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運命の影  作者: AkiraNox


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24/31

生還の谷 ――地下鉱山の試練――


そこで立ち止まった。


目の前には、大きな亀裂があった。


しかし、その向こう側には――


レールの続きが見える。


カイレンはそれを見つめた。


「……遠すぎる」


縁まで近づく。


距離を測るように向こう側を見る。


「跳んだら……届くかな」


数歩下がる。


そして、走り出した。


全速力で走る。


「一……」


「二……」


「三!」


縁まで来た。


だが、突然足を止める。


「……何やってるんだ?」


亀裂を見下ろす。


「絶対無理だろ」


後ろへ下がる。


頭を掻く。


「いや……こんなの無茶だ」


その場に座り込む。


そして、もう一度向こう側を見る。


どう考えても、前へ進む方法は飛び越えることしかなかった。


立ち上がる。


「これをやらなかったら……」


後ろを振り返る。


「ここで迷うだけだ」


数メートル下がる。


深く息を吸う。


「……よし」


そして――


走り出した。


走る。


走る。


走る。


そして縁に到達した瞬間――


跳ぶ。


「うわああああああっ!」


身体が大きく宙を舞う。


そして――


向こう側へ落下した。


「ぐっ……!」


縁際に倒れ込む。


数秒間、動けない。


やがて顔を上げた。


「……届いた」


笑みが浮かぶ。


「……奇跡だ」


立ち上がる。


そして下を見る。


その瞬間――


表情が変わった。


山の下には、巨大な洞窟が広がっていた。


想像していたよりも遥かに大きい。


一部には水が流れ、別の場所では赤々とした溶岩が岩の間を流れている。


壁の中ではダイヤモンドが輝き、あちこちには金が散らばっている。


そして遠くには、奇妙な紫色の石が強い光を放っていた。


だが、カイレンが興味を示したのはそれらではなかった。


そこには――


魔物がいた。


大量の魔物が。


ゴブリン。


ゾンビ。


そして赤い毛並みと黒い瞳を持つ野狼。


その数はあまりにも多かった。


カイレンはそれらを見つめる。


「こいつら……」


父の言葉を思い出す。


「父さんは、強くないって言ってた」


少し黙る。


「でも……数が多すぎる」


洞窟の奥を見る。


そこには遠くへ続く道があった。


「どうやって、あそこまで行くんだ?」


再び魔物を見る。


「それに……俺一人で……」


俯く。


そして、父から教わった訓練を思い出す。


剣。


立ち方。


動き。


攻撃。


カイレンは拳を握った。


「……いや」


顔を上げる。


「父さんが教えてくれた剣の技術を信じるしかない」


一歩踏み出す。


しかし、そこで止まった。


自分の手を見る。


「……待て」


魔物を見る。


「剣がないのに、どうやって戦うんだ?」


洞窟の中にいるゴブリンの一体を見る。


そいつは剣を持っていた。


「……あいつが持ってる」


考える。


「でも、どうやって奪う?」


周囲を見回す。


そして、再び鉄道のレールが目に入った。


レールを辿っていく。


それは洞窟の別の場所へと続いていた。


その先で――


何かが地面に落ちている。


近づく。


「……つるはし?」


拾い上げる。


重い。


カイレンは苦労して持ち上げた。


「これでいい」


振ってみる。


身体がよろめく。


「……重い」


それでも握り直す。


「気にするな」


元の場所へ戻る。


崖の縁に立ち、魔物たちを見下ろす。


そして深く息を吸う。


「吸って……」


ゆっくり吐く。


「……よし」


構える。


そして――


跳んだ。


地面に激しく着地する。


「くっ……!」


倒れ込む。


すぐに立ち上がった。


その瞬間――


魔物たちが一斉にこちらを向いた。


短い沈黙。


そして、動き始める。


「……あ」


ゴブリンたちが走り出す。


その後ろからゾンビ。


そして、それよりも速く狼たちが駆けてくる。


「まずい!」


カイレンは背を向けて走り出した。


「悪かった!」


逃げながら叫ぶ。


「邪魔するつもりはなかったんだ!」


だが、魔物たちは止まらない。


背後から遠吠えが聞こえる。


振り返る。


赤い狼の一匹が、凄まじい速度で迫っていた。


「まずい!」


狼が跳ぶ。


カイレンは最後の瞬間に身を引き、地面へ伏せた。


狼が頭上を通り過ぎる。


カイレンは前方へ転がり、顔を上げた。


そこに――


ゴブリンがいた。


剣を持ったゴブリン。


カイレンの目が見開かれる。


「見つけた!」


立ち上がり、ゴブリンへ走る。


ゴブリンが剣を振り上げた。


今にも斬りかかろうとしている。


カイレンはつるはしを全力で振り上げた。


「これでも食らえ!」


振り下ろす。


つるはしがゴブリンの身体を貫いた。


ゴブリンが倒れる。


カイレンは一瞬、動きを止めた。


つるはしを見る。


「……何だ、この感覚……」


手が震えている。


だが、魔物たちの声が聞こえた。


「……考えてる暇はない」


剣を掴む。


「早く終わらせないと!」


振り返る。


狼の一匹が突進してくる。


剣を構える。


「食らえ!」


剣が狼の身体を貫いた。


狼が倒れる。


カイレンは剣を引き抜こうとする。


「ほら……!」


力を込めて引く。


ようやく抜けた。


その直後、別の狼が襲いかかってきた。


剣を振る。


狼が倒れる。


だが、剣が地面に突き刺さった。


「何だ!?」


引き抜こうとする。


「抜けろ!」


だが動かない。


「抜けろ!」


ゾンビが近づいてくる。


「くっ……!」


カイレンは剣を全力で引っ張る。


「抜けえええええっ!」


ゾンビがさらに近づく。


そして――


ついに剣が抜けた。


「やっと……!」


カイレンは剣を振り上げる。


ゾンビの頭を貫いた。


倒れる。


しかし、さらに多くの魔物が迫っていた。


カイレンは周囲を見回す。


「……まずい」


剣を強く握る。


「逃げるしかない!」


背を向けて走る。


一体の魔物を飛び越える。


そのまま走り抜ける。


しかし、突然目の前にゾンビが現れた。


「なっ!?」


後ろへ下がる。


そして剣で突き刺す。


ゾンビが倒れる。


カイレンは走り続けた。


背後から迫る魔物の数が増えていく。


「出口はどこだ!?」


必死に目を走らせる。


そして――


洞窟の奥に一本の通路を見つけた。


「あそこだ!」


通路へ向かって走る。


だが、頭上の岩が崩れ始めた。


「出口が崩れる!」


さらに速度を上げる。


魔物たちはすぐ後ろまで迫っている。


走る。


そして、通路を抜けた。


外へ出た瞬間、振り返る。


魔物たちが迫ってくる。


手に持った剣を見る。


そして天井を見る。


少し考え――


剣を投げた。


剣がひび割れた岩へ突き刺さる。


小さな岩が落ちる。


そして――


天井全体が揺れ始めた。


「……何だ?」


巨大な岩が崩れ落ちる。


ドォォォン!


入口が完全に崩壊した。


魔物たちの姿が岩の向こうへ消える。


カイレンはしばらく呆然と見つめた。


そして剣が落ちた場所を見る。


「俺の剣……」


少し黙る。


やがて、背を向けた。


「……いい」


そして走り出した。


走り続け、息が切れ始める。


「はぁ……はぁ……」


すると右側に道が見えた。


「あそこ!」


中へ入る。


少し進んだところで――


カイレンの目が大きく見開かれた。


目の前には広大な空間が広がっていた。


そして、三本の橋。


右の橋は完全に崩れている。


中央の橋も大きく崩壊している。


だが左の橋だけは――


無事だった。


カイレンはそれを見つめる。


「……ここが試験の場所か」


近づく。


「たぶん……試験の場所に着いたんだ」


橋を見る。


「でも、これが何段階目なんだ?」


首を振る。


「まあいい。とにかく進まないと」


左の橋を慎重に歩き始める。


橋を渡り、そのまま先へ進む。


しばらくして――


足を止めた。


そこには、完全に崩壊した場所があった。


岩が辺り一面に散らばっている。


そして――


地面のほとんどを血が覆っていた。


カイレンの表情が変わる。


「……ここで何があった?」


誰もいない。


残っているのは、血痕だけ。


そして、足跡。


「……これも」


前方の道を見る。


「……俺は正しい道を進んでるってことか」


再び歩き始める。


進めば進むほど、道は狭くなっていく。


そして――


やがて、非常に狭い場所へと辿り着いた。


目の前には、巨大な空洞の上へ伸びる細長い岩が一本だけあった。


その上には血が点々と残っている。


カイレンは下を見る。


底は見えない。


心臓が激しく鼓動し始める。


ドクン……


ドクン……


ドクン……


吐き気が込み上げてくる。


口元を手で押さえる。


「……これは」


一歩後退する。


「ここで何があったのかなんて……知りたくない」


深く息を吸う。


そして、壁沿いに続く別の道を見る。


「……あっちから行こう」


歩き始める。


だが、心臓の鼓動は収まらなかった。


この先に――


何か恐ろしいものが待っている。


そんな気がしてならなかった。


そしてカイレンは、まだ知らなかった。


数分後――


次の段階が始まることを。立ち止まった。


目の前の道は、狭い岩の曲がり角の向こうへと消えている。


その先に何が待っているのか、カイレンには見えなかった。


額に浮かんだ冷たい汗を拭い、もう一度、崩れ落ちた長い岩を見つめる。


その岩は完全に元の場所から外れ、谷の一部を覆うようにして横たわっていた。


まるで、壊れた橋のようだった。


だが、その上に広がる血痕を見れば、何人もの子供たちがここを渡ろうとしたことは明らかだった。


「……何があったんだ?」


返事はない。


聞こえてくるのは、岩の間を吹き抜ける風の音だけ。


カイレンは深く息を吸い、壁に沿って歩き始めた。


バランスを崩さないよう片手を岩肌につけ、周囲を警戒しながら進んでいく。


もう何かに不意打ちを食らうのは御免だった。


数分ほど歩いたところで、遠くから何かが聞こえてきた。


カイレンは足を止めた。


耳を澄ます。


足音。


そして、叫び声。


さらに、何か巨大なものが砕ける音。


カイレンは一歩後退した。


「……誰かいる」


ゆっくりと、通路の出口へ近づいていく。


そして岩陰から顔を出した瞬間――


カイレンの目が大きく見開かれた。


その先には、比較的広い空間が広がっていた。


何十人もの子供たちが、あらゆる方向へ走り回っている。


足元の大地は激しく揺れ、頭上からは山の岩が次々と崩れ落ちていた。


崩れ落ちる岩。


響き渡る叫び声。


そして、逃げ惑う何十人もの子供たち。


カイレンが目にしたのは、これまでの試験とは明らかに違う光景だった。


何が起きているのか分からない。


それでも、この場所に立ち止まっていることが危険だということだけは分かっていた。


カイレンは拳を握りしめる。


次に待ち受けているのは、これまで以上に過酷な試練。


生き残るためには、再び自らの力で道を切り開くしかない。


そして――


生還の谷の本当の恐怖が、ついに姿を現す。

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