↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の影  作者: AkiraNox


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/31

紅蓮と黒刃の死闘

――王都を祝福する鐘が鳴り響いた日。

新たな王と王妃の誕生を祝うはずだった王宮は、一瞬にして血と炎に染まった。

王国最強の敵として現れたデンジ。

そして、王を守るため、その前に立ちはだかった近衛騎士団長アイズン。

炎を纏う剣と漆黒の刃。

二人の間に、もはや言葉は必要なかった。

王国の命運を懸けた死闘が、今――始まる。

残った騎士たちは、不安げな表情で二人から距離を取った。


もはや誰一人として、この戦いに割って入ることはできない。


今、あの戦場へ足を踏み入れれば――一瞬で命を落とす。


静寂が訪れる。


やがてデンジは右手をゆっくりと持ち上げた。


漆黒のマナが瞬く間にその腕へ集まり、濃密な闇が右腕を覆い尽くす。


デンジはかすかに笑った。


「さあ……」


「俺について来られるか。」


その姿が消える。


シュッ!!


アイズンの瞳が見開かれた。


「右だ!」


即座に振り向く。


ガァァァン!!


デンジの拳とアイズンの剣が真正面から激突した。


だが今度は――


どちらも退かない。


互いの力がぶつかり合い、床が少しずつ砕け始める。


アイズンは歯を食いしばった。


「はあああっ!!」


全力で押し返す。


デンジが一歩だけ後退した。


その隙を逃さず、アイズンは剣を身体ごと回転させる。


斜めの斬撃。


デンジは上体を反らす。


刃は顔の数センチ手前をかすめて通り過ぎた。


その瞬間――


デンジの蹴りがアイズンの膝を打ち抜く。


体勢が一瞬崩れる。


デンジは半回転し、そのまま横蹴りをアイズンの脇腹へ叩き込んだ。


アイズンは咄嗟に腕で受ける。


ドォン!!


四メートルも吹き飛ばされる。


腕に鋭い痛みが走る。


「力が……さらに増している。」


だがアイズンは止まらない。


足へ炎をまとわせる。


一瞬で間合いを詰めた。


腰を低く落とし、デンジの足を狙って薙ぎ払う。


デンジは軽く跳び上がる。


口元に笑みを浮かべた。


「悪くない。」


攻撃は終わった――そう思った、その瞬間。


アイズンは左手を突き上げる。


「上がれ!」


轟音とともに地面から炎の柱が噴き上がった。


デンジを下から直撃する。


身体が空中へ打ち上げられる。


アイズンは好機を逃さない。


すぐさま跳び上がり、その背後へ回る。


両手で剣を振りかぶる。


「はああああぁっ!!」


渾身の一撃が振り下ろされた。


デンジは黒いマナに覆われた前腕を掲げる。


ガァァァン!!


衝撃で空気そのものが震えた。


しかし、その威力に押し負けたデンジは地面へ叩き落とされる。


ドォォォン!!


大地が砕け、岩と土煙が舞い上がる。


アイズンは間髪入れず煙の中へ飛び込んだ。


上段からの一撃。


左への斬撃。


右への斬撃。


鋭い突き。


さらに返し斬り。


休む間もなく連撃を浴びせ続ける。


一撃ごとにデンジは後退を余儀なくされる。


そして初めて――


デンジは確かに押され始めていた。


アイズンは笑う。


「勝てる……!」


しかし――


連撃の最中。


デンジも笑った。


アイズンは遅れて悟る。


「しまった……囮か!」


デンジはあえて剣を肩の横へ通し過ぎさせる。


そしてアイズンの手首を力強く掴んだ。


一気に引き寄せる。


膝蹴りが腹へ炸裂する。


ドォン!!


肺の空気が一気に吐き出された。


続けざまに顎へ拳を叩き込む。


さらに身体を回転させ――


背中へ強烈な回し蹴り。


アイズンは数十メートルも吹き飛ばされ、壁へ激突した。


石壁には大きな亀裂が走る。


片膝をついたまま、血を吐き咳き込む。


苦しげに顔を上げた。


デンジもまた荒く息をついていた。


左肩からは血が流れ落ち、腕の一部には火傷の痕が残っている。


静かに口を開いた。


「あと少しでも俺が弱ければ……」


「今ので負けていた。」


アイズンは血を流しながらも笑った。


「お前は……」


「俺が生涯で戦った中で、最強の敵だ。」


再び静寂が流れる。


そして次の瞬間――


二人は同時に地を蹴った。


戦いはさらに激しさを増し、勝敗の行方は、もはや誰にも分からなかった。最初の火花が散った。


ガァァァン!!


アイズンの剣が黒いマナに覆われたデンジの拳と激突し、衝撃波が広間中の砂埃を吹き飛ばした。


どちらも一歩も引かない。


互いに真正面から相手の目を見据える。


そして――


激しい攻防が始まった。


アイズンは素早く剣を引き戻し、三連撃を放つ。


一撃目は首。


二撃目は脇腹。


三撃目は心臓を貫く鋭い突き。


デンジは一撃目を前腕で受け止め、二撃目を短剣で弾き、最後の突きを身をひねってかわした。


しかし刃先は肩口を浅く切り裂く。


デンジは一歩下がりながら笑った。


「見事な精度だ。」


アイズンは何も答えない。


その隙を逃さず、さらに踏み込む。


身体を軸に剣を回転させ、横一文字に薙ぎ払う。


デンジは後退したが、刃先が胸をかすめた。


その瞬間。


デンジは炎をまとった剣身を左手で掴む。


灼熱が掌を焼き、白い煙が立ち上る。


痛みに眉をひそめながらも、そのまま剣を力任せに引き寄せた。


アイズンの体勢が崩れる。


そこへデンジの拳が一直線に顔面へ迫る。


アイズンは首を傾けてかわした。


拳は頬をかすめ、その皮膚を裂く。


アイズンは即座に体勢を立て直し、剣の柄でデンジの顎を打ち抜いた。


ドッ!!


デンジは半歩だけ後退する。


すぐさま回し蹴りを放つ。


アイズンは前腕で受け止めた。


ドォン!!


数メートル後方へ滑る。


腕に激痛が走る。


「次にまともに受ければ……折れる。」


深く息を吸う。


マナが両足へ集中する。


一気に踏み込んだ。


あまりの速さに、その姿はかき消えたように見えた。


次の瞬間にはデンジの目前。


一撃。


さらに一撃。


そして三撃目。


剣は一本の連続した軌跡のように舞う。


上段。


下段。


そして身体を一回転させた斬撃。


戦いが始まって以来初めて、デンジは押し込まれた。


一撃が腕を裂き、


二撃目が太腿を切り裂き、


三撃目が脇腹に傷を刻む。


鮮血が飛び散る。


それでもデンジは笑った。


「はは……」


「だからお前は近衛騎士団長に選ばれたのか。」


次の一撃を二本の短剣で受け止める。


そのまま剣を弾き飛ばした。


右足を振り上げる。


胸を狙った鋭い蹴り。


アイズンは後方へ跳んだが、蹴りは肩をかすめた。


肩が大きく弾かれる。


鋭い痛みが走る。


それでも動きは止まらない。


剣を地面へ突き立てた。


炎が亀裂の中を駆け巡る。


赤い光の筋がデンジの足元まで伸びていく。


デンジは視線を落とした。


「なるほど……」


アイズンは手を掲げる。


「燃え上がれ。」


ドォォォォン!!


四方八方から炎が噴き上がった。


デンジは燃え盛る火柱の間を跳び回る。


しかし。


アイズンはすでにその上空にいた。


両手で剣を振りかぶる。


渾身の力で振り下ろした。


デンジは両腕を交差させ、防御する。


ガァァァァァン!!


広間全体が震えた。


床は砕け、デンジの足は大理石の床へ深く沈み込む。


アイズンはさらに力を込める。


炎が剣身へ絡みつき、温度はなおも上昇していく。


デンジは前腕が焼けるような痛みを感じた。


「このままでは……防御を破られる。」


雄叫びを上げる。


全力で押し返した。


二人は同時に弾かれるように距離を取る。


互いに荒い息を吐いた。


アイズンは肩で呼吸をし、汗が顎から滴り落ちる。


一方のデンジは傷がさらに増え、左腕からははっきりと血が流れ続けていた。


二人は再び視線を交わす。


そしてデンジは小さく笑う。


「ようやく……」


「本物の戦いになってきたな。」数秒間、静寂が広間を包んだ。


聞こえるのは、戦士たちの荒い息遣いと、燃え盛る炎の音だけ。


騎士たちは固唾を呑んで戦いを見守り、一部の者は負傷者を外へ運び出していた。


一人の騎士が震える声で呟く。


「隊長は……勝てるのでしょうか?」


別の騎士は拳を強く握り締めた。


「分からない……だが、あの化け物に本気を出させている。」


――。


デンジはゆっくりと顔を上げた。


「アイズン。」


一本の短剣を取り出し、指先で器用に回す。


「もう何年も……これを使うことはなかった。」


さらに腰の後ろからもう一本の短剣を抜いた。


どちらも漆黒の刃を持つ短剣だった。


低い構えを取る。


アイズンは笑みを浮かべる。


「なるほど……本当の得物を隠していたか。」


剣をひと振りする。


刃に再び紅蓮の炎が宿る。


「その方が面白い。」


次の瞬間――


シュッ!!


デンジが地を這うような低い姿勢で駆け出した。


一直線には来ない。


アイズンの周囲を一周。


二周。


三周。


あまりの速度に残像が幾重にも重なる。


「どこから来る……!?」


アイズンは目で追いながら身構えた。


その刹那――


デンジが背後に現れる。


首筋を狙う鋭い突き。


キィン!!


アイズンは即座に振り向き、剣で受け止めた。


しかし、その時にはもうデンジの姿は消えていた。


左。


さらに上。


正面。


四方八方から短剣が襲いかかる。


アイズンは防戦一方となる。


キン!! ガン!! キィン!! ガァン!!


火花が激しく散る。


肩に浅い切り傷。


前腕にも一本。


さらに頬にも赤い線が走る。


どれも致命傷ではない。


だが、その積み重ねが確実に体力を奪っていく。


「このまま守るだけでは……!」


アイズンは叫んだ。


「炎魔法――爆炎!」


勢いよく足を踏み込む。


ドォォォン!!


巨大な炎の輪が周囲へ一気に広がった。


デンジは距離を取らざるを得ない。


それこそが、アイズンの狙いだった。


迷わず突撃する。


剣を振り上げる。


斜めの一閃。


デンジは後退。


さらに二撃目。


三撃目。


戦いは激しい攻防へと変わる。


アイズンの一撃一撃は圧倒的な重さを持ち、


デンジの攻撃は速度と正確さを極限まで研ぎ澄ませていた。


アイズンがデンジの外套を切り裂く。


デンジはアイズンの太腿を浅く裂く。


デンジの拳。


アイズンは剣の柄で受け流す。


アイズンの蹴り。


デンジはその足を掴み、突き飛ばす。


跳躍。


回転。


刺突。


受け。


そして反撃。


互いに一瞬たりとも息をつく暇を与えない。


その時――


デンジがついに剣の間合いの内側へ潜り込んだ。


至近距離。


「まずい!」


アイズンの脳裏に警鐘が鳴る。


デンジの肘打ちが胸を打ち抜く。


ドンッ!!


アイズンの身体が大きく揺れる。


続けざまに腹部へ拳。


口から血が噴き出した。


デンジが追撃に移ろうとした瞬間。


アイズンはその腕を掴む。


力任せに引き寄せ――


額を思い切りデンジの額へ叩きつけた。


ゴッ!!


二人は同時によろめき、距離を取る。


額から血が流れ落ちる。


デンジはアイズンを見つめ、笑った。


「はは……頭突きとはな。」


「こんなことをしてきた奴は久しぶりだ。」


アイズンも痛みに顔をしかめながら笑う。


「近づいて来るなら……」


「身体のどの部分だろうと武器にして戦う。」


デンジは再び笑った。


「だからこそ……」


深く息を吸う。


「お前は尊敬に値する。」


しかし、その笑みは一瞬で消えた。


次の瞬間――


デンジの姿が、これまでとは比較にならない速度で掻き消える。


アイズンの瞳が大きく見開かれた。


「さらに……速くなっただと!?」

炎が消え、瓦礫が積み重なる大広間。

その中心で、二人はなおも立っていた。

傷だらけになりながらも剣を握り続けるアイズン。

そして、幾度となく傷を負いながらも、不敵な笑みを浮かべるデンジ。

二人の戦いは、すでに人間の限界を超えていた。

しかし――

デンジの姿が、再び消える。

先ほどまでとは比べものにならない速度。

アイズンは剣を構え直し、迫り来る気配を必死に追う。

「……来い。」

震える声で、それでも彼は呟いた。

「ここから先は――一歩も通さない。」

そして次の瞬間。

王宮を揺るがすほどの衝撃音が、再び大広間に轟いた。

――二人の死闘は、まだ終わっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。