42話「クヴェルからの提案」
「クヴェル……今の話って」
絞り出した声は、思った以上にかすれていた。
「ごめん。
いつかは話さなきゃいけないとは思ってたんだけど……。
言えなかった」
クヴェルはとても苦しそうな、そして寂しそうな目をしていた。
「……クヴェル」
「アデリナはさっきトリヴァインの方角を見てたよね。
だったら気づいたよね。
向こうの空が黄褐色に染まっていることに」
「うん」
「おそらく、水が枯れ大地が干上がり砂嵐が起きてるんだと思う」
クヴェルの言葉に私は息を飲んだ。
「水竜神である僕があの土地を離れたんだ。
今まで通り緑豊かな土地が保てるハズがない」
「それじゃあトリヴァイン王国は……?」
「僕があの国の神になる前の状態に戻るだろうね」
クヴェルが水竜神になる前、トリヴァイン王国はトリヴァイン荒野といわれ、どこまでも乾いた大地が続いていた。
「僕が離れてからあの土地には雨が降っていない。
川や池の水は干上がり、井戸は枯れ、作物や人々の生活にも影響が出ているんだろう」
「……っ!」
そう話すクヴェルの表情は険しかった。
「僕がトリヴァイン王国に降らせていたのは浄化の雨だ。
その効果でモンスターの被害は少なかった。
だけどその雨が降らなくなった。
王国ではモンスターの被害が増えているだろう」
そういえば、私が王都を離れる時もオークの集団に遭遇した。
あれはクヴェルが神を辞めた影響だったのね。
あんな被害がトリヴァイン王国全体で起きているの……?
「僕はね、アデリナを傷つける公爵夫妻にも、
君の異母妹にも、
異母妹にうつつを抜かす王太子にも、
王太子の教育に失敗した国王にも、
王太子と異母妹が怠惰で愚かで怠け者な無能だと気づかないあの国の貴族にも、
ほとほと愛想が尽きてたんだ」
クヴェルは氷のような冷たい目つきで、吐き捨てるように言った。
クヴェルは口ではあれこれ言うけど、困っている人を見捨てられない。
その彼が人々を見捨てたのだ。
きっと、よほど腹に据えかねたのだろう。
「だけどあの国には、
僕たちを宿駅まで乗せてくれたおじさんや、
美味しいアップルパイを焼いてくれた宿駅のおばさんのような、
罪のない優しい人たちも生活している」
クヴェルはそう言って目を伏せた。
「あの国の王族を支持するのは嫌だし、国王や王太子を助けるなんて絶対に嫌だ」
顔を上げたクヴェルの目には怒りの色が宿っていた。
あの二人は初代女王レディア様が作った竜型のクヴェルの像を破壊している。
「だけどあの国の王家を滅ぼし、君を蔑ろにした貴族を粛清し、君が……アデリナが女王になるならもう一度神になってもいいと思っている」
「…………っ!」
クヴェルの言ってることが一瞬理解できなかった。
無能な王族と欲深い貴族を粛清するのは別に構わない。
私が引っかかったのは彼が最後に言った言葉だ。
私を女王にする……?
クヴェルが神様に戻る……?
聞き間違いでなければ、彼は今そう言った。
「君がトリヴァイン王国を救いたいと願うなら……僕は手を貸すよ」
クヴェルは苦しそうにそう呟いた。
それって……この旅が終わるってこと?
クヴェルが神様に戻ったら、もう気軽には会えない。
そんなの耐えられないよ!
このシーン大人クヴェルの方が良かったかな?
書いてるときは子供クヴェルで決まりだ!と思っていたのですが、読者受けがあまりよろしくない。




