↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の影  作者: AkiraNox


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/31

「なぜ、僕だったのか」

とても広く、豪華な王族の部屋。


そこにはカイレンがいた。


彼はテーブルに座っており、その向かいにはアリス王女が座っていた。アリスは頬杖をつきながら、微笑んでカイレンを見つめている。


カイレンは不安そうに口を開いた。


「すみません……」


「どうしたの?」


「少し、聞いてもいいですか?」


「もちろん。どうぞ……」


「どうして、僕を選んだんですか?」


数時間前――


ハリス:


「次は……306番」


カイレンは立ち上がった。


そして前へ進んだ。


一歩ずつ。


一歩ずつ。


ハリスの前まで来ると、黙って立った。


ハリスは統計表に目を通した。


書類の上を視線が滑る。


そして言った。


ハリス:


「よし……君の配置は――」


その時……


小さな声が彼の言葉を遮った。


「――待って!」


ハリスは振り向いた。


声の主はアリス王女だった。


ハリス:


「何でしょう、お嬢様?」


アリスはカイレンを見つめていた。


微笑んでいた。


だが、その微笑みはいつもと違っていた。


穏やかで……


そして冷たい。


彼女は手を上げた。


そして、カイレンをまっすぐに指さした。


「あの子、私がもらうわ!」


カイレンは驚いたように彼女を見る。


ハリス:


「どういうことでしょうか、お嬢様?」


「言葉通りよ」


アリスは国王アーサーを見る。


「お父様、彼を私にいただけますか?」


国王は目を閉じ、俯いた。


そして目を開くと、真剣な表情でアリスを見つめた。


「……よかろう。お前に任せる」


現在――


アリス:


「正直に言うと、理由は自分でも分からないわ。でも、ただあなたが欲しいと思ったの」


カイレンは納得していないような笑みを浮かべた。


「本当に? そういうことですか……はははは」


(人間にとって、僕は何なんだ?)


「でも、僕が具体的に何をすればいいのか知りたいです」


「簡単よ。あなたは私の護衛であり、同時に従者でもある。常に私と一緒にいてもらうわ」


「なるほど……って、待ってください。ずっとですか?」


「ええ、その通り。それともう一つ。私があなたの唯一の友達よ。分かった?」


「唯一の友達? いや、よく分かりません」


「いい? あなたは私と一緒に王立学園へ通うの」


カイレンは慌てて立ち上がった。


「えっ? 王立学園に?」


「ええ……さっき言ったでしょう? あなたはこれからずっと私と一緒にいるの」


カイレンはアリスを見つめ、それから再び椅子に座った。


「分かりました」


「落ち着いたところで、話を戻しましょう。さっき言ったように、私があなたの唯一の友達。つまり、王国内でも王国外でも、他の人と友達になることは禁止よ」


「随分とわがままな話ですが、そもそも僕は友達を作ることに興味がありません」


「わがまま?」


アリスは立ち上がった。


カイレンが彼女を見る。


アリスはカイレンのそばまで歩いてくると、彼の隣に立った。


カイレンは恥ずかしそうに前を向いた。


「どうしたんですか、王女様?」


アリスは静かな声で言った。


「私のことは、アリスと呼んで。カイレン」


カイレンは顔を赤くした。


アリスは彼の耳元に顔を寄せ、囁いた。


「聞いて、カイレン……あなたは……」


「私のものよ」


――


カイレンの目が大きく見開かれた。


翌日――


カイレンは王族風の大きく美しい部屋で眠っていた。


やがて目を覚ます。


ベッドの上で身体を起こし、立ち上がる。


そして、クローゼットの扉を開けた。


中から白を基調とした正式な制服を取り出す。


中央には赤いラインが入っており、ところどころに奇妙な模様が描かれている。


カイレンは素早く制服を着る。


鏡の前に立ち、自分の姿を見る。


そして深く息を吸った。


「……よし」


カイレンはドアへ向かい、扉を開けた。


すると、目の前にアリスが立っていた。


「おはよう、カイレン」


カイレンは驚いた。


「おはようございます。いつからここに?」


「今来たところよ」


「本当ですか?」


カイレンは納得していないような表情を浮かべる。


「その話は置いておきましょう。さあ、行くわよ」


「分かりました、お嬢様……」


こうして、カイレンの新しい人生が始まった。


城の外へ出ると、アリスが先を歩き、その後ろをカイレンがついていく。


二人の前には、一頭の白馬が繋がれた馬車があった。


黒い車体には、ところどころ金色の装飾が施されている。


そのそばには、眼鏡をかけ、片眼鏡をつけた年配の男性が立っていた。


正式な執事服を身にまとい、腰を曲げ、左胸に手を当てる。


「おはようございます、お嬢様」


「おはよう、マサムネさん」


マサムネは顔を上げ、姿勢を正す。


そしてカイレンを見る。


「おはようございます、カイレン」


カイレンは緊張しながら頭を下げた。


「お、おはようございます、マサムネさん」


「そんなに畏まらなくても結構ですよ。私たちはどちらも従者なのですから」


カイレンは顔を上げ、マサムネを見る。


「は、はい……?」


「では、失礼いたします」


マサムネは馬車の扉を開けた。


「どうぞ、お嬢様」


アリスは馬車へ乗り込む前に、マサムネへ軽く頭を下げる。


そしてカイレンも続いて乗り込んだ。


しばらくして――


馬車は街道を進んでいた。


マサムネが御者席で馬車を操り、カイレンとアリスは後部座席に座っている。


カイレン:


「この人は誰なんですか?」


「マサムネのこと?」


「はい、そうです」


「彼は我が家の執事長よ。もう二十年近く城で働いているわ」


「二十年?」


「ええ。元々は騎士だったの。王国騎士団長の座を争えるほど強かったらしいわ。でも、現在の騎士団長であるエインに敗れたの。エインのほうが六歳も若いのに、彼を完膚なきまでに打ち負かしたそうよ」


「……」


「その後、戦うことへの情熱を失って、戦闘から身を引いたの。でも、お父様は彼の実力を認めていたから、王城の近衛隊長にしようとした。でも彼は、もう二度と戦わないと決めていた。だから、代わりに執事になったのよ」


カイレンは驚いた。


「えっ? つまり、騎士団長がもう一人いるんですか?」


「もう一人? ああ、なるほど。あなたが見たのは、あの騎士団長ね。違うわ。あの人は王城の近衛隊長よ。ただ、副隊長が亡くなったから、今は騎士団長の代役を務めているの」


「いろいろ教えてくれましたけど……では、本来の騎士団長はどこにいるんですか?」


「戦いの準備をしているわ」


「戦い? どんな戦いですか?」


「帝国にある四つの王国には、それぞれ王国騎士団長がいるの。彼らは魔術師を除けば、それぞれの王国で最も強い者たちとして知られているわ。そして騎士団長が交代するたびに、四人は互いに戦って、誰が最も強いのかを決めるの」


「……」


「最後に騎士団長が選ばれてから、もう二十年近く経っているでしょう? だから、今回も誰が最も強いのかを決めるために、戦うことになったのよ」


カイレンは驚いた。


「あなた、本当にいろいろ知っているんですね」


「当然でしょう。情報は集めておかないと。ほら、偉大な力にも知恵で勝てるって言うでしょう?」


「よく分かりませんが……なんだか面白そうですね。ところで、彼……マサムネさんは何歳なんですか?」


「今は四十五歳。基本属性の魔法は火だけで、二次属性は持っていないわ。旅に出たり、魔法を学んだりしたことがないから。分類としては元・戦士ね」


「なるほど……」


「ほら、もうすぐ着くわ」


馬車の外――


王国はとても広かった。


市場は人で賑わい、街の端には高層の建物が並んでいる。


貧しい地域では、子供たちが道で遊んでいる。


家々には静けさが漂っていた。


商人、観光客、移民たちが村の門を通って入ってくる。


任務のためにやって来た冒険者や、街を警備する者たちの姿もある。


そして、何より目を引くのは、街の中央にそびえ立つ巨大な時計だった。


やがて――


カイレンとアリスは王立学園へ到着した。


二人は馬車から降りる。


カイレンは一度足元へ視線を落とした。


そして、ゆっくりと顔を上げる。


その瞬間――


目が大きく見開かれた。


王立学園。


そこでは、男女の生徒たちが学園へ入っていく。


門のそばには警備兵が立ち、前庭では教師たちが話をしている。


学園は横にも縦にも非常に大きい。


正面には数え切れないほどの窓が並び、二階建ての白い建物には、いくつもの色彩が施されている。


壁には魔法陣のような模様や、見慣れない文字が描かれていた。


生徒たちは笑い、友人と話しながら歩いていた。


しかし――


アリス王女の姿を見た瞬間、空気が変わった。


誰もが声を落とし、それでも笑顔を浮かべながら彼女を見ている。


アリスは穏やかな笑顔で学園へ向かって歩く。


その後ろをカイレンが歩き、周囲を物珍しそうに見回していた。


「見て、アリス王女が来たわ」


「なんて綺麗なんだ……」


「友達になれたらなぁ」


「何を言ってるんだ、馬鹿。そんなことできるわけないだろ」


カイレン:


「さすが王女様だな……」


アリス:


「さて、カイレン。あなたは先に校長室へ行って。そこで何をすればいいのか説明してもらって、簡単な試験も受けることになるわ。先生たちに部屋の場所を聞けば分かるから。いい?」


「分かりました」


「私は自分の教室へ行くわね」


「はい」


しばらくして――


王立学園、六年一組。


教室は非常に広かった。


横に四席、縦に六席ほどの机が並び、前方には大きな黒板がある。


アリスは右側の最前列の席に座っていた。


そこには、彼女を含めて七人の生徒がいた。


教室の中央、最前列。


一人の男子生徒が姿勢よく座り、真剣な表情で前を見つめている。


白い肌。


緑色の瞳。


その左隣には、赤い髪にところどころ黒が混じった男子生徒がいる。


整った顔立ちで肌は白く、どこか自信過剰そうな雰囲気を漂わせている。


その後ろには、一人の女子生徒が座っていた。


茶色の前髪で顔を隠すようにしている。


白い肌をした美しい少女だが、とても恥ずかしがり屋のようだった。


そこへ一人の男子生徒が近づいてきた。


床に落ちている消しゴムを見つけ、腰をかがめて拾う。


そして少女へ差し出した。


「これ、君の?」


少女は消しゴムを見た。


「あ、あああっ! す、すみません、これは……」


少女は慌てて走り去った。


「これ、私の消しゴムじゃありません!!」


男子生徒は驚いた。


「じゃあ、この消しゴムは誰のなんだ?」


消しゴムを近くで見つめる。


「……え? これ、僕の消しゴムじゃないか。どうして忘れてたんだ?」


その男子生徒は浅黒い肌をしており、髪も瞳も青色だった。


非常に物忘れの多い性格だった。


最後列の左側。


そこには、一人の女子生徒が眠っていた。


黒い髪の毛先には、少しだけ赤みがある。


長いまつ毛と整った顔立ち。


そして透き通るような白い肌。


先ほどの恥ずかしがり屋の少女が、顔を手で隠しながら走ってくる。


「見ないでください!」


その瞬間――


眠っていた少女とぶつかった。


「きゃっ!」


少女は転んだ。


すると、眠っていた少女が立ち上がる。


恥ずかしがり屋の少女は震えながら言った。


「わ、わ、私……ご、ごめんなさい!」


彼女は恐怖で激しく震えていた。


眠っていた少女は彼女を見つめる。


そして、まるで光が差したような明るい笑顔を浮かべた。


「謝らなくていいよ、ハカリ。むしろ大丈夫? 結構強く転んだよね」


「ひ、ひぃ……! だ、大丈夫です!!」


少女は勢いよく走り去った。


残された少女は、彼女をピンク色の瞳で見つめながら首を傾げた。


人付き合いが大好きで、とても明るく、少し騒がしい性格だった。


最後列の右側。


そこには、頬杖をついた一人の少年がいた。


黒く乱れた髪。


茶色の瞳。


先ほどの明るい少女が、彼に向かって笑顔で手を振る。


「おーい、こんにちは、イノスケ!」


少年は彼女を見ることなく、顔を背けた。


「て……」


舌を噛む。


少女は手を下ろした。


「なんなの?」


彼は傲慢な性格で、ただ強さだけを追い求めていた。


その時――


「ドンッ!」


大きな音が教室に響いた。


全員が慌てて自分の席へ戻り、姿勢を正した。


黒板の前には、一人の三十代ほどの男性が立っていた。


彼の名はナイ。


目を大きく見開き、眼鏡をかけている。


「失礼……皆さん、私のことは知っていると思います。知らない人のために自己紹介しておきましょう。私はナイ。この学園の教師です。そして、最近亡くなったモシ先生の代わりに、皆さんの魔法学を担当することになりました」


ナイは続ける。


「皆さんが教科書のどこまで進んでいるか、どこまで授業を受けたかは関係ありません。今日から最初から始めます」


生徒たち:


「え?」


「静かに」


明るい少女:


「でも、先生――」


「これは私が決めたことだ。変更するつもりはない」


少女は頬を膨らませた。


「今日はどうしてみんなこんなのばっかりなの……」


「さて……これで一つ目の話は終わりだ。次の話だが……」


全員が真剣に耳を傾ける。


「この学園に、新しい生徒が一人転入してきた。今日から君たちと同じクラスになる」


「本当?」


「そうだ。そして、この生徒はこの学園で初めて、基本属性を持たないまま入学する生徒でもある」


教室中がざわめいた。


「基本属性がない? どういう意味だ?」


「そもそも、そんなことが許されるのか?」


「すごい……基本属性を持たずに入学できるってことは、相当な量の魔力を持っているに違いない」


「早く見てみたい!」


「よし。それじゃあ、みんなでカイレンを迎えてやってくれ」


アリスは恐ろしいほど嬉しそうに微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。