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運命の影  作者: AkiraNox


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死の森

第一の試験を生き延びた250人の子供たちを待っていたのは、束の間の休息ではなかった。


疲労も恐怖も癒えないまま、彼らは再び試験へと送り込まれる。


その先に広がっていたのは、太陽の光さえほとんど届かない、巨大な森。


濃い霧、深い沼、命を奪う魔法植物、そして静かに獲物を狙う魔物たち。


生き残るために必要なのは、強さだけではない。


判断力、運、そして――何よりも、生きようとする意志。


しかし、森へ足を踏み入れる前に、すでに最初の犠牲者が生まれていた。


果たして、カイレンたちはこの死に満ちた森を生きて抜けることができるのか――。

 死の森


第一の試験が終わった後――。


その場所は、異様なほど静かだった。


聞こえるのは、子供たちの途切れ途切れの息遣いと、あちこちから聞こえる、押し殺したような泣き声だけ。


黒い霧の迷宮に入った306人の子供たちのうち――


戻ってきたのは、わずか250人だった。


カイレンは地面に座り込み、両手を膝に置いたまま、うつむいていた。


ハァ……ハァ……。


胸が激しく上下している。


服は埃まみれで、顔は疲労のせいで青白かった。


しかし、苦しんでいるのは彼だけではない。


周囲の子供たちは、もっと酷い状態だった。


泣いている者。


地面を見つめたまま、微動だにしない者。


そして、まるでまだ迷宮の中にいるかのように、虚空を見つめている者。


その時――。


ナイが子供たちの前に現れた。


冷たい目で彼らを見渡すと、口を開く。


「……申し訳ありませんが、時間切れです」


何人かの子供が、力なく顔を上げた。


ナイは続ける。


「時間は短かった。それにもかかわらず、250人もの子供が生き残った」


一瞬、言葉を止める。


そして、小さく笑った。


「これは記録的な数字だと思いますよ」


子供たちを見渡す。


「なるほど……だからあなたたちは野良犬みたいなんですね」


「怖いものなんて、何もない」


その言葉に、一人の子供が怒りに拳を握りしめる。


しかし、ナイは気にも留めなかった。


「ですが、あまり喜ばないでください」


そう言って、続ける。


「あなたたちは、まだ始まったばかりです」


子供たちの表情が変わった。


「……何?」


「まだあるのか……?」


ナイは淡々と答える。


「もちろんです」


そして、全員を見渡した。


「まだ、いくつもの試験が残っています」


「なに……!?」


「まだあるのかよ!」


「これだけでも地獄だったんだぞ!」


ナイは肩をすくめる。


「仕方ありません」


そして子供たちを指差した。


「あなたたちの数を減らさなければならない」


「最後まで残った者たちが――最も強い者になる」


その言葉に、全員が黙り込んだ。


誰一人、言い返す勇気を持てなかった。


ナイは続ける。


「とにかく、試験は一つずつ行われます。だから、休んでいる暇はありません」


そして、薄く笑う。


「……ですが、眠らせてあげましょう」


一拍置いて――


「今日だけは」


そう言うと、ナイは背を向けた。


「幸運を」


一人の子供が叫ぶ。


「どこで寝るんだ!?」


ナイは足を止め、振り返った。


「……は?」


そして、地面を指差す。


「見れば分かるでしょう?」


「ここです」


子供たちは固まった。


ナイは淡々と言う。


「心配しなくても大丈夫です。寝心地はいいですよ」


そう言い残すと、まるで当たり前のことを言ったかのように、そのまま歩き去っていった。


一人の子供が呟く。


「……あいつ、本気で言ってるのか?」


別の子供が地面に横になる。


「まあ……俺は別にいいけどな」


目を閉じる。


「これより酷い場所で寝たことなんて、いくらでもある」


その一方で――


カイレンは、彼らの会話を何一つ聞いていなかった。


すでに眠りに落ちていた。


――――――――――


翌日。


バシャッ!


大量の水がカイレンの顔に叩きつけられた。


カイレンは突然、目を見開く。


「ぐっ……!」


一瞬、息が詰まり、その後、激しく呼吸を始めた。


「な……なんだ……?」


目の前には、空になった桶を持った兵士が立っていた。


兵士は言う。


「ほら! 起きろ! 起床の時間だ!」


カイレンは周囲を見渡した。


子供たちが一人、また一人と起き上がっていく。


恐怖のせいで一晩中眠れなかった者もいた。


夜明け前に目を覚ました者もいる。


そしてカイレンのように、少しばかりの水を必要とした者もいた。


カイレンは手で顔を拭った。


全身が痛かった。


それでも――


彼は何も言わなかった。


しばらくすると、子供たちの前に食事が置かれた。


食事は、あまりにも粗末なものだった。


一人につき、小さなパンが一つ。


その隣には、奇妙なスープが入った器。


スープは、すり潰した米と水だけで作られているようで、ほとんど味がなかった。


子供たちは、それぞれ適当な場所に座った。


一人の子供が器を見つめる。


「……これだけ?」


別の子供が答える。


「そうみたいだな」


子供はスプーンを手に取り、一口食べる。


そして――


止まった。


「……塩すら入ってない」


隣にいた子供が小さく笑う。


「少なくとも、温かいだけマシだろ」


全員が食べ始める。


スプーンが器に当たる音だけが、その場に響いていた。


カチャ……カチャ……カチャ……。


会話はほとんどなかった。


誰もが疲れ切っていた。


何日も食べていなかったかのように、急いで食べる子供もいる。


逆に、ゆっくりと食事を口に運ぶ者もいた。


カイレンは、黙々と食べていた。


小さなパンを手に取る。


そして、周囲の子供たちを見る。


250人。


たった一日前までは――306人いた。


今は、56人が消えている。


カイレンには、彼らがどこへ行ったのか分からなかった。


そして――


知りたいとも思わなかった。


最後のパンを口に入れる。


そして、立ち上がった。


――――――――――


一時間後。


子供たちは、第二の試験へ向かうため、長い通路を歩いていた。


足取りは重い。


コツ……コツ……コツ……。


何人かが、小声で話している。


22が言った。


「次はどんな試験なんだろうな、兄貴」


23が答える。


「ああ……気をつけないとな」


22は彼を見る。


「ここでも殺されるかもしれない」


23は笑った。


「お前はいつも慎重だな」


「死にたくないからな」


「俺もだよ」


76は静かに歩いていた。


一方――302は、自信に満ちた様子で歩き、その顔には笑みさえ浮かべていた。


まるで、前の試験から何も学んでいないかのようだった。


――――――――――


数時間歩いた後――。


ついに、彼らは目的地へ到着した。


集団全体が足を止める。


彼らの目の前にあったのは――


巨大な森だった。


その終わりは、どこにも見えない。


木々は天を突くほど高く、その頂上は暗闇の中へ消えていた。


森の入口には、ナイが立っている。


彼は笑った。


「ようこそ」


子供たちを見渡す。


「調子はどうですか?」


誰も答えない。


ナイは続ける。


「道のりは長かったでしょう?」


そして、ため息をついた。


「まあ、気にしないでください」


ナイは手を上げる。


「これより、試験を開始します」


子供たちが凍りついた。


「なに!?」


「俺たちは今来たばかりだぞ!」


ナイは眉を上げる。


「……は?」


そして、冷たい目で彼らを見る。


「昨日、休む暇はないと言ったでしょう?」


少し間を置いて――


「私はあなたたちのことなど、どうでもいい」


あくびをする。


「早く仕事を終わらせて、寝たいんですよ」


そして森を見る。


「今日は二つの試験を行います」


子供たちの顔色が変わった。


「な……二つ!?」


ナイは続ける。


「この試験を終えた瞬間、次の試験会場がすぐそこにあります」


誰かが唾を飲み込む。


ゴクリ……。


ナイは言った。


「試験の詳細を説明します」


一度、言葉を止める。


「正直に言うと、前回の試験では説明が不十分だったと叱られましてね」


子供の一人が目を丸くする。


――前回の試験をきちんと説明しなかったことで、叱られた?


ナイは続ける。


「では……」


森を指差す。


「この試験の名前は――」


そして、告げた。


「死の森」


静寂が広がった。


ナイは説明を続ける。


「この森の中には、多くの生物が存在します」


木々を指差す。


「木々は非常に巨大で、高さが数百メートルに達するものもある。そのため、太陽の光はほとんど地面まで届きません」


子供たちは上を見上げた。


木々はねじれており、幹も異常なほど太い。


まるで、巨大な怪物の身体がそのまま石になったかのようだった。


ナイは続ける。


「地面には常に霧が漂っています。そのため、数メートル先すら見ることができません」


そして、別の方向を指差した。


「黒い川もあれば、深い沼地もある。草に隠れた崖も存在します」


一人の子供が少し前へ出る。


確かに、地面は背の高い草で覆われていた。


「それから、魔法植物もあります」


ナイは説明する。


「傷を癒やすもの」


「毒を持つもの」


「そして、幻覚を引き起こす胞子を放つものもあります」


そして子供たちを見る。


「では、魔物は――」


ナイは笑った。


「森の至る所にいるわけではありません」


何人かの子供が安堵の息を吐く。


しかし、ナイは続けた。


「ですが、強い」


子供たちの表情から、安堵が消えた。


「そして、襲う瞬間を慎重に選びます」


沈黙。


「説明は以上です」


一人の子供が呟いた。


「……めちゃくちゃ丁寧に説明してくれたな」


別の子供が続ける。


「本当に全部教えてくれた……」


三人目の子供。


「一体、どんな叱られ方をしたんだ……?」


ナイが言った。


「もういいです」


そして、一歩後ろへ下がる。


「始めてください」


――――――――――


誰も動かなかった。


250人の子供たちは、ただ森の前に立ち尽くしていた。


カイレンも同じだった。


彼は木々を見つめていた。


その間に広がる闇は、あまりにも濃い。


その瞬間――


ヒュッ!


何かが、とてつもない速度で動いた。


子供たちに見えたのは、黒い影だけ。


そして――


ザシュッ!


302の首が、身体から切り離された。


血が空中に飛び散る。


その身体は、一秒ほど立ったまま動かなかった。


そして――


ドサッ!


地面に倒れた。


全員の目が見開かれる。


「……え?」


巨大な鳥が、両足の爪で302の頭を掴んでいた。


そのまま空へ舞い上がる。


「うわああああああああああ!」


一人の子供が叫んだ。


次の瞬間――


別の鳥が子供へ急降下する。


ザシュッ!


そして、そのまま空へ舞い上がった。


「いやああああああ!」


別の子供が悲鳴を上げる。


入口は一瞬にして混乱へと変わった。


子供たちは四方八方へ逃げ始める。


「逃げろ!」


「早く!」


「戻れ!」


しかし、鳥たちは彼らを逃がさなかった。


そして、わずかな時間のうちに――


子供たちの数は減り始めた。


その頃、カイレンは――


迷うことなく森の中へ走っていた。


「早く終わらせないと……!」


木々の間へ飛び込む。


森の中へ駆け込んだカイレンの背後では、無数の悲鳴が響き続けていた。


空を舞う巨大な鳥。


濃い霧に覆われた森。


そして、どこから襲ってくるか分からない魔物たち。


一歩間違えれば、次の瞬間には命を失う。


それでもカイレンは、足を止めなかった。


生き残るために。


この試験を終わらせるために。


だが――


死の森は、まだその本当の恐ろしさを見せてはいなかった。


ここから始まるのは、250人の子供たちによる、生き残りを懸けた戦いだった。

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