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運命の影  作者: AkiraNox


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4/31

すべてを奪った日

――五年前。

ササキは、穏やかな日々を送っていた。

自分を愛してくれる家族。

故郷と呼べる村。

そして、共に未来の夢を語り合える大切な友人。

彼は信じていた。

世界は広く、夢を叶えるための時間はまだたくさん残されていると。

強い冒険者になりたかった。

まだ見たことのない場所を旅したかった。

そして、大切な人たちを守れるほど強くなりたかった。

しかし、彼はまだ知らなかった。

自分の人生で最初に守りたいと思ったものこそ――

最初に失うことになるものだということを。

そして、その日――

ササキの少年時代は終わった。

同時に、一人の少年の物語もまた……

別の物語へと変わり始めた。

ササキは、自分の手を握っている彼女の手を見つめた。


そして顔を上げ、微笑む。


「場所?」


リリアは嬉しそうに頷いた。


「数日前に見つけたの。最初にあなたに見せたかった。」


ササキは母親の方へ振り向く。


「母さん、少し出かけてくる。」


セリントはノナを抱きながら微笑んだ。


「遠くへ行きすぎないでね。」


ヴァルは手を振る。


「日が沈む前には帰ってこいよ。」


「分かった。」


二人は家を出て、村の外へ続く土の道を歩いていった。


風が黄金色の畑を優しく撫でる。


農民たちは仕事に励み、子供たちの声が村に活気を与えていた。


ササキはリリアの隣を歩きながら、不思議そうに彼女を見る。


「それで……その秘密の場所ってどこなんだ?」


リリアは唇の前に指を立てる。


「待って。」


ササキは笑いながらため息をついた。


「宝物でも隠しているみたいだな。」


彼女は笑う。


「もしかしたらね。」


二人は木々の間を進み、やがて村の奥に広がる森へ入っていった。


太陽の光が枝の隙間から差し込み、地面には黄金色の光の模様が広がっている。


鳥たちの声が、二人の歩みに寄り添っていた。


しばらく静かな時間が流れた後、リリアが突然口を開いた。


「ササキ。」


「ん?」


彼女は少し顔を下げる。


「大きくなったら、何になりたい?」


ササキは少し考えてから答えた。


「強い冒険者になりたい。」


リリアは彼を見る。


「冒険者?」


ササキは微笑んだ。


「世界中を旅したいんだ。いろんな国を見て……そして、大切な人たちを守れるくらい強くなりたい。」


少し間を置いて、静かに続ける。


「リリアは?」


彼女は背中で指を組みながら、空を見上げる。


「私は……魔法使いになりたい。」


ササキは笑う。


「本当?」


彼女は頷いた。


「魔法を学んで、いろんな場所へ行って、困っている人たちを助けたい。」


そして彼女は彼を見て微笑む。


「その時は……もしかしたら、同じ冒険者パーティーになれるかもしれないね。」


ササキは笑った。


「それはいい考えだ。」


リリアは嬉しそうに微笑んだ。


まるで、その答えをずっと待っていたかのように。


二人は歩き続けた。


一時間ほどが過ぎた。


木々は次第に密集し、道は険しくなっていく。


ササキは額の汗を拭った。


「もう一時間以上歩いてるぞ。」


疲れたように彼女を見る。


「本当に近いのか?」


リリアは笑いながら前を指差す。


「あと少し。」


ササキは諦めたように息を吐く。


「今回も君を信じるよ。」


さらに数分後――


リリアが突然足を止めた。


そして満面の笑みで彼へ振り返る。


「着いたよ。」


彼女の横を一歩進んだ瞬間――


ササキの目が大きく開いた。


目の前には巨大な山がそびえ立ち、その頂上から巨大な滝が流れ落ちていた。


勢いよく落ちる水は、エメラルド色に輝く透明な湖へと注いでいる。


太陽の光が水しぶきに反射し、小さな虹が空中で踊っていた。


湖の周囲には野花が咲き誇り、蝶たちが枝の間を飛び回っている。


水の音が全てを包み込み、その場所には荘厳な静けさが満ちていた。


ササキは言葉を失った。


彼は今まで、こんな美しい景色を見たことがなかった。


リリアは彼の驚いた表情を見ながら微笑む。


「どう?」


彼は滝から目を離さない。


「……すごい。」


湖の端へ近づく。


「村の近くに、こんな場所があるなんて思わなかった。」


リリアは大きな岩の上に座り、水面の上で足を揺らした。


「綺麗でしょう?」


ササキも隣に座る。


「想像していたより、ずっと綺麗だ。」


静寂が訪れる。


しかし、今度の沈黙は気まずいものではなかった。


心地よい静けさだった。


聞こえるのは、水の流れる音と風の音だけ。


しばらくして、リリアは照れながら彼を見る。


「もし気に入ったなら……」


少し間を置く。


「……また一緒に来よう。時間がある時に。」


ササキは彼女を見る。


そして素直な笑顔を浮かべた。


「もちろん。」


リリアの顔には明るい笑顔が広がった。


まるで世界全てが、彼女にとって少し明るくなったかのようだった。


二人は何時間もそこで話した。


将来の夢。


行ってみたい場所。


いつか挑戦する冒険。


しかし、二人はまだ知らなかった。


この穏やかな時間が――


全てが変わる前に二人を繋ぐ、最後の幸せな思い出になることを。太陽は次第に沈み始め、空一面にオレンジ色の光が広がっていく。


そして、木々の影は少しずつ長く伸びていった。


ササキは立ち上がり、体を伸ばす。


「どうやら、ここに長く居すぎたみたいだな。」


リリアも立ち上がり、服についた埃を払う。


「うん……みんなが心配する前に帰らないと。」


ササキは笑う。


「特に父さんがな。五周じゃなくて十周走らされそうだ。」


リリアは目を閉じるほど笑った。


「たぶん、本当にやると思う。」


二人は話しながら、笑い合いながらその場所を後にした。


時々、ササキは小さな枝や石を拾って空へ投げ、それを見たリリアが冗談混じりに注意する。


そんな穏やかな時間を過ごしながら――


二人が森の中央を歩いていた、その時。


ドォォォン!!


大地が激しく揺れた。


木々の上にいた大量の鳥たちが一斉に飛び立つ。


続いて、森全体を震わせるような巨大な轟音が響いた。


リリアは突然足を止める。


「な……何、今の?」


ササキは空を見上げる。


村の方向から、巨大な黒煙の柱が立ち上っていた。


彼の目が大きく開く。


「……嘘だ。」


何も考えず、彼はリリアの手を掴み、全速力で走り出した。


「ササキ!」


後ろから走りながらリリアが叫ぶ。


「落ち着いて!もしかしたら山で爆発が起きたとか――」


しかし、彼は息を切らしながら答えた。


「理由は分からない……でも、嫌な予感がする。」


彼の足はさらに速くなる。


心臓が激しく鼓動していた。


今まで感じたことのない感覚。


何か取り返しのつかないことが起きたという予感。


二人は木々の間を駆け抜ける。


岩や木の根を飛び越えながら進み、ついに森の外へ出た。


そして――


二人はその場で凍りついた。


笑顔は消えた。


声も消えた。


全てが――


消えていた。


ナイル村は、もう以前の姿ではなかった。


炎が家々を飲み込んでいる。


黒い煙が空へ昇る。


大地には巨大な穴が開き、壊れた木材があらゆる場所に散らばっていた。


恐ろしい静寂が辺りを支配している。


聞こえるのは、燃え続ける炎の音だけ。


ササキの唇が震える。


「……ありえない。」


彼は膝から崩れ落ちた。


呼吸が乱れる。


目の前の光景を理解できなかった。


その反対側では――


リリアが村へ向かって走り出す。


「お母さん!」


「お父さん!」


ササキは慌てて顔を上げる。


「リリア!待て!」


彼も後を追う。


二人は村へ入った。


しかし、そこに広がっていた光景は想像を遥かに超えていた。


一人の男が地面に倒れている。


胸には木片が突き刺さっていた。


一人の女性は子供を抱きしめたまま、二人とも焼け焦げている。


小さな少女は母親の遺体の隣に座り、泣き続けながら必死に起こそうとしていた。


しかし、その命はとうの昔に失われていた。


どこを見ても――


血。


灰。


そして、動かない人々。


ササキは吐き気を感じた。


涙を流すことすらできなかった。


心が現実を拒絶していた。


一方、リリアは――


村の中央にできた巨大な穴の前で立ち止まった。


まるで空から隕石が落ちたかのような巨大な穴。


彼女は震える瞳でそこを見つめる。


そして、膝から崩れ落ちた。


「いや……。」


彼女は両手で土を掘り始める。


「いや……いや……いや……。」


掘る速度がどんどん速くなる。


爪は割れた。


指から血が流れる。


それでも止まらない。


「お母さん!!」


「お父さん!!」


「お願い……。」


「無事でいて……。」


「お願いだから……。」


その声は、聞く者の心を引き裂くようだった。


ササキは彼女の後ろに立っていた。


何もできなかった。


その時――


彼は奇妙な気配を感じた。


あまりにも重い存在感。


空気そのものが息苦しく感じるほどの圧力。


ササキはゆっくりと顔を上げる。


破壊された家の瓦礫の上に――


巨大な生物が立っていた。


青い肌。


鍛え上げられた巨体。


そして、赤く輝く目には恐ろしい獰猛さが宿っている。


そいつは長い牙を見せながら笑った。


「くそ……。」


自分の体を確認するように見下ろす。


「あの野郎……俺をここへ飛ばしやがった。」


地面へ血を吐き捨てる。


「予想以上に強かったな。」


そして低い声で笑う。


「だが、我が主が解放されれば……誰にも俺たちを止めることはできない。」


ゆっくりと首を動かす。


その視線がリリアへ向いた。


恐ろしい笑みが浮かぶ。


「ああ……。」


「まだ生き残りがいるじゃないか。」巨大な魔物は、その巨体からは想像できないほど軽やかに瓦礫の上から降りた。


そして、破壊された大地の上にゆっくりと足をつける。


ドン……ドン……


一歩踏み出すたび、大地が震える。


魔物はリリアから数メートル離れた場所で止まった。


しかし、彼女はその存在に気づいていなかった。


血で汚れた指で、今も必死に地面を掘り続けている。


魔物は少し頭を下げ、穴を見下ろした。


「つまり……ここがお前の家だったのか?」


沈黙。


リリアは答えない。


魔物は短く息を吐く。


「運が悪かったな。」


そして血に染まった自分の指を見る。


「俺はあの爆発に巻き込まれて、ここへ落ちてきた。そして、お前の家は家族ごと潰れた。」


罪悪感など一切ない笑みを浮かべる。


「それでも生き残った奴らは……俺が始末してやった。」


その瞬間。


リリアの手が震えた。


掘る動きが止まる。


ゆっくりと――


彼女は立ち上がった。


髪が顔を覆い、息は震えている。


「お前……。」


顔を上げる。


涙は、顔についた埃と血と混ざっていた。


「お前が……これをやったのか?」


魔物は笑う。


「ああ。」


次の瞬間。


「うああああああああ!!」


リリアは力の限り叫び、恐怖など忘れたように魔物へ突進した。


「殺してやる!!」


魔物は冷静に手を伸ばす。


そして――


彼女が届く前に、頭を掴んだ。


動きが完全に止まる。


リリアは空中で足をばたつかせ、逃れようとする。


しかし、その握力は鋼鉄のようだった。


魔物は片手だけで彼女を持ち上げる。


「本当にうるさい奴だ。」


ササキの目が大きく開く。


「リリア!」


彼は木製の剣を握りしめ、全速力で走り出した。


「彼女を放せ!」


地面を強く蹴り、魔物へ飛びかかる。


脚と腕にマナを集中させる。


強化魔法。


突進速度が一気に上がる。


そして、全力で魔物の足へ剣を振り下ろした。


一撃。


剣が足へ命中する。


しかし――


傷一つつかなかった。


魔物は驚いたように下を見る。


「ん?」


次の瞬間。


ドォン!


たった一度の蹴り。


ササキには、それが見えなかった。


腹部に激痛が走る。


息が止まる。


身体は矢のように吹き飛び、木の柵を破壊し、さらに何本もの木をなぎ倒して森の奥へ消えていった。


「サ……サ……ササキ!!」


リリアは必死に叫びながら逃れようとする。


魔物はうんざりしたように彼女を見る。


「黙れ。」


そして彼女の頭を掴んでいた手を離す。


リリアは地面へ強く落ちる。


咳き込みながら息を整えようとする。


魔物は背を向けた。


「もう十分だ。」


そして空を見上げる。


「戻らなければな。」


魔物は煙の中を歩き去っていく。


破壊された村を残して。


一方、リリアは――


地面を這いながら涙を流していた。


「ササキ……。」


しかし、返事はなかった。


……


三日後。


ゼフィリア王国の軍隊が、ナイル村の廃墟へ到着した。


数十人の騎士たちが瓦礫の間を歩き、生存者を探している。


その場には重苦しい沈黙が広がっていた。


経験豊富な兵士でさえ、顔色を失っている。


一人の騎士が震える声で呟いた。


「誰が……誰がこんなことを……?」


別の騎士が散らばる遺体を見ながら答える。


「これは戦いじゃない……。」


「虐殺だ。」


その時、一人の騎士団長が馬から降りた。


旅の跡が残る赤い鎧を身につけている。


アイゼン。


年齢:30歳。


分類:騎士。


魔法:炎。


彼は村全体を見渡した。


破壊された家々。


引き抜かれた木々。


中央に開いた巨大な穴。


そして、数え切れないほどの遺体。


彼は強く拳を握る。


「……くそ。」


一つの遺体の横に膝をつき、静かにその目を閉じる。


そして立ち上がった。


「周囲を完全に捜索しろ。」


「はい、隊長!」


騎士たちはそれぞれの方向へ散っていく。


その中でアイゼンは――


一瞬だけ目を閉じた。


すると、非常に弱いマナの流れを感じ取る。


すぐに目を開く。


「……誰かいる。」


彼は森へ向かい、その微かな気配を追った。


進むほど、マナの反応は強くなっていく。


そして――


巨大な滝へ辿り着いた。


アイゼンは足を止める。


「ここは……。」


そこは奇妙なほど静かだった。


まるで、あの惨劇がここには届かなかったかのように。


彼は滝の下にある小さな湖へ近づく。


そして積み重なった枝をどかした。


その瞬間――


彼の目が大きく開く。


そこには一人の少年が倒れていた。


浅い水の中に横たわり、身体中が血と傷だらけだった。


呼吸はかろうじて続いている。


アイゼンは迷わず駆け寄った。


「おい、少年!」


彼を急いで水から引き上げる。


首元に指を当てる。


数秒間、沈黙する。


そして――


安堵の息を吐いた。


「……まだ生きている。」


彼は少年の壊れた身体を見る。


「ありえない……。」


「これほどの傷を負って……どうして生きていられる?」


アイゼンはすぐに彼を背負う。


「耐えろ、少年。」


そして全速力で王都へ向かって走り出した。


運命の歯車は、再び動き始めていた。


しかし――


この出会いが、やがて王国全体の未来を変えることになるとは、まだ誰も知らなかった。「これが……俺の昔の人生の終わりだった。」


ササキは空を見上げる。


その声は静かで、まるで自分ではない誰かの物語を語っているようだった。


「その日、俺を救ってくれたのはアイゼン様だった。」


「俺は死にかけていた……でも、生き残った。」


「そして、それから……」


彼の顔に小さな笑みが浮かぶ。


「アイゼン様は自ら俺を鍛えてくれた。」


彼は初めての訓練の日を思い出す。


アイゼンが木製の剣を投げ渡した。


「拾え。」


そして数秒後――


容赦なく彼へ攻撃を浴びせた。


「ぐあっ!」


訓練は日の出前に始まり、日が沈むまで続いた。


長距離走。


剣の修練。


近接戦闘。


マナの操作。


耐久力の強化。


彼は毎日のように何度も倒れた。


しかし、アイゼンは決して手を差し伸べなかった。


いつもこう言っていた。


「自分の力で立ち上がれなければ、生き残れない。」


最初の頃、ササキはそれが嫌だった。


だが、何年も過ぎるにつれて――


彼は理解した。


もしアイゼンが優しく接していたなら……


最初の本当の戦いで死んでいただろう。


ササキは小さく笑う。


「父さんに似ているな。」


二人の方法は違っていた。


しかし、どちらも彼に強くなってほしいと願っていた。


時はあっという間に過ぎた。


ササキは成長した。


身体はより強くなり。


速度は上がり。


強化魔法の制御も大きく向上した。


そして一週間前――


アイゼンは彼を執務室へ呼び出した。


「任務がある。」


ササキは姿勢を正す。


「承知しました。」


アイゼンは王国の紋章が刻まれた小さな徽章を彼へ投げ渡した。


ササキは驚きながら受け取る。


「これは……。」


「今日から――」


アイゼンは隠そうとしても隠しきれない誇りを込めた目で彼を見る。


「お前は王宮直属の正式な護衛兵だ。」


ササキの目が大きく開く。


「俺が……?」


「俺の選択を後悔させるな。」


ササキは、何年ぶりかに心から嬉しそうな笑顔を浮かべた。


「期待を裏切りません。」


……


現在。


ササキは空を見上げながら、小さく息を吐く。


「父さん……。」


「母さん……。」


「リリア……。」


「もう、ここにはいない。」


彼は静かに拳を握る。


「でも、俺は大丈夫だ。」


そして小さく微笑む。


「新しい仲間がいる。」


庭園の方を見る。


「俺を気にかけてくれる人もいる。」


……


王宮での日々は穏やかに過ぎていった。


アイシャとササキの交流は、最初は誰にも気づかれないほど自然なものだった。


ほとんど毎朝――


アイシャは庭園へ行く理由を作った。


時には本を読みたいと言い。


時には風を感じたいと言い。


時には、護衛たちでさえ信じないような理由を作った。


しかし、彼女が本当に会いたかった相手は――


ササキただ一人だった。


彼は訓練が終わる時間になると、彼女を待っていた。


二人はいつもの場所に座る。


お茶を飲み。


何時間も話をする。


彼女は彼に村で過ごした幼少期の話をした。


両親のこと。


そして、皆を守る騎士になりたいという夢。


一方、彼女は――


王宮で過ごした幼少期について語った。


終わることのない勉強。


一つ一つの行動を縛る王族の規

あの日から、ササキはもう、ナイル村の道を走り回っていた少年ではなくなった。

村は消えた。

家族も消えた。

そしてリリアも――

過去を思い出すたびに胸を締めつける、遠い記憶となった。

しかし、すべてが瓦礫と化したその場所で――

一人の男が、ササキへ手を差し伸べた。

アイゼンだった。

彼はササキの命を救った。

そして、もう一度立ち上がる方法を教えた。

戦うこと。

力を制御すること。

そして――

すべてを失った後でも、生き続けることを。

月日は流れた。

ササキは成長し、王宮の護衛兵となった。

そして、そこで――

彼はアイシャ王女と出会った。

その出会いが、自分が求めていたものを与えてくれることになるとは、彼はまだ知らなかった。

新たに自分が帰ることのできる場所。

信頼できる人々。

そして――

再び生きようと思える、新たな理由。

しかし、彼はまだ知らなかった。

アイシャとの出会いが、決して偶然ではなかったことを。

そして、自分はすでに過去を葬り去ったと思っていた。

だが――

その過去は、再び戻ろうとしていた。

しかも――

彼が想像していた以上に、残酷な形で。

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