フリューリングはもう一度溜息をついてから、おかしそうに吹き出した。
「ふふふっ」
「な、何がおかしいんだよ……?」
「いえいえ、やっちゃんからお聞きしていたシュトラントさんとは、全く別人のようだったので……つい笑ってしまったのですです」
「えっ!? や、ヤヌアールは俺の事なんて言ってたんだ!?」
ずいっ、と身を乗り出して問うシュトラントがおかしくって、フリューリングは素直に教えてやる事にする。
「強くてかっこいい、大事な人だそうですよ────」




