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運命の影  作者: AkiraNox


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13/31

風の王国に迫る戦火

平和だった村に、突如として戦争の足音が響き始めた。

東と南――二つの王国の軍勢が、同時に村へと迫る。

逃げ惑う村人たち。

武器を手に取る男たち。

そして、家族を守るために戦場へ向かうエルドレイン。

平穏だった日常は、もはや戻らない。

長年にわたり平和を保ってきたその村は――


今まさに……


戦場へと変わろうとしていた。


見張りの一人が村中の路地を全力で駆け抜けながら、声を張り上げる。


「みんな逃げろ!」


「女と子供、それに老人はすぐに身を隠せ!」


「男たちは武器を取れ! 戦いの準備をしろ!」


彼は何度も同じ言葉を叫び続けながら、家々の間を駆け回った。


その瞬間――


村全体が一斉に動き始める。


女たちは子供を胸に抱え、必死に走り出した。


子供たちは何が起きているのかも分からず、泣き叫ぶ。


老人たちも……


衰えた身体に鞭を打ち、懸命に足を動かしていた。


一方、その頃――


村の男たちは武器庫へ駆け込んでいた。


木製の扉を勢いよく開け放つ。


ある者は槍を掴み、


ある者は錆びついた剣を引き抜く。


さらに別の者たちは、非常時のために保管されていたわずかな弓矢を手に取った。


誰一人として、訓練された兵士ではない。


だが、誰もが理解していた。


今日ここで戦わなければ……


守るべきものは何一つ残らないと。


……


森の外れでは――


エルドレインが静かに薪を集めていた。


薪を束ね、肩へ担ぎ上げる。


その時――


「エルドレインさん!」


「エルドレインさん!!」


エルドレインは素早く振り返った。


「どうした!?」


男は肩で息をしながら駆け寄ってくる。


両手を膝につき、荒い息を整えた。


そして苦しそうに言った。


「エ……エルドレインさん……」


「何があった!?」


男は顔を上げる。


「急いでください……!」


「村が襲撃されます!」


エルドレインの身体が凍りついた。


肩に担いでいた薪が地面へ落ち、辺りへ散らばる。


彼の目が大きく見開かれた。


「……何だと?」


説明を聞く時間などなかった。


エルドレインは勢いよく振り返ると、全力で走り出した。


走る――


走る――


走る――


木々は残像のように脇を流れ去る。


岩を飛び越え、


小川を駆け抜ける。


やがて村が視界に入った。


彼は一直線に自宅へ向かう。


勢いよく扉を開け放つ。


バァンッ!!


扉は壁へ激しく叩きつけられた。


「ノルン!」


「カイレン!」


その怒鳴り声に家全体が震える。


やがて、小さな足音が階段を駆け下りてきた。


姿を現したのはカイレンだった。


「どうしたの、お父さん?」


「お母さんはどこだ!」


「お母さん? 二階にいるよ」


「すぐ呼んでこい!」


「う、うん!」


カイレンは振り返り、慌てて階段を駆け上がる。


その途中――


ちょうどノルンが部屋から出てきた。


「どうしたの、カイレン?」


「お父さんが大声で叫んでいたけど」


「お母さん、お父さんが呼んでる!」


「えっ? どうして? 何があったの?」


カイレンはノルンの手を掴んだ。


「早く!」


二人は急いで階段を駆け下りる。


ノルンは不安そうな表情でエルドレインを見た。


「あなた、一体何があったの?」


エルドレインは即座に答える。


「説明している時間はない!」


「早く来い!」


三人は家を飛び出した。


外へ出た瞬間――


目の前には混乱が広がっていた。


女たちはあらゆる方向へ逃げ惑い、


子供たちは泣き叫び、


男たちは互いに叫びながら走り回っている。


無数の足音が村中に響いていた。


カイレンは思わず立ち止まる。


「……何これ?」


ノルンも不安そうに辺りを見渡した。


「村で何が起きているの……?」


エルドレインは二人を見つめる。


「村が襲撃される」


ノルンの表情が凍りついた。


「……え?」


「時間がない!」


「走れ!」


三人は全力で村の外れへ向かって駆け出した。エルドレインは森の中で薪を集めていた。


静かな森に、斧を振るう音だけが響いている。


その時――


「エルドレインさん!」


「エルドレインさん!!」


一人の男が全力で駆けてきた。


木の根につまずきそうになりながらも、恐怖に駆られ必死に走ってくる。


エルドレインは振り返った。


「どうした!?」


男はようやく彼の前までたどり着くと、両手を膝につき、激しく息を切らした。


「エ……エルドレインさん……」


エルドレインは男の肩を掴む。


「何があった!?」


男は苦しそうに声を絞り出した。


「急いで……ください……!」


「村が襲撃されます!」


エルドレインの手から薪が落ちた。


目が大きく見開かれる。


「……今、何と言った?」


次の瞬間――


返事を待つことなく走り出した。


駆ける――


駆ける――


駆ける――!!


木々の間を猛烈な勢いで駆け抜け、


岩を飛び越え、


枝をかき分けながら一直線に家へ向かう。


やがて家へたどり着くと、


勢いよく扉を開け放った。


バァンッ!!


「ノルン!!」


「カイレン!!」


階段の上からカイレンが慌てて駆け下りてくる。


「どうしたの、お父さん?」


「お母さんはどこだ!」


「お母さん? 二階にいるよ」


「すぐ呼んでこい!」


「う、うん!」


カイレンは急いで二階へ駆け上がる。


その途中――


ちょうどノルンが姿を現した。


「どうしたの、カイレン?」


「お父さんが叫んでいたけど」


「お母さん!」


「お父さんが早く来てって!」


「えっ? どうして? 何があったの?」


カイレンはノルンの手を掴んだ。


「早く!」


二人は急いで階段を駆け下りる。


ノルンは不安そうに尋ねた。


「あなた、一体何があったの?」


エルドレインは短く答える。


「説明している時間はない!」


「急ぐんだ!」


三人は家を飛び出した。


外へ出た瞬間――


そこには混乱が広がっていた。


女たちは子供を抱えて必死に走り、


子供たちは泣きながら四方へ逃げ惑う。


老人たちは若者に支えられながら懸命に歩いていた。


男たちは互いに叫び合いながら駆け回っている。


無数の足音が村中に響いていた。


カイレンは目を見開く。


「何が起きてるの!?」


ノルンも辺りを見渡した。


「村で何が起きているの!?」


エルドレインは前を見据えたまま言う。


「村が襲撃される」


ノルンの表情が凍りつく。


「……えっ?」


「時間がない!」


「走れ!」


三人は村の外れまで全力で駆けた。


そこには――


巨大な石造りの神殿がそびえ立っていた。


村人たちは皆、その中へ避難していく。


神官が入口に立ち、大声で叫んでいた。


「全員、中へ入れ!」


「急げ!」


「女と子供を先に!」


エルドレインはノルンとカイレンの方を向く。


「二人とも、中へ入って隠れるんだ」


カイレンは父を見上げた。


「お父さんは?」


エルドレインは穏やかに微笑む。


「心配するな、カイレン」


「お父さんは強い」


「この村は、俺が守る」カイレンは黙って父を見つめていた。


その両手はわずかに震えていたが、ぎゅっと拳を握り締める。


ノルンが静かに口を開く。


「あなた……」


「お願いだから、必ず無事に帰ってきて」


エルドレインは安心させるように微笑んだ。


「ああ……約束する」


そう言い残すと――


彼は振り返り、


全力で駆け出した。


風を切って走るたび、背中のマントが大きくはためく。


村の通りを駆け抜け、


武器庫の広場へとたどり着いた。


そこでは男たちが慌ただしく集まり、


剣や槍、弓を手に取っている。


金属が擦れ合う音が辺りに響いていた。


一人の男がエルドレインに気づく。


「見ろ!」


「村の英雄が来たぞ!」


全員が一斉に振り向いた。


「よう、英雄!」


「待ってたぞ!」


エルドレインは軽く頷く。


「みんな」


「よろしく頼む」


彼は武器棚へ歩み寄ると、


一本の質素な剣を手に取り、ゆっくりと鞘から引き抜いた。


シャリン――


男の一人が首を傾げる。


「……あれ?」


「エルドレインさんの剣はどうしたんだ?」


別の男も続ける。


「そうだ。その剣を使うのか?」


エルドレインは静かに微笑んだ。


「心配はいらない」


「あれは今……信頼できる者の手にある」


その時――


タッ、タッ、タッ――!!


激しい足音が近づいてきた。


一人の見張りが血相を変えて駆け込んでくる。


「大変だ!!」


「大変だぁ!!」


エルドレインが鋭く問いかける。


「何があった!?」


見張りは叫んだ。


「反対側からも敵襲です!」


男たちの表情が一変する。


「何だと!?」


エルドレインが問い返す。


「どこの軍だ!?」


見張りは唾を飲み込み、


震える声で答えた。


「そ、それは……」


一瞬の静寂。


そして――


「東の王国……


ガイ王国です!」


男たちの間に動揺が走る。


「なっ……!?」


「二つの王国が同時に!?」


「どうして両方から攻めてくるんだ!?」


エルドレインは静かに目を閉じた。


そして低く呟く。


「……戦争だ」


一人の男が尋ねる。


「戦争?」


エルドレインは静かに説明する。


「この村は二つの王国の間にある」


「同時に攻めてきたということは……」


「この村を軍の前線基地にするつもりなんだ」


男は息を呑んだ。


「つまり……」


「あの二国は互いに戦争を始めるつもりなのか?」


エルドレインは頷く。


「その通りだ」


彼は剣を高く掲げた。


「構えろ!!」


「この村と、ここで暮らすすべての者を守れ!!」


「たとえ命と引き換えになろうとも!」


男たちは一斉に武器を掲げる。


「おおおおっ!!」


その瞬間――


ヒュオオオオッ!!


燃え盛る炎の矢が空を裂いた。


ドォォォン!!


村の中で爆発が起こり、


炎と黒煙が空高く吹き上がる。


一人の男が叫ぶ。


「始まったぞ!!」


エルドレインは剣を振り上げた。


「全員構えろ!」


「盾を前へ!」


「魔法を使える者は、防御魔法を展開しろ!」


魔法使いたちは一斉に応える。


「はい!」


「防御魔法――


《セーフ・フィールド》!!」


幾重もの魔法陣が兵士たちの前に展開される。


やがて、


巨大な半透明の障壁が完成し、


前線全体を覆い尽くした。


次の瞬間――


ヒュン! ヒュン! ヒュン!


敵軍から数百本もの炎の槍が放たれる。


それらは一斉に障壁へ激突した。


ドォン!!


ドォン!!


ドォン!!


ドォン!!


激しい衝撃に障壁が大きく揺れ、


空一面に炎と火花が散り広がる。


一人の男が安堵の声を上げた。


「助かった……!」


「これなら突破されない!」炎の槍の雨が止んだ。


束の間の静寂が訪れる――


その時、一人の見張りが声を張り上げた。


「槍を構えろ!」


「引け!」


数百本もの槍が一斉に掲げられる。


「放て!!」


次の瞬間――


無数の槍が雨のように南の王国軍へ降り注いだ。


ヒュン! ヒュン! ヒュン!


兵士たちは素早く盾を頭上へ掲げる。


槍は鉄の盾へ次々と叩きつけられ、


火花が四方へ散った。


ガキン!


ガキン!


ガキン!


軍の最前列には、第二王子ゼニンが立っていた。


彼は小型の盾を頭上へ掲げ、


飛来する槍を難なく受け止めていく。


一人の兵士が笑みを浮かべる。


「これなら大量のマナを使う必要もありませんな。」


「楽な戦いになりそうです。」


しかし、ゼニンの視線は村から一瞬たりとも離れなかった。


「油断するな。」


「こいつらを簡単に倒せたとしても……」


「本当の敵は東の王国だ。」


兵士たちは黙って頷く。


ゼニンは剣を前へ突き出した。


「ハース部隊と自由兵は前へ!」


第一列の兵士たちが前進する。


「シールドウォール!」


兵士たちは肩を並べ、


盾と盾を隙間なく重ね合わせた。


巨大な鋼鉄の壁が完成する。


ゼニンはさらに命じる。


「支援魔導士と攻撃魔導士は援護に回れ!」


後方へ控えていた魔導士たちが前へ出る。


足元に魔法陣が次々と浮かび上がり、



戦場は、すでに後戻りのできない場所へと変わっていた。

村人たちは必死に抗い続ける。

だが、相手は訓練された王国軍。

さらにその中には、常人とは明らかに異なる力を持つ自由兵たちまでいた。

一人、また一人と倒れていく村人たち。

それでもエルドレインは剣を握り続ける。

この村を守るために。

そして――

彼の知らないところで、戦争の本当の目的が静かに姿を現し始めていた。

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