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運命の影  作者: AkiraNox


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8/31

 最後の一撃、そして王国の崩壊

王城を揺るがす激戦は、ついに最終局面へと突入していた。

近衛騎士団長アイズンと、王城へ侵入した謎の男デンジ。

互いに幾度となく傷を負いながらも、二人は一歩も退かなかった。

だが、限界を迎えた二人が放った最後の一撃によって、勝敗は決する。

そして――。

アイズンが敗れた直後、デンジの本当の目的が明らかになる。

王女アイシャを狙うデンジ。

それを阻もうとする王ガブリエル。

さらに、瀕死のササキに託された最後の使命。

王国の命運を懸けた戦いは、想像を超える結末へと向かっていく。

デンジは、一瞬でアイゼンの眼前へと現れた。


剣を構える暇すら与えない。


真っ直ぐな拳が放たれる。


アイゼンは辛うじて頭を傾けた。


拳は頬をかすめて通り過ぎたが、その衝撃波だけで頬が鋭く裂ける。


「速すぎる……」


アイゼンは一歩後退した。


だが、デンジは即座に距離を詰める。


膝蹴りが腹部へ突き刺さる。


アイゼンは脚を上げて受け止めた。


ドンッ!


二人は同時に後方へ弾き飛ばされる。


わずかに生まれた間合いを利用し、アイゼンは剣を薙いだ。


刃が紅蓮の炎に包まれる。


「炎剣!」


巨大な炎の奔流が、広間いっぱいに広がった。


デンジは受け止めようとはしなかった。


そのまま炎を飛び越える。


宙に舞ったまま――


一本の短剣を抜き放ち、迷いなく投げ放った。


短剣は高速で回転しながら飛ぶ。


アイゼンは咄嗟に身をひねる。


刃は首筋をかすめ、鎧の襟を切り裂いた。


次の瞬間、デンジは目の前へ着地する。


もう一本の短剣を振り上げる。


狙いは心臓。


アイゼンは剣で受け止めた。


しかし、それこそがデンジの狙いだった。


衝突の勢いを利用し、剣を横へ弾く。


そして一瞬で背後へ回り込む。


背中へ鋭い蹴り。


ドォン!!


アイゼンの身体は二メートルほど前方へ吹き飛ばされた。


倒れる寸前――


剣を地面へ突き立てる。


その反動で素早く振り向く。


目の前には、顔まであと数センチという距離まで迫ったデンジの拳。


アイゼンはその手首を掴んだ。


二人は力比べに突入する。


腕の筋が大きく浮かび上がる。


莫大なマナが全身から溢れ出した。


足元の地面が、激しくひび割れていく。


「うおおおおっ!」


アイゼンは雄叫びを上げる。


そしてデンジを力任せに弾き飛ばした。


すぐさま身体を回転させる。


横薙ぎの一閃。


デンジは身を低くしてかわす。


即座に反撃へ移る。


デンジは短剣を掲げた。


ガァァァン!!


激しい火花が周囲へ散った。


その瞬間――


アイゼンの左拳が、デンジの顎を正確に捉える。


拳が顔面に炸裂した。


デンジの頭がわずかに横へ逸れる。


唇から流れた血を拭いながら、彼は笑った。


「いい一撃だ。」


息を切らしながら、アイゼンが言う。


「まだ笑えるのか?」


デンジは静かに答えた。


「この戦いが……楽しいからだ。」


そう言うと、彼は突然腰を落とした。


地面を一回転しながら足を薙ぐ。


アイゼンの足元を払った。


体勢が崩れる。


だが倒れる前に、剣を地面へ突き刺し、その反動で跳躍した。


空中で一回転。


そして頭上から剣を振り下ろす。


デンジは二本の短剣を交差させ、防御の構えを取った。


ガァァァァァン!!


広間全体が激しく震える。


衝撃に耐え切れず、デンジの短剣の一本が砕け散った。


彼は砕けた刃を一瞥する。


そして、折れた破片を投げ捨てた。


口元に笑みが浮かぶ。


「なるほど……武器を一本壊したか。」


アイゼンは荒く息を吐く。


疲労で両腕は震え、


全身の傷はさらに増えていた。


一方のデンジも、


肩から血を流し、


唇は裂け、


武器の一本を失っている。


二人とも、限界が目前まで迫っているのは明らかだった。


デンジは敬意を込めた眼差しでアイゼンを見る。


「もし別の形で出会っていたなら――」


「俺たちは、きっと肩を並べて戦う仲間になれた。」


アイゼンは疲れたように微笑む。


「残念だが……」


「お前は道を誤った。」


デンジの笑みが静かに消えた。


深く息を吸う。


そして拳を強く握り締める。


「なら――」


「次の一撃で、この戦いを終わらせる。」二人は深く息を吸った。


広間は静まり返る。


騎士たちでさえ戦いの手を止め、その対決を見守っていた。


誰もが理解していた。


次の一撃で、すべてが決まるのだと。


アイズンは剣を両手で握り締めた。


静かに目を閉じる。


体内の魔力がゆっくりと刃へ流れ込んでいく。


剣は少しずつ炎をまとい始めた。


赤く――


やがて橙へ。


そして最後には、白く灼けつくような業火へと変わる。


その熱だけで、足元の大理石が溶け始めていた。


一方、デンジは拳を掲げる。


黒い魔力が腕全体を包み込み、幾重にも重なっていく。


やがて、それは鋼鉄の鎧のような硬質な膜となった。


デンジは腰を低く落とす。


右足を強く踏み込み、全身を突撃の構えへと変えた。


二人の視線がぶつかる。


「はああああああっ!!」


次の瞬間、二人は同時に駆け出した。


ドォォォン!!


踏み込みの衝撃で床が砕け散る。


距離が一瞬で縮まる。


五メートル――


三メートル――


そして一メートル。


アイズンは剣を振り上げ、叫んだ。


「王炎斬ッ!!」


渾身の一撃が振り下ろされる。


同時に――


デンジの一直線の拳が放たれた。


ガアアアアアアアン!!


激突の轟音が王城中に響き渡る。


衝撃波が窓という窓を吹き飛ばし、天井のシャンデリアが次々と落下した。


二人は同時に弾き返される。


一歩。


二歩。


三歩。


そこでようやく足を止めた。


静寂が訪れる。


誰もが固唾を呑んで見守っていた。


その時――


アイズンの剣に小さな亀裂が走る。


ピシッ……


さらに広がる。


ピシッ……ピシッ……


アイズンの目が見開かれた。


バキィィン!!


剣は半ばから砕け散った。


その一瞬の隙を、デンジは逃さない。


体をひねり、そのまま渾身の拳をアイズンの腹部へ叩き込む。


ドォォン!!


アイズンの口から鮮血が噴き出した。


そのまま石壁まで吹き飛ばされ、激突する。


壁の一部が轟音とともに崩れ落ちた。


アイズンは立ち上がろうとする。


だが、脚はもう言うことを聞かなかった。


震える手で壁を支え、苦笑を浮かべる。


「……どうやら」


血を吐きながら、小さく笑う。


「……私の負けだ」


デンジはゆっくりと歩み寄る。


一歩。


また一歩。


やがてアイズンの前で立ち止まった。


しばらく無言で見つめる。


そして静かに口を開いた。


「……敬意を払うに値する相手だった」


拳をゆっくりと持ち上げる。


その時――


「姫様、お逃げください!!」


騎士の叫び声が広間に響いた。


デンジは視線を向ける。


騎士たちが王族を広間の外へ避難させている。


その中には――


アイシャの姿もあった。


デンジはわずかに口元を緩める。


「……任務だ」


拳を下ろした。


アイズンにはとどめを刺さず、その場を離れる。


そして全速力で王女へ向かって駆け出した。


アイズンも動こうとした。


しかし、脚はもう限界だった。


片膝をつき、残された力を振り絞って手を伸ばす。


「ササキ!!」


「動け……!」


「姫を……守れ……!!」アイズンの叫びが広間中に響き渡った。


「ササキ!!」


「動け!!」


広間の反対側では――


アイシャは数人の騎士に囲まれていた。


一人の騎士が剣で道を切り開きながら叫ぶ。


「姫様、今すぐお逃げください!」


だが、アイシャの視線は煙と瓦礫の向こうへ向けられていた。


「……ササキ」


必死に辺りを見渡す。


そして――


見つけた。


砕けた石材の間に倒れ伏すササキの姿を。


戦いの始まりで巻き起こった爆風に巻き込まれ、頭から血を流したまま動かない。


アイシャの瞳が大きく見開かれた。


「ササキ!」


駆け寄ろうとした瞬間、


騎士の一人が彼女の腕をつかむ。


「なりません!」


「今はここを離れなくては!」


アイシャは振りほどこうとしながら叫んだ。


「離して!」


「彼が傷ついているの!」


その時――


デンジが到着した。


凄まじい速度で騎士たちの間を駆け抜ける。


「止めろ!」


四人の騎士が同時に飛び出した。


最初の騎士が剣を振るう。


デンジはわずかに身を傾ける。


刃は空を切った。


そのまま騎士の腕をつかみ、


勢いよくひねる。


ゴキッ――


腕が折れる音が響いた。


悲鳴を上げる暇もなく、


胸を蹴り飛ばされる。


騎士は仲間ごと吹き飛んだ。


二人目は槍を突き出す。


デンジは槍の中ほどをつかみ、


一気に引き寄せた。


体勢を崩した騎士へ、


膝蹴りを叩き込む。


騎士はその場に崩れ落ちた。


三人目と四人目が同時に襲いかかる。


デンジはその場で一回転し、


拳の甲で二人を同時に打ち払った。


二人はぶつかり合い、そのまま地面へ倒れ込む。


すべては数秒の出来事だった。


デンジはアイシャの前へ立つ。


残った騎士たちは震えながら後退した。


デンジは静かに手を上げる。


「終わりだ」


だが、その瞬間――


一人の男がアイシャの前へ立ちはだかった。


ガブリエルだった。


王は激しく息を切らしていた。


それでも娘をかばうように両腕を広げ、まっすぐデンジを見据える。


「私は……」


小さく咳き込み、


「……お前に娘は渡さん」


デンジはかすかに笑った。


「父親、か」


言い終えるより早く、


デンジは踏み込む。


一直線の拳が王へ迫る。


ガブリエルは風魔法を発動した。


小さな風の渦が目の前に生まれる。


しかし、それでは足りなかった。


ドォォン!!


衝撃が広間を揺らす。


ガブリエルの口から鮮血があふれた。


目が大きく見開かれる。


風は静かに消えた。


広間は沈黙に包まれる。


デンジはゆっくりと拳を引いた。


王の身体がふらつく。


倒れる寸前、


彼は力を振り絞ってアイシャを振り返った。


小さく微笑む。


「……すまない」


そのまま力尽き、床へ崩れ落ちた。


「……お父様」


アイシャはかすかにつぶやく。


次の瞬間、その声は悲痛な叫びへと変わった。


「お父様ぁぁぁ!!」


彼女は王の傍らに膝をつき、


その手を強く握る。


まだ温もりは残っていた。


しかし、命は静かに失われていく。


涙があふれ止まらなかった。


デンジは無表情のまま二人を見下ろえる。


「見事な覚悟だった」


そして冷たく言い放つ。


「風の王国の王なら、もう少し骨があると思っていたが」


背後では騎士たちが立ち尽くしていた。


恐怖に身体が動かなかった。


一方その頃――


広間の反対側では、


ササキの指先がわずかに動く。


ゆっくりと目を開いた。


視界はぼやけている。


顔の半分は血に染まっていた。


遠くから聞こえてくる。


悲鳴。


泣き声。


崩れ落ちる瓦礫の音。


ササキはかすれた声でつぶやく。


「……何が……」


「何が……起きている……?」


その時だった。


アイズンの叫びが耳を貫く。


残された命を振り絞るような叫びだった。


「ササキ!!」


「立て、ササキ!!」


「くそっ……体が動かん……!」


ササキはゆっくりと顔を上げる。


アイズンの姿を見つめた。


「……隊長?」


アイズンは震える手で姫を指し示す。


「姫を……」


「守れ……!」


その言葉に、ササキの瞳が大きく見開かれた。


勢いよく振り返る。


そこには、


父王の亡骸を抱きしめ、涙を流すアイシャの前に立つデンジの姿があった。


ササキの息が止まる。


「……アイシャ」ササキの目が大きく見開かれた。


その瞬間、身体を蝕んでいた痛みが消え去ったかのようだった。


騎士たちの叫び声も。


貴族たちの泣き声も。


燃え盛る広間の轟音さえも。


何も聞こえない。


ただ一つ――


デンジがアイシャへ手を伸ばす姿だけが目に映っていた。


ササキは拳を強く握り締める。


「……駄目だ」


立ち上がろうとする。


だが、脚は言うことを聞かなかった。


膝から崩れ落ちる。


口元から血がこぼれた。


「くそっ……」


震える両手を見つめる。


「動け……」


「動けっ!!」


脳裏に父の言葉がよみがえった。


> 「本当の戦士はな、自分が万全の時に何ができるかじゃない。身体が限界を迎えた時、それでも何ができるかで強さが決まるんだ」


ササキは奥歯を強く噛み締めた。


体内の魔力を無理やりかき集める。


魔力は筋肉へ、脚へと流れ込んでいく。


激痛が全身を駆け巡った。


疲労で悲鳴を上げる筋繊維が軋む。


それでも――


止まらない。


「身体強化……」


魔力がさらに膨れ上がる。


腕の血管が浮き上がった。


「最大強化――!!」


ササキは魂を振り絞るように叫んだ。


「うおおおおおおおおっ!!」


ドォォォン!!


足元の床が爆ぜる。


ササキの身体は矢のように飛び出した。


その頃――


デンジはアイシャを捕らえようとしていた。


だが次の瞬間、


彼女の姿が目の前から消える。


デンジの目がわずかに見開かれた。


「……何?」


ほんの一瞬後。


ササキはすでにデンジの背後へ回り込み、アイシャを抱きかかえていた。


止まらない。


そのまま出口へ向かって全力で駆け抜ける。


アイシャは驚きながら彼の服をつかんだ。


「ササキ……?」


返事はない。


荒い呼吸だけが聞こえる。


頭からも腕からも血が流れていた。


一歩踏み出すたびに筋肉が悲鳴を上げる。


それでも速度は落ちない。


後方では――


デンジが微かに笑っていた。


「見事だ」


砕けた床に残る足跡を見下ろす。


「一瞬だけとはいえ、私を出し抜いたか」


しかし追いかけようとはしなかった。


ただ静かに呟く。


「だが――」


「そう遠くまでは逃げられない」


一方、


アイズンは壁にもたれかかったままだった。


ササキが姫を連れて脱出する姿を見届ける。


苦しげな笑みが浮かんだ。


「……よくやった」


そのまま力が抜け、


膝をつく。


そして――


ササキはなおも走り続けていた。


城の回廊を。


全力で。


衛兵たちが道を開ける。


使用人たちが慌てて身を避ける。


扉も柱も、すべてが霞んだ線のように流れていく。


やがて正門を飛び出した。


振り返ることなく。


そのまま森へ向かって駆けていく。


呼吸はますます重くなり、


視界も徐々にぼやけ始める。


それでも彼は心の中で強く誓った。


――あいつに渡さない。


――たとえここで死ぬことになっても。


――俺が、アイシャを守る。デンジは瓦礫の中に倒れたままのアイズンをその場に残した。


隊長の胸には深い傷が刻まれ、そこから血が静かに流れ続けている。


それでもアイズンは目を閉じず、遠ざかっていくデンジの背中を見つめていた。


デンジは小さく息をつく。


「坊主を追うのは後でいい」


布切れを取り出し、手についた血を静かに拭い去る。


「第二の任務のほうが重要だ」


視線を王城の奥へ向けた。


「風魔法の巻物――」


一定の足取りで王城の回廊を歩き始める。


辺りは静まり返っていた。


だが、その前に数人の衛兵が立ちはだかった。


「いたぞ!」


「侵入者だ!」


「これ以上進ませるな!」


六人の騎士が一斉に飛び出す。


先頭の騎士が剣を振り下ろした。


デンジは半歩だけ身をずらす。


刃は肩をかすめることなく空を切った。


そのまま騎士の手首をつかみ、


勢いよくひねる。


ゴキッ――


腕が折れる音が響く。


悲鳴を上げる前に、その身体を仲間へ投げ飛ばした。


三人の騎士がもつれ合って倒れる。


その隙を突き、四人目が槍を突き出した。


デンジは振り返ると、


素手で槍をつかむ。


力任せに引き寄せる。


騎士は抵抗もできず前へ引き寄せられた。


一直線の拳。


ドンッ!!


騎士は壁まで吹き飛ばされた。


五人目と六人目は同時に炎と水の魔法を放つ。


二つの魔法弾が一直線に迫る。


デンジは静かに手を上げた。


濃密な魔力の膜が目の前に広がる。


魔法はそこで激突し、爆発した。


煙が回廊を覆い尽くす。


しかし、


その煙の中からデンジは無傷のまま歩み出る。


二人の魔導士へ近づき、


一人には掌打を、


もう一人には横蹴りを放つ。


二人はその場に崩れ落ち、意識を失った。


デンジは何事もなかったかのように歩き続ける。


回廊の奥――


王家の地下宝物庫の扉の前に、


三人の王族が立っていた。


第三王女ニーナ。


第四王子ユーミ。


第五王女フレイラ。


フレイラは兄姉の後ろで震えている。


ユーミは剣を抜き放ち、


緊張を押し隠しながら言った。


「ここは通さない」


デンジは薄く笑う。


「その勇気は嫌いじゃない」


ニーナが一歩前へ出た。


魔法の杖を掲げる。


青い魔法陣が幾重にも展開された。


「水魔法――《竜波》!」


激流が回廊を埋め尽くす勢いで押し寄せる。


壁までもが震えた。


だがデンジは片手を前へ差し出しただけだった。


赤い魔力が掌を包む。


「蒸発しろ」


凄まじい熱波が放たれる。


水は一瞬で沸騰し、


数秒も経たずにすべて白い蒸気へと変わった。


濃い霧が辺りを覆う。


ニーナは目を見開く。


「そんな……」


次の瞬間、


デンジは霧の中から現れ、


彼女の目の前に立っていた。


反撃の隙はない。


掌が胸元へ打ち込まれる。


ニーナは壁まで吹き飛ばされ、


そのまま動かなくなった。


「お姉様!」


フレイラは泣きながら駆け寄る。


デンジは一瞬だけ彼女を見つめ、


静かに動いた。


一撃。


フレイラも姉の隣へ倒れ込む。


ユーミはその場で固まる。


剣を強く握り締め、


叫びながら飛び出した。


「この外道め!」


風の魔法を剣へまとわせ、


鋭い連撃を繰り出す。


才能は確かだった。


だが経験が足りない。


デンジはすべての斬撃をかわし、


一瞬で背後へ回る。


手刀を首筋へ打ち込む。


ユーミは意識を失い、その場へ崩れ落ちた。


デンジはしばらく彼を見下ろえる。


「お前は生かしておこう」


「正直、お前まで死ねばこの国は終わる」


冷たい笑みを浮かべる。


「も

こうして、風の王国の命運を懸けた戦いは、静かにその形を変え始めていた。

アイズンは倒れ、ガブリエル王もまた娘を守るために命を失った。

それでも――アイシャは生きている。

瀕死の身体を引きずりながら、ササキは彼女を連れて王城を脱出した。

だが、デンジの目的はまだ終わっていない。

王家の地下宝物庫。

そこに眠る、風魔法の秘宝。

そして――この国の未来を左右する王族たち。

デンジは一人、王城の奥へと歩みを進める。

その背中には、もはや迷いも焦りもなかった。

「第二の任務を、完遂する」

静かな声が、崩れゆく王城の回廊に響いた。

一方、森へ逃げ込んだササキは、腕の中のアイシャを抱きしめたまま走り続けていた。

彼の身体は限界だった。

それでも、足を止めることはなかった。

――絶対に、守る。

その決意だけを胸に。

そしてその夜。

風の王国の長い歴史は、大きくその姿を変えようとしていた。

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