第17話:さようなら 2 / Farewell 2
私は窓枠に手をかけ、その場に固まってしまい、身動きが取れなかった。トビーも廊下の奥に立ち、目を大きく見開いていた。私たちはそうして距離を置き、互いに驚愕の眼差しを交わした。高い窓から月明かりが斜めに差し込み、私たちの間に細長い影を落とした。静寂がまるで凝固したかのようだった。
「……セレナ?昨夜、どこへ行ったんだ?急に姿が見えなくなって……」
トビーの声は低く抑えられ、困惑と安堵が入り混じっていた。彼は一歩前に踏み出し、私の背負った古びたリュックと、手にぎゅっと握りしめたマーガレットの杖に視線を落とした。
私は答えなかった。ただ静かに彼を見つめ、銀白の長い髪が夜風にそよがれるのを感じていた。口を開き、何か言葉を紡ごうとしたが、結局ゆっくりと首を横に振った。
「……ごめん、トビー。何も言わずにみんなを置いて……本当にごめん。」
私の声はかすかで、まるで胸の奥から無理やり絞り出したかのようだった。
でも本当は……ずっとみんなを救いたかった。みんなの今後が心配で……
頭の中で、突然一つの声が響いた。
「いいえ、あなたには全員を救うことなど到底できない。」
その言葉は鋭い刃のように胸を突き刺し、私は一瞬、息を止めた。宿命の鎖が再び締め付けられた。私はうつむき、苦い笑みを浮かべた。
トビーは黙って聞いていた。その表情は複雑だったが、驚きは次第に穏やかな理解へと変わっていった。
私は一歩前に踏み出し、杖を左手に持ち替え、右手を差し出した。トビーも手を差し出し、月明かりの下で、私たちは互いの手を握り合った。その手のひらの温もりは、私たちが共に過ごした短い時間の中で、唯一の温もりだった。
「トビー……君と一緒に町へ買い出しに行ったり、孤児院の手伝いをしたりした日々は、私にとってとても大切な思い出です。ありがとう。これからは……どうか自分の体を大切にしてね。もし機会があれば、一刻も早くここを離れて……」
トビーは私の手をしっかりと握りしめ、そっとうなずいた。
「……そうか、わかったよ。」
彼は私を引き留めようとはせず、ただわずかに視線をそらし、その顔には言葉にできないような寂しさが浮かんでいた。
私は手を離し、振り返らずに窓から飛び出した。二度と振り返らなかった。夜風が轟音を立てて吹き抜け、孤児院の建物は背後で次第に遠ざかっていった。月明かりに照らされたその白い建物は、とりわけ青白く見え、まるで私に最後の別れを告げているかのようだった。
しかし、この場所を完全に離れる前に――私が向かわなければならない最後の場所が、まだ一つ残っていた。
リリーの家。
私は林間の小道を抜け、できるだけ足音を立てないように歩いた。木々の影が揺れ、足元の落ち葉がかすかな音を立てた。冷たい夜風が頬を撫で、遠くから時折、夜鳥の鳴き声が聞こえてきた。三年が過ぎたが、あの夜の記憶は、まるで今起きたばかりのように鮮明だった。
ついに、私は町の端にたどり着いた。建物の影に慎重に身を潜め、夜間巡回する兵士の足音を耳を澄まして聞いた。松明の炎が壁に揺らめき、鎧が擦れる音が時折聞こえては遠ざかった。私は息を殺し、壁際に身を寄せながら次々と路地を駆け抜けた。心臓の鼓動が、耳元のあらゆる音をほとんどかき消していた。
見慣れた建物の一つひとつが、思い出を呼び起こした。
あの古びたパン屋の角で、リリーは焼きたての温かいパンを私と分け合ってくれた。彼女の笑い声は銀の鈴のように澄んでいた。市場の人混みの中を、私たちは手をつないで通り抜けていった。彼女の小さな手はいつも温かかった。夕日が沈む広場では、彼女は私の手を引きながら言った。「将来、一緒に冒険に行こうね!」……そんな光景が、波のように胸に押し寄せてくる。銀白の長い髪が風になびき、月明かりが私の頬を伝う涙を照らし出した。胸が何かでぎゅっと締め付けられ、息が詰まりそうだった。リリーの笑顔、血の匂い、絶望の叫び……そして当時の私の無力感と恐怖、すべてが絡み合い、心を切り裂くような激痛へと変わった。
私は歯を食いしばり、歩き続けた。
そしてついに、目的地に到着した。
かつてリリーの家が建っていた場所――今は地元の駐屯軍の倉庫となっている。かつての木造の家屋は補強され、分厚い鉄の扉が固く閉ざされ、周囲には簡易な柵が巡らされており、兵士たちがパトロールする姿も見られる。ここはとっくに軍事区域となっており、一般人は近づくことさえできない。時間は冷酷にもあの悲劇の痕跡を消し去り、この場所を冷徹な軍事施設へと変貌させた。
リリー……ごめん。やっぱり、遅すぎた。
(第十七話 終)




