最終テスト
――最後の試験
第三の試験が終わってから、五時間後。
子供たちは、黙ったままナイの後を歩いていた。
以前のように話す者は、もう誰もいなかった。
たった三つの試験だけで、彼らは完全に変わってしまった。
最初の試験は、三百六人の子供たちから始まった。
そして、二百五十人で終わった。
二つ目の試験は、二百五十人から始まり、
百四十三人で終わった。
そして三つ目の試験は、百四十三人から始まり、
八十人で終わった。
そして今――
残された試験は、あと一つだけだった。
ナイは両手を背中で組みながら、彼らの前を歩いていた。
まるで普通の子供たちを引率しているかのように。
しかし、その後ろにいるのは、三つの死の試験を生き延びた八十人の子供たちだった。
ナイが突然、足を止めた。
ナイ:
「これで残る試験は、あと一つだ。
覚悟しておけ」
子供たちは互いの顔を見た。
22:
「兄貴、最後の試験は何だと思う?」
23:
「分からない……でも、これまでよりは簡単だと思う」
22:
「簡単?」
少しの間、沈黙する。
「俺にも分からない。
でも、そうであってほしい」
ミラはカイレンの近くを歩いていた。
そして彼を見上げる。
ミラ:
「カイレン」
カイレン:
「ん?」
ミラ:
「何があっても……最後まで一緒に試験を突破しよう」
カイレンはしばらく彼女を見つめ、それから小さく笑った。
「うん!」
二人は再び歩き始めた。
それから、かなりの時間が経った頃――
ナイ:
「着いたぞ」
子供たちは一斉に顔を上げた。
そこは、南王国の北部に広がる深い森の中心だった。
だが、そこには奇妙なものが待ち受けていた。
彼らの目の前の地面には――
四つの巨大な石の門があった。
四つの門は正方形になるように配置され、それぞれに異なる文字が刻まれている。
一つ目。
A――影。
二つ目。
B――風。
三つ目。
C――残響。
そして四つ目。
D――光。
一行は完全に足を止めた。
56:
「何だ、これ?」
「問題を解く試験なのか?」
ナイ:
「その通りだ」
四つの門がある。
これから一つの問題を出す。
その中の一つだけが正解だ。
そして、一つの門に立てるのは二十人まで。
子供たちは門を見つめた。
23:
「つまり……合格できるのは二十人だけなのか?」
ナイ:
「その通り」
22:
「じゃあ、間違った答えを選んだ奴はどうなる?」
ナイは薄く笑った。
「自分たちで確かめろ」
これから問題を出す。
考える時間は十分間。
準備しろ。
静寂が広がった。
ナイ:
「問題は――」
そして、読み上げた。
「『私は、音を持たぬものから生まれる。
そして、それが存在する間だけ生き続ける。
私は決して自分の源を追い越せず、
決してその後ろに取り残されることもない。
もし私の源が消えれば、
私もまた消える。
さて、私は何だ?』」
A――影。
B――風。
C――残響。
D――光。
カウントダウンが始まった。
残り十分。
子供たちは互いに顔を見合わせた。
300:
「こんなの簡単じゃないか!」
どう考えても光だ。
光の源が消えれば、光だって消える!
そう言って、第四の門へ向かって走り出した。
33:
「確かに、それが正しい!」
俺も行く!
その後ろから何人もの子供たちが駆け出した。
10。
11。
12。
そして、さらに別の子供たちが続く。
20。
21。
22。
23。
24。
25。
26。
27。
28。
29。
30。
31。
32。
33。
34。
次々と子供たちが押し寄せ、第四の門はほとんど埋まっていった。
7番の少年も、そこへ向かって走っていた。
しかし――
カチッ!
門の周囲に分厚い結界が現れた。
少年は、その直前で立ち止まった。
ナイ:
「第四の門は定員に達した」
子供たちはその場で凍りついた。
何人かは、その場に膝をついた。
「そんな……」
「もう終わりだ!」
「死にたくない!」
「どうすればいいんだ!?」
その時――
一人の子供が叫んだ。
「静かにしろォォォ!」
全員が振り向いた。
そこにいたのは23だった。
23は子供たちの間を進みながら、不機嫌そうな顔で彼らを睨んだ。
「何を騒いでいる?」
「お前たち、本当に同じ王国の人間なのか?」
一人の子供が怒鳴り返した。
「じゃあ、どうしろっていうんだ!?」
「正解を選ばなければ殺されるんだぞ!」
23:
「誰が、光が正解だと言った?」
その言葉で、辺りが静まり返った。
「まだ三つの門が残っている。
その中の一つが正解かもしれない。
それに――」
23は問題文を思い返した。
「こんなに簡単な問題を出すとは思えない。
よく考えろ。
まだ七分もある」
子供たちは再び考え始めた。
カイレンはミラの隣に立っていた。
カイレン:
「ミラはどう思う?」
「どれが正解だと思う?」
ミラ:
「分からない……」
「でも、考えてみると……」
ミラは四つの選択肢を見つめた。
「どれも、その源が消えれば一緒に消えるように思える」
「だから……」
「どれが答えなの?」
カイレンは黙って考えた。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
「……分かった気がする」
ミラ:
「本当に?」
三分後――
子供たちが動き始めた。
二十人が光の門に立った。
二十人が残響の門に立つ。
十八人が風の門へ。
そして十四人が影の門へ。
残されたのは、わずか八人。
残り時間は四分。
ミラはカイレンを見た。
「じゃあ、カイレン。
あなたの答えは?」
カイレン:
「影だ」
ミラ:
「影?」
「どうして?」
カイレンは彼女を見る。
「聞いて」
『音を持たぬものから生まれる』
影を生み出すものは、音なんて必要としない。
ただ存在していればいい。
『それが存在する間だけ生き続ける』
影は、その源となるものがなければ存在できない。
『私は決して自分の源を追い越せず、決してその後ろに取り残されることもない』
影は、常に自分を生み出したものについていく。
一緒に歩き、一緒に動く。
『もし私の源が消えれば、私もまた消える』
影を生み出しているものが消えれば、影も同時に消える。
カイレンはミラを見た。
「これなら分かるだろ?」
ミラはしばらく黙っていた。
そして、ゆっくりとうなずいた。
「……うん。
あなたの言う通りだと思う」
その時――
背後から声がした。
23:
「分かった!」
カイレンとミラが振り返る。
23は二人を見ていた。
「答えは影だろ?」
カイレンは答えなかった。
だが、その沈黙だけで十分だった。
カイレンとミラは、影の門へ向かって走った。
しかし、門の前でミラが立ち止まる。
そして、カイレンを見る。
「心配しないで、カイレン」
「私はあなたを信じてる」
カイレンは彼女を見つめた。
「ありがとう、ミラ」
二人は互いに手を伸ばした。
そして、手を握り合う。
そのまま二人は門の中へ入った。
同時に23も入る。
その後ろから22。
そして4。
56。
さらに、同じ答えにたどり着いた子供たちも続いた。
カチッ!
影の門が閉じた。
ナイ:
「定員に達した」
二十人。
残されたのは第四の門と、そこに入れなかった数人の子供たちだけだった。
光の門の前に立つ少年が、自信満々に言った。
「こんなの簡単だ。
俺たちが勝つ」
それを聞いた23は、影の門の向こうから呟いた。
「馬鹿ばっかりだ……」
「俺と同じくらいの年齢なのに、こんなことも分からないのか」
そして影の門を見た。
「俺も最初は影と残響で迷った」
「でも、あの変な奴の説明を聞いた今なら――」
「間違いない」
影だ。
ナイが手を上げた。
「全員、準備はできたか?」
誰も答えなかった。
カウントが始まる。
3。
2。
1。
ナイは一瞬だけ沈黙した。
そして――
「正解は……」
「影だ」
子供たちの目が大きく見開かれた。
「え……?」
その瞬間――
門が開いた。
しかし、その向こうに出口はなかった。
そこに現れたのは――
黒い炎だった。
ゴォォォォッ!
子供たちは一斉に炎の中へ落ちていった。
「いやあああああ!」
「こんなの聞いてない!」
「死にたくない!」
「母さん!」
一人の子供が叫びながら落下した。
全身に炎がまとわりつく。
別の子供は門の縁に必死にしがみついた。
「助けてくれ!」
しかし、黒い炎がその手を包み込んだ。
そして、その身体までも飲み込んでいく。
やがて、その叫び声も途切れた。
焦げた臭いが辺りに広がった。
影の門の中にいた子供たちは、誰一人として声を出せなかった。
聞こえてくるのは、向こう側から響く叫び声だけ。
「うあああああ!」
「いやだあああ!」
「頼む、助けてくれ!」
そして――
門が閉じた。
静寂が戻った。
ナイ:
「これが現実だ」
「人間は、簡単に死ぬ」
カイレンは慌てて顔を伏せた。
そして、横を向く。
「うっ……!」
その場で吐いた。
ミラ:
「カイレン!」
「大丈夫!?」
カイレンは激しく咳き込んだ。
「俺は……」
しかし、それ以上は言葉にならなかった。
第四の試験
カイレンは、震える手で口元を押さえた。
何度も咳き込む。
ミラは、そんな彼の背中を静かにさすっていた。
「……カイレン」
返事はなかった。
ただ、目の前で起きた光景が、頭から離れない。
燃え上がる黒い炎。
助けを求める声。
そして――消えていった命。
カイレンはゆっくりと顔を上げた。
その瞳から、いつもの光が消えていた。
ナイはそんな彼らを一瞥すると、何事もなかったかのように背を向けた。
「行くぞ」
「次の場所へ移動する」
誰も動かなかった。
誰も、口を開かなかった。
ただ一人――
カイレンだけが、黒い炎の消えた門を見つめ続けていた。
そして彼は、心の中で初めて理解した。
ここでは――
正しい答えを選んでも、生き残れるとは限らない。
本当の試験は、まだ終わっていない。
むしろ――
これからが、本当の始まりだった。




